22、傭兵レベルとランク
「スピカちゃん達、今日は、ありがとう。とても楽しかったわ」
「うんっ! また声をかけてねっ」
昼食の後、俺達は行きと同じ道を通り、居住区の傭兵ギルド前まで戻ってきた。寮長のドムさんは、ホッと胸を撫でおろしているだろう。
「スピカちゃん達が街に行くなら、私達も街に遊びに行こうかしら?」
「街? うーん、私にはわかんない。ドムさん、私達って街に行くのー?」
ドムさんは、急に話を振られて、驚いた顔をしている。もうすっかり終わった気でいたらしい。
「皆さんが決めることだけど、すぐには難しいね。ここに来たばかりでしょう?」
「あっ、また試験がある?」
スピカの表情は、一気にドンヨリした。気分が急降下したのだろう。
「簡単な終了試験はありますよ。それに、まだ、子供の身体に慣れてないだろうから、必要なら訓練もしなきゃね」
また、試験があるのか。
「スピカちゃん、傭兵ギルドのミッションは、もらえる経験値が大きいから、レベル上げをしておくのも良いわよ。街には傭兵ギルドはないけど、代わりに冒険者ギルドがあるの。レベルはそのままで登録できるから」
へぇ、傭兵ギルドと冒険者ギルドは、互換性があるということか。分ける意味がわからないが。
「冒険者ギルド? どこを冒険するの?」
「呼び名が違うだけで、同じような組織よ。アクションゲームの舞台となる街では、レベルが低いと入れない店もあるからね」
なるほどな。そういえば、俺がプレイしていたゲームでも、大きな街の酒場には、冒険者レベル、いや、冒険者ランクでの入場制限あったな。
「ふぅん、よくわかんないけど、レベル上げをするといいんだねっ」
「ええ。これから終了報告でしょ? 次の仕事を受注すればいいわ。変な仕事を押し付けられないように、私達も一緒に居てあげるわね」
「うんっ! お姉さん、ありがとっ」
完全に、スピカのペースにハマってるよな。だが、本人達は、気づいてない。ロッコ族は、サキュバスの術には敵わないか。まぁ、スピカも今はロッコ族だが。
◇◇◇
俺達は終了報告を済ませ、報酬を受け取った。携帯機の『財布』を確認すると、1万Gが入金されていた。これで残高は101万Gか。
経験値を得たから、レベルが上がったはずだ。経験値の高いミッションだと言っていたよな?
俺が『評価』を開くと、始まりの宿舎の終了試験結果が、ドーンと大きく表示された。これがまだ表示される意味はあるのか? やはり、嫌な気分になる。
すぐに、傭兵ギルドに切り替えた。
──────────────
【名前】シリウス
【役割】傭兵(レベル5)
【登録ランク】アイアンランク
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傭兵レベルは、まだ5か。買い物の付き添いをしただけだからな。だが、登録ランクが上がっている。これで、大神官シャルル様の『日記』が開くはずだ。
女性達に名前を見られないように、すぐに画面を最初に戻した。その直後に覗き込まれたようだ。危なかった。
「まぁ、シリちゃんは、S評価なのね。あっ、ごめんなさい、チラッと見えてしまったの」
覗いたじゃねぇか。
「シリシリは、前世がアース星だったから、ズルいの。スピカちゃんの方が賢いと思ってたのにぃ〜」
スピカは、始まりの宿舎の試験結果を表示して、彼女達に見せている。
「まぁ! でも、A評価も優秀なのよ? 少し前に会ったロッコ族の子達は、みんなB評価だったわ」
「そうなの? じゃあ、スピカちゃんは賢いのね」
「ええ、優秀だと思うわよ」
女性達に褒められて、スピカは嬉しそうに笑っている。だがこれは、スピカの本心ではない。おそらくスピカは、試験結果のことなど、もう気にしてないはずだ。
「次のミッションですが、アイアンランクに任せる仕事は、明日や明後日の分はすべて受注済みですね」
傭兵ギルドのカウンターにいた職員が、少しオドオドしながら、スピカに伝えた。スピカを恐れているわけではないだろう。この女性達が厄介だから、か。
「全部が受注済み?」
「あぁ、宿舎の子達が、受注したのだろう。終了試験の近い人達が、焦ってるんだろうね」
壁と同化するように立っていたドムさんが、口を開いた。スピカを気に入っている女性達が、職員を睨んだからか。
「先輩たちが、焦ってるの?」
「街に行く仕事を受けたい人は、登録ランクをブロンズランク以上に、上げる必要があるからね」
すると、女性達はドムさんに鋭い視線を向けた。
「あら? おかしいわね。いつ、そんなルールができたのかしら?」
「数週間前ですね。ロッコロッコ星からの宇宙船が、昨日、到着しました。罪人はすべて街に送られるので、街に行く子は、ある程度の戦闘経験が義務化されたのですよ」
罪人が到着したのか。それを聞いた女性達は、表情を引きつらせている。
「罪人は、アバターを身につけるのよね?」
「ええ、主人公の役割を与えるようです。そうすれば、最長で30日間は、強い魔法が使えませんからね」
「それなら、いいわ。でも、主人公の役割ということは、街で大勢の下僕を作るんじゃないかしら。主人公の期間が終われば、強い魔法を使えるわよね?」
「ロッコ族の場合は、アバター無しの方が、強い魔法が使えると思いますよ」
ドムさんがそう言うと、女性達は口を閉じた。街に行くには、アバターの着用が強制だったよな? 今、ドムさんは、街に行くより居住区にいる方が安全だと言ったのか。
「お姉さん、街より、またクリスタルショップに行こうよっ。あっ、ミッションじゃなきゃ、スピカちゃん達はこの町から出ちゃダメだっけ?」
スピカは、単純にドムさんに確認したようだが、女性達には、別の意味に聞こえるよな。
「スピカちゃん、クリスタルショップに行きたいときは、私達が護衛ミッションを出すわよ。一緒に行きましょうね」
「えっ? あ、うんっ! ありがとっ」
スピカは、ポカンとしている。女性達に、そう言わせたのが自分だとは気づいてないな。
こういう所は、以前のサキュバスだった頃のスピカとは、少し違う。もっと狡猾だったし、こんな間抜けな表情をすることはなかった。ロッコ族になってからの5年間で変わったのか、もしくは、神による転生で、身体だけでなく感覚までガキになったのか。
「シリちゃんも、遠慮なく言ってね」
「あ、はい。あの、お姉さん達に連絡って、私達からできるのですか?」
俺は、一応、尋ねておいた。関わる気もないが。
「未来から来たロッコ族とは、直接の連絡はできないの。ドムさんに言ってくれたら、私達に繋がるわ。私達は、開発室で、主人公のミッション管理のサポートをしているからね」
主人公のミッション管理? あぁ、それで罪人が到着したと聞いて、表情が変わったのか。




