1.一息
シニアンを経って、一週間程経過した。馬車の中では体が凝る。重たいドレスを脱ぎ捨てたい気持ちを押し留めて、ふと外を見ると、海辺沿いを馬車が走っているのに気がついた。
「綺麗」
朝日が昇って、輝く港は活気あふれている。
「ここはブルダバだ。ブルダバ王国のリニア。都だ」
対面に座っていたスティーヴンが言う。長時間座っていても、眉ひとつ寄せやしない。普段から座り仕事も多いのだろうかと思う。
「今日はここある別邸で過ごしてもらう。休憩だ」
「わかりました」
都から少し外れた山奥で、馬車は止まった。大きな屋敷の前で、馬車を降りる。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
奥様!?
執事たちに出迎えられた。奥様、と呼ぶにはまだ早いと思うが、悪い気はしない。
「メイド長のサーリスだ。あとは頼む」
「はい、旦那様」
メイド長にしては、まだ若い容姿の女が礼をした。淡栗色のふわふわな髪が靡いた。
「シャーロット様、初めまして。シニアンの別邸のメイド長、サーリスでございます。何卒、よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。こちらは侍女のジャスミン」
「よろしくお願い致します」
くりくりな目でこちらを見て、ふむ、と指を顔に添える。
「お二人とも、だいぶとお疲れのご様子。まずはお風呂に入りましょう」
「お風呂…!」
ここ数日、水浴びをしていたから、お湯に浸かれるのは嬉しい。喜びの色を見せると、サーリスはにこりと笑い、屋敷を案内してくれた。
中は広々としていて、廊下も馬車が倒れそうなくらい広い。天井も高く、シャンデリアが吊り下げられていた。
「シャーロット様のお部屋はこちらです。ジャスミン様と同室にするよう承りましたので、そのようにさせていただきました。荷物を置いたら、お申し付けくださいませ」
「ありがとう」
「私まで…ありがとうございます」
普段、世話役をしているジャスミンからしたら、この待遇は初めてだろう。ジャスミンまで大事にしてくれているとわかって、嬉しくなる。
手荷物をベッド横に置き、部屋を見渡す。別邸ということは、たまに利用するのだろうか。隅々まで人の手が届いている。花瓶にいけられた花が生き生きとしているし、お布団はお日様の元で干されたのか、見るだけでふわふわだとわかった。
一息つきたいが、メイドを待たせるのは悪い。速やかに荷解きをしてから、サーリスを呼んだ。




