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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第六話 聖女ラエルザ ボードンと出会う①


 魔王の鎌はよく切れる。体を軸にして円を描くように鎌を振ると、すぱすぱと草が切れていく。あれほど覆い茂っていた草も、日暮れ前に刈り終えることができた。あとは草を一ヶ所に集めて、干しておけば草刈は完了だ。


「ねぇお前、フォークになれる?」

 デザリアに尋ねると、鎌の根元にある髑髏が光り、四本の歯を持つフォークとなる。私は草の臭いが立ち込める庭をせっせと往復し、フォークで刈り取った草を集め終える。


「ありがとうデザリア。お前は本当に役に立つわね」

 デザリアをスティックに戻した後に褒めてあげると、髑髏が嬉しそうに光った気がした。

「お嬢様、よろしいですか」

 アリサの声に振り向くとそこにはアリサだけでなく、二人の男性が立っていた。一人はこの屋敷を案内してくれたタバサだ。もう一人は白髪に茶色い帽子をかぶる老人だった。


「お嬢様。こちら、キルクス村の村長であるハネスさんです」

 ハネス村長はかぶっていた帽子を脱いで頭を下げる。

「初めまして、ハネス村長。ラエルザ・ロウ・マグノリアと申します」

 私はデザリアを腰の後ろにねじ込み、スカートを軽く持ち上げて名乗る。


「ラエルザ様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。領主の方が戻られるとは、知りませんでしたもので」

「いえ。私達の方こそ、急に押しかけてしまい申し訳ありません。また厚かましいお願いですが、この村に住まわせてもらっても構いませんか?」


「それはもちろん、この村は貴方のものですから」

 私の申し出に対し、ハネス村長は頷いてくれる。

「ただ、このお屋敷を住めるようにするとなると、村人の手も限られておりまして、すぐというわけには……」

 ハネス村長は言葉を濁しながら屋敷を見上げた。村人達にも予定があり、忙しいだろう。


「それは大丈夫ですよ、教会に住まわせてもらいますので」

 私はいつでもいいと断ろうとしたが、厳しい声が飛ぶ。


「いけません。お嬢様にこのような暮らしをいつまでもさせるわけにはまいりません。まだ収穫は先でしょう? 村人の手は空いていないのですか?」

「ちょ、ちょっとアリサ」

 眼鏡の奥にある目を細めるアリサに対し、私は言い過ぎだととりなす。確かに冬に蒔いた麦の種は、夏に実を付けて収穫となる。今は春の終わり。来るときに見た村の畑では、まだ麦の穂は立っていた。収穫までには時間があるが、急にきて仕事を割り振られても、村人も困るはずだ。


「それがその……」

 ハネス村長が重い口を開こうとしたその時、怒声が頭上を駆け抜けた。

「おい、どうなっておる! 何故出迎えがない!」

 のどかな村に似合わぬ大声に、私はアリサやハネス村長と目を見合わせる。しかし誰の顔にも戸惑いがあり、心当たりはなさそうだった。


 怒鳴り声は屋敷の正門から聞こえてきた。私達は草を刈り終えたばかりの庭を横切り、屋敷の入口へと向かった。すると屋敷の前には、荷物を満載した大きな馬車が停まっている。


「馬車? あの魔物だらけの道を、馬車でこられたの?」

 私は驚きながら、キルクス村に来た時のことを思い出した。


 道中は大量の魔物が出没し、馬車を操る御者はこんな危険な場所は進めないと帰っていった。やむなく私達は魔物を撃退しながら、荷物を担いで徒歩でキルクス村にまでやって来た。

 私達があれほど苦労したというのに、目の前にある馬車には目立った汚れや傷はない。私は信じられず、御者台に座る老人を見て声を掛けた。


「あの、どこから来られたのですか? 魔物は大丈夫でしたか?」

「儂らは十五日前に王都を出てここに来たのだが、魔物なんぞ、一体も遭遇してはおらんよ?」

 老人の言葉に、私とアリサは目を見合わせる。王都からということは、私達と同じ道をたどったはずだ。何故彼らは魔物に襲われなかったのか? 私が頭に特大の疑問符を浮かべていると、アリサがあっと声をあげる。


「もしかしたらこの馬車は、私達のすぐ後に出発したのかもしれません。そして魔物を倒してやって来た、私達のすぐ後をついてきた」

 アリサの推理に、私はなるほどと納得する。私達は出会う魔物を全て蹴散らしてやって来た。そうなると、一瞬だけ街道の周辺は、魔物が倒された空白地となる。この馬車はそこを通って来たのだ。


「なんというか、我々の苦労を横取りされたようで釈然としませんね」

「まぁいいじゃない。人助けをしたと思っておきましょう」

 三白眼を細めるアリサに、私はとりなしておく。私達が損をしたわけではないのだ。


「おい、誰か居ないのか!」

 馬車の前で話し込む私達の頭上を、怒鳴り声が通り過ぎていく。そういえばこの声につられてやってきたことをもいだし、馬車の横を抜けて正門へと向かった。

 屋敷の前には一組の男女がいた。口ひげを生やした小太りの中年男性が叫び、紫のドレスを着た背の高い痩せた中年女性が不機嫌そうに扇を仰いでいる。更にその二人の後ろには、鎧兜を身に着けた中年の男性と、顔に雀斑がある青年が立っていた。


「む、やっと出てきおったか! いったいどうなっておる!」

 男性が私達に気づき、怒鳴りつける。

「私はこの村の村長をしておりますハネスですが、貴方達はいったいどなたでしょう?」

「何を言っておる! 特別監察官のボードンである! 手紙を出しておいただろうが!」

 ボードンと名乗った男性は、頭ごなしに叱りつける。私達も到着した時に聞いたが、この村に手紙が届くのは三ヶ月に一度だけ。ボードンはそのことを知らないのだ。


「あの、その手紙は、まだ届いていないのだと思いますよ」

「なんだと! 手紙もろくに届かんとは、全く、地の果てではないか。こんなところに来る羽目になるとは!」

 ハネス村長が手紙の事情を教えると、ボードンは忌々しいと罵る。

 わめくボードンに、アリサが苛立ちに目を細める。


「失礼ですが、特別監察官がマグノリア領に一体何の御用で?」

 ぶっきらぼうに尋ねるアリサを見て、ボードンは不愉快に顔をしかめ、そして小さな瞳で私を見る。

「ふむ、貴方はラエルザ伯爵だな。以前王宮で開かれた園遊会で見たことがある。私は王都から派遣された特別監査官のボードンだ」

 ボードンは上着の襟を正し、胸を張って見下ろす。


「初めまして、ボードン様。ラエルザです。王都の方が、どうして我が領地に?」

 正直、彼の来訪は意外の一言だった。領主である私達ですら訪れることのなかった場所に、王都から人が来るとは思わなかった。


「その領地の運営に、問題があると報告が上がっている。そのために私が派遣された。ラエルザ伯爵。貴方からこのマグノリア領を没収する!」

 ボードンは高らかに宣言した。


ロメリア戦記のアニメが、2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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― 新着の感想 ―
まあ確かに放ったらかしのままでしたもんね、問題ないですとは言えない笑
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