第4話 悲嘆
帰宅後。
母が裁縫箱から針と糸を出し、手製の型紙に沿って断った布を縫う。私はそれを眺めている。
母の機嫌がすこぶる悪い。何故だ。
布をたつときから絶え間なくぶつぶつと呟いている。
「あいつのせいで………こんなはずじゃ………服も碌に買えんし………なんで…なんで私だけこんなことせないかんの……? メアリーがいるからこんな事せないかんのや………見るだけで手伝わん……」
いやいや、理不尽でしょう。
ほとんどあいつが原因だし。
私がいるのはいけませんか?
それに手伝わないって……
そこまで考えた時、母が玉止めをして、針に新しい糸を通そうと苦戦していた。
「お母さん、私が糸通すよ」
「黙って!!! うるさい!!! 話しかけんといて!!!」
「はい」
あ〜、機嫌極悪。
私嘆いちゃうぞ。悲しんじゃうぞ。
「見るだけで手伝わんし……」って言ったのあなたですよね?
「針に糸を通すのは、誤飲や怪我の恐れがあるため2歳以下のお子様にはさせません」ってことか?なら納得だが。
でもこうなると針仕事を手伝えって無理じゃん。
なんか悲しいわもうほんと。
糸通し使えばいいのに。
あ、糸通し!
「糸通し使ったら?」
睨まれた。
「はー。最悪最悪最悪。時間無駄にした。あ〜あ時間無駄にした。気づいとったんならさっさと言いなさいよ! このバカ! 他人を嫌な気持ちにさせるのホンット得意やねあんたらは! さすがあいつの子供やわ!」
「………ごめんなさい」
いと悲し。
もういいや。
まだ何か独り言を続ける母に嫌気が差したので寝室に行って、ベッドに寝転がった。
窓の外は買い物に行った時に比べて風が強くなったようだ。庭木がかなり揺れている。雲も増えてきた。
雲がどんどん移動していく。
「いつか、雲を食べてみたいな。塵とかの集まりだって分かってても、美味しそうだもん」
嫌なことがあったら、気分転換しよう。
少しだけでいい、明るい気持ちになれたらいいから。
現実逃避もいいけれど、しすぎないようにね。
だって、私の人生はまだまだこれからなんだから。
前世は現実逃避しまくって、周りの物事を直視できなかったけれど、今世はしっかり見るようにしよう。
きっと、見えていなかったいいことや嬉しいこと、楽しいことも見られるだろうから。




