9.今は
「オスカー」
「はい。申し訳ありません」
城へ戻るなり、オスカーがこうべを垂れた。
「お前がいながら、ジャスミン殿に…!どういうことだ!」
「大変申し訳ありません。俺の落ち度です」
「処分は厳重に行う」
「はい」
帰ってくるなり、一同愕然としていた。ジャスミンの右目が失われたことを知り、スティーヴンは激怒した。オスカーを信用していたのにも関わらず、この様だ。
「スティーヴン様、あまり怒らないでください。仕方がなかったのです」
「いいや、こいつの不手際だ。側近から降りてもらうことも考えている」
「そんな…!」
ロゼッタやテオドールを見ても、二人苦い顔をして首を振る。自分の契約を後悔しながら、唇を噛み締めた。
「シャーロットの居場所を突き止めろ。それができないなら、お前は用済みだ」
「承知いたしました。すぐに出ます」
「スティーヴン様…」
(私が悪いのに…)
険悪なムードの中、オスカーは素早く姿を消した。スティーヴンが目の前に立った。まぁ背の高いこと、と呑気なことを一瞬考えてしまったが、何かと身構えると、スティーヴンがあたまをさげた。
「俺の側近が粗相をした。申し訳ない。シャーロットに顔向けできない」
「い、いいえ!シャーロット様は…気にされると思いますが、私は役に立てて良かったと思っています。懲罰はどうか、シャーロット様も交えて行っていただきたいのです」
「…貴女がそういうのなら」
渋々そう言い、スティーヴンが顔を顰める。
(…厳しいことを言っているけれど、心配なのよね、オスカーのこと)
オスカーが去った後、懐中時計を眺めていた。あれが、私達の居場所を示したものだと、以前ロゼッタに教えてもらった。
「ジャスミン殿、貴女はもう休んでください。そのバンダナは魔法を宿していますが、馴染むまでに時間がかかります。今は休んで」
「いえ、シャーロット様がいない今、休むなど」
「ジャスミン殿」
ロゼッタが声をかける。
「今の貴女は、剣を振るえますか?魔術を使えますか?」
「……いいえ」
その言葉で十分だった。今、私はシャーロット様を守れない。その場で頭を下げ、その場を後にした。




