表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/95

シュミレーション

 彼は焦っていた。どんなに計画通りに物事を進めても、シミュレーションの段階になると、ことごとく失敗してしまうのだから。

 最初は余裕だと思っていた。しかし、シミュレーションになると失敗していった。理由も分からずに。

回数を重ねるたびに、どんどんと余裕が削られていくのを感じた。

何故、計画通りにいかないのか。そのことばかり考えていた。計画通りにいけば楽ができるというのに。

 焦りが募っていく。いや、すでに焦り以外の感情が無くなっているのだ。残念なことに。

 しかし、それは仕組まれた罠でもあった。データが改竄されているのだ。しかも重要な部分を。一部だけ。焦っている彼には、そのことを考える余裕なんて無いのだ。周囲からすれば滑稽に映るのだろう。

 彼にはもはや信じることしかできない。シミュレーションが計画通りにいくことを。改竄されているとも知らずに。

 どのくらいの回数を重ねただろうか。信じれば信じるほど裏切られていく。計画通りになんていかなくて。

 彼の姿はやつれてしまっていた。目の下の隈が濃厚なほどに。幽鬼を連想させるほどにまで。

過労状態そのもの。一歩違えれば、過労死に至りかねないぐらいに。

 それでも何とか踏み止まっていたのは、計画通りにいくこと。シミュレーションの成功だけである。改竄されていると知らずに。

 データを改竄していたのは、彼の同僚たち。それは彼の成功を妬んだ結果だった。

だがしかし、彼らの誤算は、彼の執着とも言える、シミュレーションの成功だった。

 そして、彼は倒れてしまった。過労死に最も近い状態で。死にかけの状態で。

彼の同僚たちは焦りを覚えた。自分たちのせいで、彼が倒れてしまったことに。その要因でもあったのだから。

 罪悪感が彼の同僚たちに襲いかかる。振り払えないようにして。そして同僚たちは、データの改竄を元に戻した。彼のシミュレーションは計画通りとなったのである。

 同僚たちは気付いた。彼の仕事量に。圧倒的なまでの仕事量をこなしつつ、楽できるようにもしていたのだから。 

 彼を失いかけた会社は、倒産の危機まで迎えることになった。納期が大幅に遅れていったのだから。その果てに業界での信用を失い、会社は倒産を決定した。

 その時になって、ようやく会社側は気付いた。全ては彼がいたからこそ、立つことができていたのだと。

 しばらくして彼は、計画通りにいったこと。シミュレーション通りにいったことを知った。けれども、勤めていた会社が倒産したこともセットになったが。

 療養を経て、彼は回復していった。以前の幽鬼を連想させる表情だったのが、元に戻ったのだから。

 それから彼は退院して、新たに別の会社へと再就職を果たしたのである。

 彼は学んだだろう。どんなに計画を立てたとしても、問題によって計画が頓挫することがあるのだと。

シミュレーション通りにいかないこともあるのだと。

 そして、無理はしないことを学んだ。無理をしてしまえば、二の舞を舞うことになるのだから。 会社の心臓になるのは、懲り懲りなのだからーー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ