第5話 期待と覚悟
この国の年月日の法則や言い方は興味深い。
一週間は七日、一月は五週、一年は十二ヶ月。
曜日は順に、光曜日、火曜日、土曜日、水曜日、天曜日、地曜日。それぞれ、太陽と月の光、世界で最初にできたとされる魔法の属性四つ、空、大地を意味する。休日は天曜日と地曜日。
また月に関して、公式的な記録では一月、二月、三月、……という風に記述するが、それ以外は日本で言う睦月、如月、弥生と同じ要領で表す。地方によって言い方が異なるので、違う地方から都会に来た人で話が噛み合わなかったりするらしい。
そして、今日は天曜日、休日である。
ウィリアムくんと遊ぶ日である。
母は私が他の子どもとあまり関わらないようにしたがるが、ウィリアムくんはすぐに許可がおりた。彼の母と私の母が友人だからだろうか。
公園は家から子供の足で約15分の場所にある。
しかし、人攫いが少なくないこの国では、幼児を一人で歩かせるのは危険である。
多くの場合、年齢もバラバラの子ども十人くらいで一緒に移動するのたが、私はそれも不可能だ。
よって、ウィリアムくんが普段遊ぶ仲間に入れてもらうことになった。
エマさん曰く、彼らはいつも私の家の前を通るので、その時に一緒に行けばいいとのこと。
家の前に立って外を見ていると、遠くから子どもの集団が見えてきた。ウィリアムくんもいる。
彼が気づいて手を振ってくれた。私も振り返す。
「だれ? あの子」
「ともだち!」
あの集団で一番背の高い女の子がウィリアムくんに尋ね、彼が返答しているのが聞こえた。
私は小走りで近づいていき、彼らの正面で止まった。
「こんにちは、メアリーです! 一緒に遊ばせてください!」
「おれはいいぜ! みんなは?」
勇気を出してお願いした私に、十歳くらいだろうか、体格のいい男児が威勢良く言った。ウィリアムくんは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに目を輝かせている。他の子どもたちが頷いた。
「私はアリス。よろしく、メアリーちゃん」
「よろしくお願いします」
ウィリアムくんに私のことを尋ねていた女の子が私に言った。雰囲気が大人びている。薄茶の髪と薄茶の瞳のお姉ちゃんだ。
「おれはオリバー、よろしくな!」
「よろしくお願いします」
先程の体格のいい男児が言った。クセのある黒髪の、草野球が似合いそうなお兄ちゃんだ。年齢的に、集団のまとめ役はアリスさんとオリバーさんの二人だろう。
「トーマス。トムって呼んで」
「スタンリー。そのまま呼んで」
「アイラ、です」
「ミリーだよ!」
「ジョージ」
「ベラ」
「ウィリアム!」
一通り名前を教えてもらったが、オリバー、アリス、ウィリアムの三人しか覚えられなかった。今日中に全員と仲良くなって、名前も覚えられるように頑張ろう。
「さ、行こうか!」
アリスが元気良く言い、一行は公園に向かって歩き始めた。
思ったより緊張しなかったが、前世では壊滅的だったコミュ力及び社会性を身につけるべく奮闘しよう。転生して2年余り、前世の記憶をほとんと全て思い出して、自分の欠点を洗い出し、人格者の行動を分析―これが分析と呼べるのかは怪しいが―してきたのだ。少しはマシに行動できると思う。たとえできなくても、絶対にできるようにする!
自分よ。 初心忘るべからず、塵も積もれば山となる。
こうして、私の成長のための記念すべき第一歩は、期待と覚悟を胸に踏み出されたのだった。




