ダイヤモンド
彼はダイヤモンドを探していた。一攫千金を狙って。鉱山を掘り進めていた。大多数ならば途中で諦めてしまうだろう。
けれども、彼は周りとは違っていた。早々と見切りを付けて去っていく仲間たち。一人になったとしても、不作が続く中でも、一人黙々と掘り進めていた。
その様は寝食を忘れ、掘り続ける人形のようでもあった。だが、彼は人間である。人なのだから、人並みに疲れるし、眠くもなる。ただ掘る時の執念は違っていた。
まるで鬼気として掘り進めていたのである。掘らなければならない。彼の背中がそのことを掻き立てていた。
だからこそ、仲間たちが次々と辞めていくとしても、彼は気にしなかったのである。仕事が増えてしまうとしても、ただ一人で仕事をこなしていた。
彼がダイヤモンドに執着している理由は唯一つ。恋人の病気を治すための薬代を稼ぐことだ。
薬があれば彼女は元気になる。病の苦しみから解放される。そのために彼は鉱夫としてダイヤモンドを探しているのである。自分のためではなく、彼女のため。治すための薬代として、探しているのだ。
他人のためにそこまでする者は珍しいと言えるだろう。だからこそ、幸運は彼に引き寄せられた。
彼が掘り進んでいくたびに、何か冴え渡る感覚がしていた。直感というものかもしれない。その直感に従うように、彼は掘り進んでいく。
すると、一つの輝きに出会った。原石である。ただの原石ではない。輝きを放っている。それを見た彼は確信した。探し求めていたもの。すなわち、ダイヤモンドである。
周囲にもないのか。彼はダイヤモンドの原石の周囲を掘り進む。しかし、原石の周りには何もなかった。だが、このダイヤモンドの原石だけで良かった。
この原石ならば、一攫千金には十分。お釣りが来るほどにだ。これで彼女の病を治す薬代にはなる。彼の努力は報われたのである。
早々と諦めるのではなく、ひたすらに掘り進めていた彼にとって、幸運は報いたのかもしれない。自分のためではなく誰かのために。その姿勢こそが重要なのかもしれないのだ。
彼はダイヤモンドの原石を売り払い、高額を手にした。その金で、彼女の病を治す薬を買った。
どれくらいの月日、離れていたのだろうか。彼女は今でも病に苦しんだままなのだろうか。病がひどくなっていなければいいのだが。大金を手にした彼はそのことばかり考えていた。
やがて、彼女がいる村へと彼は帰ってきた。村人たちは彼の帰還に喜んだが、彼の心にあったのは、病に伏せる彼女のこと。それ以外考えなかった。
やがて彼女が眠っている家へとたどり着いた。そこには病に臥せっている彼女とその両親がいた。彼のことに気付くと彼が持ってきた薬を彼女に飲ませた。すると、薬が彼女に合っていたのか、彼女は少しずつ、体調が良くなっていったのである。
しばらくして、完全に治った彼女と、ダイヤモンドを探し、掘り進めていた彼は、結婚した。村人たち総出で快気祝いをするようにして。
そして、長い年月を経た今でも二人は幸せそうにしているのであったーー。




