17.決別
ーー芯の通った透き通った声を、拒みたいと初めて思った。
婚約を解消したい、だなんて。彼女の口から言わせてしまった。確かに、危ない目に、沢山あわせてしまった。守れなかった。
不甲斐ない自分が、掛けられる言葉は、ない。
「短い間でしたが、幸せでした。ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をする彼女を、どうやって引き止めればいい。どうしたら、どうすればーー。
「おやすみなさい」
パタンと、扉が閉まる前に、強引に手を捩じ込んでいた。
「スティーヴン様…?」
シャーロットの呟きと共に、扉は閉まった。
シャーロットの部屋で、二人扉の前ーー。
「あの、お話は以上です」
わかっている。
「…スティーヴン様…?」
「わかっているんだ!」
びくり、とシャーロットの方が揺れる。
「俺が不甲斐ないことも、俺がきみを傷つけていることも、守りきれていないことも…!」
スティーヴンが両手で顔を覆い、その場に崩れ落ちた。慌ててスティーヴンの手に触れると、驚くほど冷たく、震えていた。
「俺じゃ…っ、守れない、のか…っ」
「スティーヴン、様…」
息が詰まった。スティーヴンの瞳から、一粒の雫が頬を流れたからだ。
「好きなんだ!愛しているんだ!そんなことは、口ではなんとでも言える…!守る、守りたいも、口では何とでも言えると、わかっている…!」
「スティーヴン様…」
「俺では君を、幸せに…できないのか…っ!俺では、ダメなのか」
言葉に詰まった。でも、ここで、甘えてはいけない。一緒にいたいと言ってはいない。私の呪いは、私一人で背負わなければ。
「スティーヴ様。愛していました」
「ロティー」
「さようなら」
そう言って、スティーヴンを立たせ、外に追いやった。それにスティーヴンはーー抵抗しなかった。
ーーさようなら、私の初恋。
ぽとりと落ちたのは、きっと涙ではない。




