2.湯船
「いえ、私が!」
「いいえ、これは譲れません!」
何事かと思えば、サーリスとジャスミンが揉めている。シャーロットの風呂の手伝いを、どちらがするかで揉めているらしい。
「もう、二人とも。わたくし、一人で入れるわよ」
「いいえ、シャーロット様。シャーロット様の髪は絡まりやすいのです。清らかで美しく、絹のように細い髪を洗うのは私の役目です!」
ジャスミンが勢いよく言い、手を掴んできた。捨て猫のような眼差しで見られては、たまらない。
「そうね。じゃあ、今日はジャジーにお願いしようかしら。いいかしら、サーリス」
「シャーロット様がそう仰るのなら…」
渋々、口を尖らせながらサーリスがいう。
「ですが、シャンプーやリンスはうちのものを使ってくださいね。リニアの特産品です。とても良い香りがするのですよ」
「わかったわ」
「では、私は夕食の準備をして参ります」
「ええ、お願い」
パタン、と扉が閉まってから、ジャスミンの手伝いの元、服を脱ぐ。ジャグジー前の鏡で身体を見て、むっと口を噤む。
「どうなさいましたか?」
「わたくし…太ったわよね」
「いいえ、全く」
「えぇ…?」
なんだか、腹のあたりがふっくらしたように思える。肉付きが良くなった。道中美味しいものをたくさん食べたからだろうか。
「身体が冷えますよ。湯船に浸かってください」
「ええ」
広い湯船に肩まで浸かり、長く息を吐く。心地よい温度で、香りも良い。
ジャスミンが慣れた手つきで髪の手入れをしてくれる。特産品のシャンプーは、異国の香りがした。嗅いだことがないはずなのに、どこか懐かしいような匂いがした。
髪を櫛で解かしながら、ジャスミンが丁寧に洗い流してくれる。心地いいその手つきに、うとうととしていると、あっという間に髪を洗い終わった。
「シャーロット様、夕食を食べたら、早めに休みましょう」
「ええ、そうするわ」
湯船から上がり、そう答えた。




