11、与えられた6つの能力
「誰も大きな怪我がなくて良かったわ」
キャンプ場に戻ると、既にバーベキューの用意が整っていた。各グループが取ってきたものを食べる気はなかったらしい。
「まぁ! 可愛いカゴに、たくさんの木イチゴを集めてくれたのね。食後にいただきましょう」
寮長は、俺からカゴを受け取ると、嬉しそうな笑みを見せた。木イチゴが好きなのか。
あの後、スピカは、噴霧の術を使ったからと言って、キノコを採らなかった。そもそも、あの付近に食べられるキノコが生えていたかも疑わしいが。
キャンプ場へ戻る道では、昨日瀕死の傷を負ったレイシーが、木の上に逃げていた少女に、ずっと文句を言っていた。昨日、魔物を引き込んだ少女だからか。
魔物に囲まれていた少年少女は、ずっと恥ずかしそうにしている。スピカの術で、少し乱れたからだろう。これも、スピカの計算かもしれない。彼らは、スピカに助けられたことに、気づいてないようだ。
彼らは、小動物を狩ったらしい。もう一方の狩りのグループは、大型の動物を狩ったようだな。
スピカは、グループ分けのバランスが悪いと言っていたが、こうして見ると、どのグループも男がひとりずつ入っている。偶然かもしれないが。
バーベキューは、美味しかった。子供の身体だから、あまり食べられないのが残念だな。
一部の人達は、何のために狩りに行かされたんだ? と、文句を言っていた。その理由を察している人達は、適当に聞き流しているようだ。
おそらく、サバイバル試験だったのだろう。夜の森でも、ちゃんと歩けるかを試したのだと感じる。
レイシーは、文句を言う人達を、嫌っているみたいだ。ずっと聖都で暮らしていたなら、ロッコ族だけの中で生きてきたのだろう。ある意味、世間知らずなお嬢様だ。
「シリウス、どうして、バーベキューを焼く係をしてるの? 上手に出来てるけど〜」
は? あ、勝手にやってた。
「何となく、暇だからな」
「ふぅん、シリウスが、こんなに女子力が高いなんて、知らなかったよー」
女子力? あー、狩りは男、調理は女の仕事か。
「俺は、子供の頃に、女のフリをしていた時期があるからな。転生してガキになったから、あの頃の癖が出たのかもしれない」
俺がそう言うと、他の人達が会話に入ってくる。
「キミも、狙われたんだな。僕は、村の中に隠してもらっていた。悪魔系の魔物だろ? なぜか、ロッコ族の男の子を殺すのが楽しいらしいけど」
彼は、中庭で震えながら、瀕死のレイシーに回復魔法を使っていた人だ。
「あぁ、その魔物だよ。俺は、転生の翌日にも殺されて、奴らの生息地の外に引っ越しても、数日後には殺されたからな」
「あれって、ロッコ族を滅ぼそうとしている魔王たちの仕業らしいよ」
「なぜ、男ばかりを狙うんだ?」
「男の子の数を減らして、女の子を娶りたいって聞いたよ。ロッコ族が生む子は、強い変異種が生まれることがあるからだって」
まるで、魔物の発想だな。
「やっぱり魔王なんて、まともな奴はいないよね」
「基本的に野蛮だもんね。魔王といっても、所詮は魔族でしょ。選ばれた6種族以外は、滅びればいいのに」
「そうよねー。魔王なんて、魔族というより魔物だよ。害悪でしかないもの」
少女達の魔王批判が始まった。こういう話は、初めて聞くわけではない。ロッコ族は、小国を下に見ている。だから力のある魔王が、ロッコ族を嫌うのだ。
スピカが、ハラハラしていることに気づいた。俺が怒ると思ったのか。オルフル様も、ロッコ族のこの考えをご存知なのだろう。ここで、俺が魔王だったと明かすと、面倒なことになりそうだな。
「ちょっと、いい加減にしなさいよ! 自分達が一番優れているとでも言いたいの? 魔物を宿舎に招き入れたり、グループの仲間が襲われても自分だけ逃げようとする人が、優れているのかしら?」
あっ、レイシーがキレた。彼女は、正義感が強いのか。神官に多いタイプだ。彼女の親が神官なのかもしれないな。
魔王批判をしていた少女達は、スーッと無言で離れて行った。レイシーが追い払ってくれて助かった。
「シリウス、コーンも焼いて〜」
「は? 自分でやれよ」
「スピカちゃんに、そんな女子力があると思ってるの〜? ウケる〜」
コイツ……。
◇◆◇◆◇
翌朝、俺はまた朝早くに目が覚めた。外は明るいが、とても静かだ。
今の時間はわからないが、携帯機のメンテナンス時間が終了したら、試験結果が発表されるんだよな? 携帯機の『評価』には、まだ結果は届いていない。
メンテナンス時間は、0時から6時までらしい。その時間帯でも携帯機は普通に使えるが、一部の機能は停止するそうだ。
俺は、まだ見てなかった大神官シャルル様の『日記』を開いてみた。
『これを読む皆さん、私の依頼を受けてくれてありがとう。これは、イービー神からいただいた記録帳の複写です。原本は私が所持しています。ここに記録していくことは、皆さんの記憶と少し異なるかもしれません。違うということは、皆さんが過去の人工星で頑張ってくれた成果です。読み返すと、最新の歴史に置き換わる可能性があるため、私は読み返しません。次のページからは、時系列に沿って、記録していきます。一番最後のページには、皆さんに与える能力のことを記録しています』
次のページは、開かない。
そうか。だから、今これを見ても意味がないと、言っていたんだな。だが、スピカの表情の変化から推測すると、読めるページがあるのか?
次へ、は反応しないが、最後へ、は反応した。俺は、一番最後のページを表示した。
『シリウスさん、引き受けてくれてありがとう。確か、貴方は、仮面の魔王、でしたね? これまで先に派遣した人達の中には、魔王だった人はいないわ。逆に、魔王に殺された経験を持つ人はいる。だから、始まりの宿舎を出た後は、少し気をつけておく方がいいわ』
大神官シャルル様が、俺の二つ名を知っている!?
『皆さんには、新たに6つの命と能力を与えます。新たに与えた命を使い果たしたときは、大聖堂への強制送還が発動しますから、安心してください』
あー、誰か言ってたな。
『皆さんに与える能力は、共通語の言語理解、記憶力増強、基本4属性魔法、簡易サーチ魔法、転移魔法の5つです。既に使える場合は、その能力が上昇しています。また、シリウスさんに与える個別能力は、オトメンです。これらを上手く駆使して、スープラットの厄災を阻止してください』
与えられた能力は、共通が5つと個別で1つなのか。記憶力が良くなったと感じたのは、与えられた能力らしい。基本4属性魔法も簡易サーチも転移魔法も、俺は使える。ということは、底上げされているんだな。
で? オトメンって何だ?
皆様、本作を見つけて読んでくださって、ありがとうございます。ブックマークもありがとうございます。
作者はブクマが増えると、続きも読んでくれるんだと、ホッとして、元気をもらえます。ありがとうございます♪
あっ、もちろん、ブクマしない派の皆様も大歓迎です。今後ともよろしくお願いします。
【作者読みをしてくださっている皆様へ】
7月から出すと予告していたのに、大変遅くなりました。ごめんなさい(*´-`)
6月に完結したあの作品は、第1回ブシロードワークス小説大賞の一次選考を通過しています。あんなに読者さまもブクマも少なかったのに?と、作者もビックリです。応援いただき、ありがとうございます。
そして本作は、あの作品と同じ世界観で描く、全く別のお話になっています。シャルルやオルフルなど何人かのキャラは、本作でも登場します。
次話から、次の宿舎へ移動しますが、まだあのゲーム舞台となる街へは行きません。街では、少し乙女ゲーム要素が入るので、ジャンル的に後回しにしました。
この流れを書き直したりしていて、大幅に遅れました。すみません。あの作品と関連のある場面では、後書きを入れるかもしれませんが、全く違う雰囲気で描いているため、別の物語だと捉えていただくのも良いと思います。たまに、見たことあるなぁ〜が出てくるかもですけど(๑˃̵ᴗ˂̵)
どうぞ、よろしくお願いします。




