3.琥珀色のピン
都のリニアは賑わっていた。港に近く、海が綺麗だ。昨晩の嵐が嘘のように、空は晴れ渡っている。
ジャスミンが用意したワンピースに、目立つ髪を隠すようにローブを被る。浜風が強く、フードが外れそうになる。手で押さえながら、スティーヴンの横を歩く。スティーヴンが振り返り、少し思案顔をしてから、出店に向かった。豊富な品揃えのアクセサリー屋の前で止まり、また思案顔を浮かべる。
「どうなさいましたか?」
留学生の時の姿になっているスティーヴンに聞くと、彼は琥珀色の宝石のついたピン留めを手に取り、フードにつけた。前髪とフードにつけられたピンで、フードが捲れなくなった。
「これを貰おう」
「まいど!」
「えっ、スティーヴン様、これは…」
「ほら」
「え?」
手を差し出され、不思議に思っていると、スティーヴンが言う。
「これで、手が繋げる」
思わず頬を赤らめると、スティーヴンが顔を覗き込んでくる。
「可愛いな」
「よしてください」
顔を背けて、口を尖らせる。また揶揄われた。
「揶揄っているわけではないぞ。本当のことを言っているんだ」
「わ、わかっております!」
否定すると、どんな甘い言葉が飛んでくるかわからない。慌てて肯定し、スティーヴンの手を引っ張る。
「先を行きましょう」
「ああ」
フードを気にしなくていいのは楽だ。手を繋いで歩き、出店を回る。異国のハンカチーフや、栞、スパイスなど、様々なものが売られていた。
「いろいろな国を見てきました。バンターキッシュ王国につくのも、楽しみです」
「もう少しだ。あと一週間もあれば到着する。長旅だったな。すまない、転移魔法で移動することもできるのだが、国の情勢を目で見ておきたかったんだ」
「ええ。わたくしも、様々な国が見られて嬉しいです」
いろんなことがあった。本当に、いろんなことが。でも、それがあったから、スティーヴンとの仲が深まったと思う。
「この都では、何が起きますかね」
「何も起きないで欲しいが。手を離すなよ」
「わたくしをお転婆娘のようにいいますね」
「その通りだろう?」
「う…」
何も言い返せない。今回のこの国では、何も起きないといいがーー。




