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1.帰宅

フローリー邸に帰ってきた。門では、フェリクスが待っていた。

「おかえりなさい。長旅、お疲れ様だったね」

「ただいま戻りました、お養父様。…お養母様は…」

「嗚呼、少し滅入ってしまったようでね、寝ているよ」

「申し訳ありません」

「いいや、いいんだ。いつでも帰ってきて欲しかったからね。ここは、ロティーの家だよ」

わたくしは、宰相を継ぐことにした。この国のために。その旨はフェリクスに伝えてある。

道中の話は、ジャスミンやスティーヴンから聞いているらしい。心労で養母が倒れてしまったのが心配だ。

「暫くゆっくり過ごしなさい。疲れただろう。ジャスミンも」

「ありがとうございます」

屋敷に入ると、懐かしい匂いがした。数ヶ月ぶりに帰ってきた家は、何も変わっていなかった。

「ご飯にしようか。シェフが好きなものを作ってくれているよ」

フェリクスもどこか憔悴しているように見える。婚約破棄は、令嬢が申し出てできるものではない。スティーヴンは、どう出るのか。

不安を顔に出さないように、フェリクスとの会話を弾ませた。久々の再会だ、喜ばなければ。

「私はお食事の用意の手伝いをして参ります。シャーロット様、暫くお部屋でお休みください」

「わかったわ」

フェリクスとジャスミンと別れ、自室へ向かう。長い廊下の先、階段を登り、突き当たって右の部屋だ。久々に入った自室は、何ら変化なかった。掃除も行き届いている。

ベッドに腰掛けてから、少し寝転がった。ふっと息を吐くと、また涙が出そうになる。グッと堪えて、頬を叩く。

決めたんだ。もう、会わないと。

もうこれ以上、迷惑はかけられない。

だから、これで正解だ。

そう心の中で繰り返し、邪魔な思考を振り払った。しばらくの間そうしていると、扉がノックされる。

「シャーロット様、お食事の準備ができました」

「今行くわ」

久々の家族での食事だ。楽しまないと。

もう一度頬を軽く叩いて、ドアを開けた。

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