4.その隣に
ーー男は見ていた。フードを深く被った少女と、漆黒の髪の男を。
「サキュリー、この時が来たぞ」
深い声で呟き、入り組んだ街並みに消えていった。
「ん?」
スティーヴンが怪訝な顔をして、後ろを振り返る。
「どうかなさいましたか?」
「いや…なんでもない」
気のせいか。なんだか、視線を感じた気がする。護衛についている三人に目配せをすると、それぞれが警戒の色を見せる。念の為、シャーロットの腰に手を回し、さりげなく守りの姿勢に入った。
「君に、ドレスを送ってもいいだろうか」
「以前いただいたものがあります」
「いや、今度はバンターキッシュ王国での、婚約発表の場でのドレスだ」
「婚約発表…!」
そんなイベントがあるのね、とシャーロットがこぼし、少し不安そうな色を見せた。
「大丈夫だ。君は立派だ。自信を持つといい」
「しかし、わたくしは東の魔女と呼ばれておりますし…」
「嗚呼、それなら大丈夫だ。魔女の諱はなくなった。俺の国ではその名で呼ばれることはないだろう」
「そうなのですね」
シャーロットは、少し安堵したように笑った。彼女は、本当に立派だ。長旅の中で、何度も民を救い、自分を犠牲にした。孤高の天才とも言えるだろう。そんな優しく気高い彼女が、心の底から安心できる人と場所で、安らかに暮らして欲しいと心から思う。その隣に自分もいれたら、と。
「シャーロット、腹は減ったか」
「はい」
「都で有名な紅茶とケーキはどうだろうか」
「まぁ、素敵です!」
「では、行こうか」
「はい!」
こじんまりしたお店へ足を向けた。




