独り言
彼は呟く。独り言を。車のナンバーから連想した言葉を。存在するか分からないとしても。
ある種の性なのかもしれない。数字に目を付ける者の。言葉を意識する者。そういうのかもしれない。
シングルナンバーに出会った時は珍しくもつまらなそうにしている。確率としては、どのくらいか分からないが。面白みがないのかもしれない。4桁のナンバーで遊んでいるから。
ありふれながらも、面白く感じる。実際の会社名だったりする。株は保有してないが。そうやって遊んでいるのだ。
彼自身、いつの間にか身に付けていた遊び方。いつ頃から始めたのかは分からない。しかし、誰にも迷惑をかけていない。むしろ、話のネタにしている。彼なりの楽しみ方なのだ。
ナンバーを見て連想する。覚え方が独特だと言われたことがある。でも、楽しんでもらえている。真相は分からないが。
日が暗くなる時刻には、車のナンバーが分からない。それはそれと割り切っている。見えないものは見えない。だから仕方ないのだから。
雨が降る晩の時刻なら、特にそう思うのだろう。暗闇と雨の中の視界は悪いのだから。
明るければいい。しかし、そう都合良くはいかないのである。
むしろ、早く帰りたい。その気持が彼を早歩きさせるのかもしれない。事実は分からないがね。
サロンは西の方角にあるのか。花の国に行くための方法はあるのか。岩はさみとはなんなのか。支配は失敗したのか。失敗が支配したのか。白い城とはなんなのか。老齢のサロンとは人物なのか。竹刀市という市はあるのだろうか。五礼箱は実在するのかしないのか。死後の意味とはどういう意味なのか。死後の波とは冥府の川のことなのか。ハイハーレイとはなんなのか。
車のナンバーで連想した言葉たち。意味を探し求めたところで意味はない。深読みするだけ無駄なことなのだから。その無駄を楽しめられるかどうか。合理性などそこには無いのだから。
酒を呑まずに数字を呑んでいるのかもしれない。薬の関係で呑めないのだから。
普通の考えではないのかもしれないとしても、それで楽しもうとする。日常にありふれた数字を使って。
駐車場に並んでいる車のナンバーの数の大きさで勝手に勝敗を決めたりとか。それも変わっているのかもしれない。口に出さないだけで。出したとしても気付かれていないのかもしれないが。
変わり者の遊び人でもあるのかもしれない。職場では職人として働いている。だからこそ、帰る際には遊び人へと変わるのかもしれない。彼なりのリラックスなのだと思われる。
頭を使うリラックスはリラックスにならないのかもしれない。真相は不明である。だが、その謎を楽しむ努力をするなら、良い結果になるのかもしれない。
彼はこれからも車のナンバーを見て、数字から言葉を連想していくのだろう。理解されないとしても。
シングルナンバーの珍しさとつまらなさを味わいながらも。ありふれた4桁のナンバーから面白味を見出していくのだろう。彼なりの個性として。
老師ハニーが集めた蜜を舐めながら。老師の苺を味わいながら。黒いロックを聞きながら。適当なナンバープレートの数字から連想した言葉を吐き出していく。
それが彼なりの性なのかもしれないからーー。




