第6話 いいないいな。に〜んげんっていいな。
歩き続けて小一時間。
とてつもなく広い公園が見えてきた。森を丸ごと公園にしたんじゃないかと思うくらいだ。
登りやすそうな木々に囲まれていて、一面芝生である。夏も近づく春って感じだ。起伏が多い場所では沢山の子どもたちが遊んでおり、平坦な場所には木製のベンチとテーブルのセットが20程あり、串焼きを食べている人、新聞を読む人、ぼーっとしている人などがいる。
遊具はハイジに出てきそうなブランコのみ。砂場はない。公衆トイレはある。
「セルザごっこしよ!」
焦げ茶の髪の男の子が言った。4歳くらいだろうか。名前は……、思い出せない。
「したいしたい!」
金茶の髪、大きな瞳の女の子が言った。
名前は………、思い出せない。
「ぼくがセルザになる!」
薄茶の髪の男の子が言った。
名前は………、思い出せない。
「あの、すみません、セルザごっこってなんですか?」
「えっとね、セルザごっこは、……」
アリスちゃんが丁寧に教えてくれた。ありがたい。
セルザごっことは、隠れ鬼と増え鬼を合わせた遊びのようだ。なぜセルザと言うのかも聞いてみたが、「さあ、わかんない」と言われた。
鬼ごっこは英語で tag 。他の言語では何というのだろう。学んでおくべきだったなぁ。
そうして、私たちは午前中は何度もセルザごっこをしたのだった。
* * *
お昼の時間になった。
公園の近くに出ている屋台へ、みんなで昼食を買いに行く。
「こんにちは。これ一つください」
「お、オリバーくんじゃないか。いつもありがとう。一クレスだね」
おのおの懐からお金を出して購入した。
クレスは銅貨の単位である。
銀貨はシルム、金貨はグルスだ。
公園に戻って、ベンチに座って食べ始めた。
「ねえねえ、アリス姉ちゃんは、今学校で何習ってるの?」
金茶の髪、くりくりおめめの女の子が言った。
「国語と算数、魔術だよ」
「オリバー兄ちゃんは?」
「俺も同じ」
「魔術って、何してるの?」
金茶の髪、大きな瞳の女の子が興味津々で訊いた。
「私は魔力制御」
「俺は魔力放出。まだ全然できねえんだよ。ミリーはできるんだよな?」
「うん! ほら!」
オリバーとアリスに質問した女の子が手を出すと、手のひらからまっすぐに何かが出始めた。その空間だけゆらゆらとゆがんで見える。得意げだ。
ふむふむ。この子がミリーか。
「すげー」
オリバーが感心していた。
「…、ぼくも、できる」
ウィリアムくんもミリーと同じようにした。
恥ずかしがり屋の彼が、少し自慢げだ。可愛い。
魔力放出。できる人とできない人がいるのか。家に帰ったらお母さんに詳しく聞いてみよう。
そんなこんなで、主にアリスとオリバーの学校の話を聞きながら、昼食の時間は終わった。
午後も走りまくり、日が傾いてきた所で帰ることになった。
* * *
足が重い。
全身がだるい。
筋肉が痛い。
いや、きっつ!
公園から歩くこと小一時間。
家の前に来た。
「じゃあまた来週ね!」
「いいんですか?」
「もちろん!」
「ありがとうございます」
アリスが笑顔で誘ってくれた。嬉しい。
「明日は学校かー。いやだー」
「学校も大事だよ」
オリバーが嫌そうな顔をするが、アリスが窘めたこの組み合わせ、見ていてほっこりするな。
「今日はありがとうございました。では、また!」
みんなが遠ざかるのを見ながら、私は手を振った。
いいないいな。に〜んげんっていいな。




