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再会

 彼女とは再会することは無いだろう。彼女が望んでいた未来は彼に寄りかかっていたのだから。

彼の存在は大きかった。しかし、寄りかかるべきでは無かったのである。去っていくことが決まっていたのだから。

彼がいなくなっても、変わることはない。そう信じたかった。けれどもそれは裏切られたのである。

 彼がいなくなってから変わってしまった。環境は姿を変えずに、中身は変わるものだということを彼女は思い知らされたのである。

 約束していた、楽しみにしていた彼氏とのデートもドタキャンされた。どうしてなのか分からない。

彼とは顔見知りなのだろうか。彼氏を奪い取った女狐とは。彼の策謀によるものだろうか。そんなことは無いと信じたい。偶然なのかもしれないから。

しかし、疑念は残る。その疑念は彼女を苛ませていた。彼がいたら偶然だと言うだろう。

 疑心暗鬼の種が彼女の心の中に育っていく。止めることのできない速度で。そして、思いついてしまう。

彼氏を奪い取った女狐もろとも、死してしまえばいいと。だがそれは法に反すること。それはできない。思いついてしまったことをどうすればいいのか。振り払いたくとも振り払えない。心の中に新たに落とされた影のように。根付いてしまっているのかもしれない。だから次から次へと湧いてくるのだろうか。

 この衝動をどうすればいいのか。呟きのネタにすればいいのか。根っこから引き抜けばいいのか。しかし、どうやって、そうすればいいのか。考えても分からない。

 野良猫だった愛猫を抱きしめる。孤独を癒してもらうために。老猫だとしても、撫でている間は忘れられるから。収めることができるから。内なる衝動を。

 そういえばと、ふと思い出す。彼が書いていた小説のことを。彼のペンネームのことを。

手元のタブレットに打ち込み、ネットの海で見つける。彼がいる小説の世界を。

 そして、ふと思いついた。この衝動の矛先をぶつけるための方法を。書けばいいのだ。自分なりの世界の中で、彼氏と女狐の話を。そう考えると笑いが込み上げてきた。久しぶりの笑いが。腹の奥底から。まるで欲しいものを見つけ、手に入れようとする子供のように。

  望んでいたことが現実で起こせないならば、フィクションで起こせばいい。彼女はそう考えた。

 好きなゲームや物語の知識を自分なりに咀嚼して。そしてプロットを書き出した。メモ代わりでいい。本物にするには早いから。それから色々と組み合わせていった。世界観は彼の世界がバレない程度に、参考までに使わしてもらおう。彼が知っていたらOKを出してくれるだろうか。それは分からないけども。

 やがて彼女はタブレットに物語を打ち込み始めた。婚約破棄もので、辺境に追いやられる話を。しかし、それがきっかけで2人の物事が上手くいかなくなる展開を。愛猫をモデルにしたケットシーと結ばれハッピーエンドになる話を。

 彼女は物語を打ち込み終えた。そしてバックアップができるように設定すると、彼女はそのまま倒れるかのように眠ってしまった。エネルギーを使い果たしてしまったようにして。

 彼女を突き動かしていた衝動はタブレットに打ち込まれた物語が証明している。その文字数が、その内容が、バラバラのパーツを1つにまとめ上げたかのような軌跡を残して。

 彼はそのことを知ることは無いだろう。彼女と女狐たちも。けれども、物語という海の中で引き寄せられる可能性。それを否定することはできない。彼女の魂が込められた1作はーー。


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