解放
彼は戦ってた。解放軍として。故郷を滅ぼされたあの日から。敵軍を1人でも道連れにしようとしていた。
死の気配が蔓延る戦場を渡り歩いて行った。返り血に身を染めながら。鬼のように敵軍の兵たちを殺していった。
敵軍を滅ぼすためなら、なんでもやった。復讐の鬼になっていたのである。身も心も。
憎んでいた。恨んでいた。その矛先を敵軍に向けていた。それ以外の道は無かった。喪われたもの。それはもう二度と手にすることができないのだから。
他の人から見れば、嫌気が指すような仕事であっても、敵軍を滅ぼせる、そのためなら進んでやってきた。汚れ仕事ならば場数を踏んでいる。しかし、敵軍を滅ぼせないのなら、やることはなかった。
彼の行動規準は、敵軍を滅ぼせるか否かに分かれていた。 ある意味では扱いやすい駒でもあったのだろう。
返り血に染まる日々。それでも彼は笑っていた。敵軍に向けて、鬼気として。敵軍にとっては恐怖だったのだろう。死神だと恐れられるほどになっていたのだから。
敵軍は彼を視認すると撤退するようになった。しかし、彼は追撃してきた。1人でも滅ぼすためなら、惜しむことなく、追撃の手を緩めることはしなかったのだから。
彼の仲間は、彼の戦闘スタイルにアドバイスした。遠距離からの攻撃をしてみたらどうかと。そうすれば、遠くから攻撃できて1人でも当てまくれば、滅ぼすことに繋がるのではないかと。
そのアドバイスを彼は受け入れた。まずは遠くから攻撃するための手段を模索していった。
弓矢によるもの。投石によるもの。バリスタによるもの。彼は自分に合うものを模索していった。
そして、1つの手段を見出していく。弓矢と投石。その2つの切り替えによって、敵軍と対峙していった。
死神の姿は見えなくなっていた。敵軍は油断していた。しかし、その油断が命取りになる。
予測していない場所からの攻撃。それらが相次いでいった。敵軍はその理由が分からぬまま、その生命を散らしていったのである。だが、まだ敵軍は残っている。彼にとって憎むべきは将軍格の者たちが。
彼の故郷を滅ぼした者たち。それらを滅ぼさない限り、彼の復讐は終わらないのだから。
敵軍を追い詰める。彼について敵軍は異名を与えた。死神と呼んでいたが、見えざる死神へと昇華したのである。恐怖をさらに加速させて。
解放軍はそのことをスパイを通して聞くと笑い出した。見えざる死神。その異名を知って。
それでも彼は気にすることなく、遠くからの攻撃に転向していった。弓矢での攻撃を搔い潜ってきた敵軍の兵を投石で殺して。それでも無理な場合は、剣での攻撃に切り替えて。
彼の鬼気迫る顔に恐怖を抱いた敵軍の兵は負け、生命を散らしていく。その姿を見た敵軍は恐怖に駆られ、死神が現れたと、口々に言い出した。
敵軍の撤退。それは賢明な判断だったのかもしれない。彼はすぐさま、弓矢に切り替えて背を向けていく敵軍へと容赦なく矢を放っていく。しかも、走りながらそうするのである。
撤退しながらも散っていく生命。向こうからすれば、逃げ切れない恐怖が待っていた。自分たちの優勢はもはや無い。皮肉なことに、彼という死神を、見えざる死神を生み出してしまったのは、敵軍の方なのだから。
それからの彼は、敵軍に対する功績から勲章をもらうほどになった。しかし、死んでいくその日まで、敵軍との戦いを続けたのである。
解放軍としての戦いは終わることを許さないのかーー。




