迷宮
彼は気が付くと、迷宮にいた。噂によれば迷宮とは四方が固い壁で囲まれているという。
そして、四方のどこかには、迷宮から出るための扉があるらしい。しかし、中には迷宮に閉じ込められるものもあるらしい。本当かどうかは分からないが。
彼は気が付いていた。自分が今いる迷宮には食べ物が無いことに。なぜなら四方の壁は見渡す限り砂漠だったから。砂を食べることはできないもの。だが、脱出するために必要なものが迷宮には必ずあるとも言われていた。それがどこにあるかは分からない。分かってしまえば迷宮の意味は無いのだから。
彼は空腹に襲われる前に何とかしようとした。そして、見つける。見るからに怪しい壁があった。レンガの壁である。
そして、彼は思い出す。迷宮のレンガの壁は爆弾があれば壊せるのだと。火打ち石が必要になるが、爆弾と共にあるのだと。
彼は爆弾を探し始める。すると、迷宮の中心の廃墟らしきところから、赤色の宝箱を見つけた。どこかのRPGを思わせるもの。そんなことは彼は気にしなかった。
中身は彼が思った通り、爆弾だった。ついでに火打ち石も。これがあればあのレンガの壁を壊せるに違いない。彼はそう思っていた。しかし、彼の腹は鳴ってしまう。空腹状態になってしまったのだ。
何かを食べなければならない。しかし、食べられるものは見つからない。どうすればいいのか。
いつも以上に腹の虫が鳴り響いている。そのことに意識が持っていかれてしまう。なんとかあのレンガの壁まで向かわなければ。体力が減っていくのを感じる。ローグプレイのRPGじゃないというのに。
彼は空腹に意識のリソースを割かれながらも、レンガの壁があった場所までたどり着いた。これでレンガの壁が壊れてくれればいい。
そして、火打ち石で爆弾に着火させる。巻き込まれないように距離を取る。これでレンガの壁が壊れて、道が開いた。しかしそこにあったのは、外へ出るための扉ではない。下り階段だった。
だが、なぜか下り階段から良い匂いがしてきた。肉を炙る感じのもの。それは彼の空腹感を刺激させるのには丁度良かった。
彼は躊躇うことなく下り階段を降りていった。そこにあったのは焚き火とそこに添えられていた塊肉であった。すぐそばには金属製のナイフまであった。それで塊肉を削いで食べろと言うのだろう。
彼は迷うことなく、塊肉をナイフで削ぎ落としながら、肉を口に持っていき食べた。口内に肉汁が溢れるのを感じる。美味い。これしか言葉が出てこなかった。
しかし、迷いは残る。この肉は誰が用意したのか。勝手に食べて良かったのか。そして、こうも思った。もしかしたら迷宮の外には出ることができないのではないかと。
迷宮は生きているのではないか。踏破した者の願いを叶えることはできる。そして、その願いは食べ物なら食べ物を。外に出たいのなら、外への扉を。その時の願いに応じて答えるのではないかと。
ならば彼は迷宮から出られないことになってしまう。また迷宮を攻略しなくてはならない。しかし、次の迷宮はなんなのだろうか。考えても仕方ない。この塊肉を食べてしまうことにしよう。そうしなければ、今度もまた二の舞を待ってしまうことになるのだから。
幸いにも、このエリアには植物がある。水分補給できるのではないだろうか。それは分からない。けれども、砂漠じゃないだけ少しはマシだろう。
彼はそうポジティブに捉えることにした。この迷宮の攻略を考えながらーー。




