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水に取られた ー八雲島水籠記ー(改訂版)  作者: 大西さん
第5章 違和感の始まり
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第35話 あかねの警告

息を切らして宿に戻ると、あかねが、心配そうに駆け寄ってきた。


「慎一くん、どうしたの。顔が、真っ青」


「あかね……俺……」


何が起きているのか、うまく言葉にできなかった。井戸の底から伸びた白い手。水面に映った、老いた自分の顔。同じ拍で動く島民たちの背中。どれも、口にした途端、嘘になりそうだった。あまりに、現実離れしていて。


「少し、休んだほうがいいよ」


あかねが、慎一を部屋へ連れて行こうとした。


その時、彼女の手が慎一の手に触れた。


ひやりと冷たい。


そして、慎一は気づいた。


あかねの手も、半透明になりかけている。


「あかね、君の手……」


あかねは、はっとして手を引っ込めた。


「これは……」


彼女の目に、深い悲しみと恐怖が浮かんだ。


「やっぱり、気づいちゃったよね」


あかねの声が、震えていた。


「ねえ、慎一くん。お願いがあるの」


あかねは、慎一の目を見つめた。


「明日の祭り……絶対に参加しないで」


「どうして?」


「お願い。理由は聞かないで。ただ、信じて」


あかねの必死な表情。


「明日の朝、甚助さんの船が来る。それに乗って、島を出て」


「君も一緒に?」


あかねは、首を横に振った。


「私は……行けない」


「なぜ?」


「私は、もう……」


あかねが何か言いかけた時、廊下から足音が聞こえた。


「あら、二人とも、こんなところで」


キヨだった。


「夕食の準備ができましたよ」


あかねの表情が、一瞬で変わった。


恐怖の色が消え、いつもの穏やかな表情に戻る。


「はい、今行きます」


そう答えるあかねの声は、不自然なほど明るかった。


慎一は、混乱した。


今、あかねは確かに警告しようとしていた。


しかし、キヨが現れた途端、まるで別人のように振る舞い始めた。

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