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 彼の存在というのは噂だけのはずだった。なのに、なぜ実在しているのだろう。いや、実在させてしまったのは私のせいだ。私が実験として、彼を扱うと決めた時から始まっていたのだろう。

 彼の存在を実在させてしまったのは私のせいである。自責の念に駆られながら、私は彼の存在を抹消しなければならなくなった。

 噂だけの存在に戻さなければならない。でなければ近いうちに周囲を傷つけていくだろう。

深夜のうちに片付けなければならない。陽が出てからでは無関係な人々に実害を与えかねないのだから。それは避けるべきである。絶対に。

 雨音が煩わしい。集中力が削がれていく。それでもなお、私は彼を捕らえ、実在から噂へと還さなければならない。失敗は許されない。

 怪しい音がしてきた。彼である。私は手にしている武器を握りしめる。この剣で彼を抹消するのだ。

この剣以外で彼を傷つけることはできない。そのはずである。彼の存在が抹消できないほどになっていないかぎりは。

 雨の中での戦いが始まる。彼は影の存在。私の姿なのは、私の陰を実験で使ったからだ。

光によって生じる影。それを切り離して、兵力を倍にするというものであった。

そして、その実験は、失敗に終わるだろう。思い通りに操ることができなかったからだ。ゆえに彼の存在は抹消しなければならないのである。

 実体を持つ影との戦い。時刻は深夜。彼にとって都合の良いフィールドだろう。しかし対策も無く挑んではいない。

 実験の副作用なのかは分からないが、彼の存在というのは、灰色となっている。灰色の影なんて存在しない。実験によって人為的に生み出さない限り。

 街灯の明かりが強まる。裏路地に逃げようとしても無駄である。一瞬の隙を突いて私は彼の身体に剣を突き立てた。人では発音できない声が辺りに響く。彼の断末魔だったのであろうか。

 私は自分の身体を照らす。影がある。どうやら、彼の存在は、灰色の影はいなくなったようである。

良かった。私は一安心して、息を吐く。後の処理は仲間たちがしてくれることだろう。

 実験は失敗に終わった。繰り返そうとする者はいないだろう。

しかし、懸念は残る。もし誰かが私の実験を真似して、被害をもたらしてしまったら。不安が脳裏に過る。このことについても対策を講じなければなるまい。一仕事を終えたら、また仕事が来る。やれやれ。たまったものではない。

しかしそれは、やらなければいけないことでもある。私のせいでこうなってしまったのだから。

 根を詰めても仕方ない。今夜はもう寝ることにしよう。久しぶりの外出だからか、疲れてしまった。

早く帰ってベッドに横になろう。そうしなければ、この疲れは取れないのだから。

 起きたら、すぐに湯船に入ることにしよう。温泉の素を入れて。リフレッシュすれば、何か良い案が浮かんでくるかもしれないから。

 私はそう考えると、自宅へと向かった。深夜の突然の強い街灯の明かりによって生じる反応を忘れながら。

 翌日、私が実験室に向かうと、室長から呼び出された。昨夜の街灯の件について、その費用を請求されたのである。

 問題ばかり降りかかるのだろうか。この国は。そろそろ見切りを付けるべきだろうかーー。



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