19..さようなら
シャーロットとジャスミンの馬車が到着したのは、二週間後の事だった。それまでは、いつも通りに振る舞い、いつも通りに過ごした。スティーヴンには会っていない。彼は、部屋から出てこない。
「お世話になりました」
「シャーロット様、本当によろしいのですか」
「ええ。私はフローリー家を継ぎます」
オスカー、ロゼッタ、テオドールが膝をついてこうべを垂れる。
「シャーロット様、今までありがとうございました。お守りできず、大変、申し訳ありませんでした」
オスカーが言い、一同が頭を下げた。
「大丈夫よ。みんな、ありがとう。お世話になりました」
馬車に乗り込む前に、別荘を見る。やはり、スティーヴンはいない。
「行きましょう。ジャシー」
「シャーロット様…」
扉が閉まる時、テオドールがコチラにかけてきた。
「ご無礼をお許しください!もし!もしも!あなた様がまた、スティーヴの隣にいたいと思ったら…!その時は、いつでも…!いつでも仰ってください…!どうか…っ」
そこで言葉に詰まり、うまく出てこないようだった。
「ありがとう。さようなら」
馬車の扉が閉まった。ジャスミンと並び、硬い椅子に座って、外を眺める。来た道をまっすぐに帰るだけ。ただ、それだけ。
「ロティー」
ジャスミンが、昔みたいに話しかけてきた。なのにわたくしは、何も答えることができない。
ーージャスミンの肩を借りて、泣いた。




