第15話 祝福
テーブルの上には、バゲット、各種ジャム、サラダ、オレンジジュース、苺がたっぷり載ったホールケーキがあり、食欲をそる香りが漂ってくる。今日の夕食は少し豪華だ。
「メアリー、3歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
他国ではどうか知らないが、この国では一般的に3歳と15歳の誕生日を祝う。
誕生日には何が欲しいかと母に問われ、私は「肉がない美味しいご飯、苺たっぷりケーキ付き」と答えたのだが、その通りにしてくれた。
母は調理で疲れた顔、父はイライラして落ち着かない様子だ。
まずは、バゲットをそのまま食べる。
やっぱり硬い食べ物は美味しい!
ジャムは、苺とすももとブルーベリーだ。どれもレモン汁をたっぷり加えて作られたので、酸味と甘味のバランスが絶妙に良い。何にでも合うジャム最高!
サラダは畑で母と私が栽培した野菜を使っている。美味しい。
オレンジジュースは、畑で採れたオレンジを搾った。新鮮で美味しい!
最後はケーキ♪ 一番楽しみなケーキ♫
…………………?
―――?
?
ケーキが、あと一口分くらいしかない。
私がご飯に夢中になっている間に何が起こったのか、前世の経験から予想がつく。
斜め向かいの父を見ると、口のまわりにクリームがべっとり。食べ方が汚すぎる。
私の視線に気づいた母が父を見て、鬼の形相になった。
「は!? これはメアリーのケーキです! あんたのじゃない! なんであんたがほとんど全部食べたの?!」
「お前らのものは全部オレのものや」
「違います! 私のものは私のもの、メアリーのものはメアリーのものです! いい加減にして!」
そーそーいい加減にしろよクソジジイ。
前世の父もだったけれど、私が目立ったり主役的立ち位置の時はとことん邪魔してきたなあ。私が嫌がったり困ったりすることをしてきまくったなあ。
「ごめんねメアリー、私気づかなかった。まさかこいつが勝手に一瞬でケーキ食べるなんて……」
「私も気づかなかくてごめんなさい。せっかく作ってくれたのに……」
あいつはついに最後の一口も食べていた。
母が「どうしてメアリーも気づかなかったの!? もしかして食べたくなかったの!?」などと言い出さなかったことにだけは安心できた。
まったく。私が迂闊だった。
これくらいのこと、簡単に考えられたのに。
今日は4月〈ラッパ水仙の月〉7日天曜日、私の誕生日である。前世の高校の始業式の前日だが、日本とこの国では暦が違うので単純に比較はできない。実際、私が前世で死んだのは始業式の前日の夜から当日の朝の間だろうが、この世界に私がうまれた時、こちらはお昼ごろだったのだ。
ちなみに、前世の誕生日は11月11日、俗に言うポ◯キーの日である。
気が沈む話題はこれくらいにして、日中の出来事をお話しよう。
アリスはもういないが、他の子供達と公園で遊んだ。ウィルの時と同じように、昼食時に祝われた。
そして、私と彼、オリバー、ミリー、ベラ以外の4人も祝われた。
勿論、彼らは誕生日のお祝いではない。
進級だ。
この国では義務教育があり、1年生から3年生までの週3回の授業だ。魔術学園などへの進学を目指す人は更に進級し、週5回の授業を受ける。つまり、進学するつもりがない人は3年で卒業するのである。
なお、入学式は4月、卒業式は3月、飛び級の試験は3月と9月に行われる。
オリバーくんは先月卒業し、家で鍛冶技術を本格的に学んでいるらしい。先週皆でお祝いした。
そして今月、スタンリーとトーマスが3年生に、ジョージが2年生に、アイラが1年生になった。
みんな、精神年齢の成長が早い気がする。スマホとかテレビとかがなかったり、家の手伝いとかをちゃんとしてたりすると、そうなるのかねぇ。
私が入学する前後も、父は荒れるだろうな。嫌がらせ連発するだろうな。
しゃーないしゃーない。
考えても悩んでも、アイツの性根は変わらないわ。
どうせ考えるなら、明るいことを考えましょ。
じぶん、誕生日おめでとう!
みんな、進級おめでとう!




