告白
彼は学校に残っていた。告白するためである。好きな人に。放課後の時間に。
しかし、相手は来なかった。手紙を渡したというのに。
彼は考えた。何か急な用事ができたのかもしれない。それとも、すでに付き合っている相手がいたのだろうか。それなら、返事をくれるんじゃなかろうか。または、クラスメイトとの会話で忘れてしまったのだろうか。
色んなことが予想される。彼の思考はそれで埋め尽くされてしまった。モヤモヤとした負のループに。
数時間が経った。彼女は現れなかった。彼は悟った。失恋の青春の始まりだということを。告白の未練を残したまま。
学生時代の彼はその日以降、片思いすらできなくなっていた。あれほど恋をした人はいなかったのだから。
その人以外の女性との付き合いは考えられなかったのだから。
それから10年の月日を経て、彼は社会人となっていた。男女問わず、彼は慕われていた。
仕事のフォローをしたり、リカバリー案を一緒に考えたりなどしていたら、いつの間にか慕われていたのである。
それでも彼は、恋愛ごとにはならないよう気を配っていた。あの頃の、学生時代に告白できなかったことを、引きずっていたから。
周囲に言いふらすことはしなかった。なぜなら、個人的なことであるからだ。酒の席での愚痴すらのぼらせなかった。
そんな彼だったが、ある時、邂逅を果たす。春の入社の時期に、彼が働いている職場に新しく入ってきたのが、学生時代に告白できなかった彼女である。
さらには、彼女の教育係として彼が任されることになったのだ。しかし、もう大人。働いている身。恋愛という個人的なことを職場に持ち込むべきではないと、そう思っていた。
社内恋愛する者たちもいたが、彼にとってそれは縁の無いことだと割り切っていたのである。
だが、相手は学生時代においての告白するはずだった相手。胸のドキドキを抑えながらの仕事は、それなりに苦労があった。
周囲は彼のことに気付いていた。普段とは違う先輩の様子にニヤついていた。しかし、仕事はきっちりとこなしていたので、咎めることは彼にはできなかったのである。
社内恋愛に自分は縁が無い。そう思っていた。割り切っていた。そのはずなのに、なぜか彼女のことを意識すると、胸がどきどきしてしまう。恋というのはなんて厄介なももだろう。
仕事は手についている。しかし、耐えられるだろうか。自分でも分からなくなっている。なんとかしなければ。しかし、どうやって。どうするべきか分からない。このまま胸の奥底にしまい込んでしまうしかないのだろうか。
彼はそう思っていた。しかし、彼女はそう思っていなかったのである。
教育係を終え、彼女が一人でも仕事をこなせるようになった頃、彼女からの告白の言葉が彼に届いたのである。
学生時代の頃は、彼に近づくことはできなかった。そのことを詫びたうえで、付き合ってほしいと言われたのである。
まさか、彼女から言われるなんて。不意を突かれた感じを受けた。それでも彼はOKの返事をした。
社内恋愛なんて自分には縁が無いと思っていた。だが、それは彼の思い込みに過ぎなかったのである。
休みを調整して、2人でデートに出かけたりしている。どちらかの体調が悪い時にはお家デートをしたりなんかして。
プラトニックラブを楽しんでいくのだろう。そして、やがては結婚するのかもしれないのだからーー。




