第10話 初めての脅威に…
翌日、天曜日、朝。
ウィリアムくん達と合流し、公園へ向かう。
「メアリー、最近よく図書館にいるよね?」
先頭を歩くアリスが振り返って言った。
「あ、はい! 毎週地曜日に行ってます。これからは毎日行くつもりです! アリスお姉ちゃんもよく行くんですか?」
「うん、実は、私のひいおじいちゃんがあの図書館作ったんだ〜」
「そうなんですか。 いつもお世話になってます、ありがとうございます!」
「いえいえ〜」
まさか、身近に図書館の一家がいるとは……。
「としょかんって何?」
「本がいっぱいあって、好きなだけ読める所だよ」
「ふうん」
金髪とヘーゼルの目の女の子―アイラがアリスに尋ねた。
「すげー。俺、勉強苦手だからなー。親父に叱られながらふいごを押す方がマシだって思うぜ」
「ふいご…? オリバー兄ちゃんのおうちは、鍛冶屋さんなんですか?」
「ああ、そうだぜ。俺の苗字はそのまんま、スミスだ」
鍛冶屋=スミス、前世と変わらないな〜。ちょっと嬉しい。
「ウィリアムくんと同じ苗字なんですね」
「そうだったのか、ウィル?」
「う、うん。おじいちゃんのおじいちゃんは鍛冶屋さんだったけど、おじいちゃんのお父さんから布屋さんだって、お父さんが言ってた」
なるほどねぇ。
それからは各々の苗字の話になり、親の仕事と手伝いの話になり、……
「あの、質問なんですが、どうして天曜日は親の仕事を手伝わず、みんな集まって遊ぶんですか?」
「このアルカンミア王国をつくった王様が、『子どもは風の子。週に一度は遊ぶべし』って言ったらしいの。だから、大人達は私達がこうやって遊んでも何も言わないんだって」
「「風の子…?」」
教えてくれたアリスちゃん、初代の王様、ありがとう!
トーマスとジョージの二人が風の子の意味を捉えかねているようだ。私も初めて聞いた時は「風邪の子」かと思って戸惑ったなぁ。
雑談とは楽しいもので、いつの間にか公園に到着していた。
鬼ごっこもといセルザ、かくれんぼ、ボール遊び、etc...
初めて一緒に遊んだときは屋台でサンドウィッチっぽいものを買って昼に食べたが、あれは月末に一度だけらしく、他の日は各自昼食を持っていく。
今日の私の昼食はベーグルだ。腹持ちが良いから大好物である。
午後も走り回り、日が傾いてきたところで、帰ることになった。
通りをゾロゾロと歩いていたとき、横道から人影が……
「きゃあ!?」
「うぇ!?」
「おわぁ?」
「いやーっ!」
マスクで顔を隠した男が数人、アリスとオリバー、ジョージとベラを捕まえて、路地裏に引き込んだ。
私にも手が伸びてくる―――
「えいやっ!」
反射的に、魔術をぶっぱした。
練習した、火でも水でも氷でも、砂や石や紙でもなく………、
どさっ。
大の男が地面にのびた。
「もういっちょ!」
どさっ。
「お、おい! どうした!」
仲間が倒れた男に声をかけるが、当然返事はない。
どさっ。
どさっ。
路地の奥を覗いたが、誰もいない。
男四人だったのか。
「ふぅ。これ、人攫い? びっくりした〜」
怖いわ〜これ。こちとら子ども10人なのに攫おうとするなんて。
「お、おまわりさん! 来てください!」
アリスちゃんが叫んだ。
回りの大人が何人も寄ってきて、「大丈夫? 怪我は?」「警察官さん! こっちです!」など、口々に言っている。
髭をきれいに剃った、三十代くらいの制服を着た男性がやって来た。
そのお兄さんは、失神している覆面の男四人を見て、私に目を向けた。
「これ、君がやったの?」
「はい、気絶させる魔術で失神させました」
お兄さんは訝しみつつ、さらに質問を重ねた。
「君、いくつ?」
「二歳六ヶ月です」
「名前は?」
「メアリー・ブラウンです」
「そうか……」
こういう時は苗字も言ったほうがいい、よね?
「二歳半で魔術を? うそだろ……」
何かブツブツ言っているがよく聞こえない。
「えー、君たち、怪我は?」
私とアリスとオリバー以外は、みんな泣いていた。
そりゃあ泣くよな。私でも怖かったもん。
「…うん。大きな怪我は無さそうだね」
その後も色々あり、この事件が家に伝わったらしく、みんな親戚の大人と一緒に帰っていった。
公園でみんなで遊ぶのは当面禁止になった。
覆面男達は、通りすがりのおじさん数人と警察官が連れて行った。
夕焼けが、やけに赤く輝いていた。




