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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第三話 聖女ラエルザ キルクス村に到着する①


「や、やっと、到着したわね……」

 王都を出て二十日後、山の頂に上った私は、荒い息を吐いて窪地に広がるキルクス村を見下ろした。村を取り囲む山々は険しく、断崖絶壁の岩肌を見せていた。そして窪地の底には湖や畑、そして村が見える。目的地であるキルクス村だった。


「あー疲れた」

 声と共に私はその場にへたり込んだ。私の格好は散々である。服は汚れ、髪も乱れている。何より空腹だった。この十日間、ずっと歩き詰めで野営の日々だったのだ


「お嬢様、はしたないですよ」

「だって仕方ないじゃない。アリサも大変だったでしょ」

 肩越しに振り返ると、大荷物を担いだアリサが立っていた。巨大な背嚢を背負い、その上に幾つもの箱を縄で括りつけ、見上げるほどの荷物となっている。さらに両手にも大きな鞄を手にしており、とても重そうだった。


「いえ、重くなどありません。侍女が主の荷物を持つのに、重たいなどということはありません。侍女の嗜みです」

 アリサは平然と言ってのけるが、絶対に嘘だと思う。


「でもまさか、馬車が使えなくなるとはねぇ」

 ここまでの道のりは、それはもう大変だった。マグノリア領に来るまでは馬車も快適で楽しかったのだが、私の領地に入ったとたんに、牛ほども大きさのある魔物が現れたのだ。

 魔物とは魔王ゼーダインが残した呪いを吸収し、変貌した野生生物の姿といわれている。その性質は凶暴で、私達に目掛けて襲い掛かって来た。


「あの根性なしの御者のせいです。あの程度の魔物に臆するなど……」

 アリサが眉間に皺を寄せ、ぐちぐちと文句を言う。魔物自体は、私が一撃で撃退したので誰も怪我をすることはなかった。しかし御者はこんな話は聞いていないと、同道を拒否したのだ。私達は新たな馬車を手配することもできず、荷物を担いでキルクス村に向かうしかなかった。


「あんなに魔物が出たのなら、どのみち馬車は無理よ」

 私は道中に遭遇した魔物の数々を思い出した。最初の一体などまだかわいいもので、象よりも大きな魔物がごろごろしていた。


 もちろんそれらはすべて倒してきたのだが、魔物が跋扈する領地は荒廃していた。街道や橋もひどい有様だった。とても馬車が通行できたとは思えない。

 私達も途中で道に迷い、村に到着するまで十日もかかってしまったのだ。


「何とか到着できてよかったわ」

 私が窪地の中にあるキルクス村を見下ろすと、アリサも習う。


「思ったよりも小さな村ですね」

 アリサはキルクス村を見て、顔を顰めた。窪地の底には湖と畑が広がり、その間に家屋が密集して立ち並んでいる。家の数は五十軒ほどしかなく、規模はかなり小さい。


「のどかでよさそうな村じゃない」

 私の視線の先では畑で男性が農作業し、村では子供達が走り回っているのが見えた。王都のようなきれいな街並みはないが、ゆっくりとした時間が流れているのがわかる。


「ちゃんと屋敷もあるわね」

 目を凝らすと、湖の前に大きな屋敷が見えた。村のほかの家屋は茅葺や板葺きであるのに対し、こちらは茶色い瓦葺きで、白い石の外壁も見える。おそらくお爺様が建てた屋敷だろう。少なくも今夜は、屋根のある場所で眠れるのだ。


「住めば都よ、行ってみましょう」

 私は勢いよく立ち上がり歩き出した。アリサも荷物を抱えてついてくる。


 窪地に存在するキルクス村は、周囲を切り立った崖に囲われている。この崖が周囲の魔物から村を守っているのだろう。村に入る道は北からの一本道に限られており、入り口には簡単ながら木製の門があった。門の向こうには物見やぐらがあり、麦わら帽子をかぶった中年の男性が欠伸をしているのが見える。

 中年男性は、最初は私達に気づかなかった。だが途中でこちらを見て目を瞬かせる。


「お嬢さん方、どこからきなさった?」

「王都から、ここはキルクス村ですよね?」

「たしかにそうですが……とにかくお入んなさい」 

 物見やぐらの男性は私達に驚きながらも、やぐらを下りて門を開けようとしてくれる。

 開門を待っている間、私はアリサに目を向けた。


「ねぇ、私達が来ることは、手紙で知らせておいたのよね?」

「はい。ハネスという村長がいるらしいので、その方に手紙を出したはずなのですが……」

 アリサが戸惑いの目を私に向けると、門が開かれ、麦わら帽子の男性が迎えてくれた。


「私はタバサってもんですが、お嬢さん方は?」

 タバサさんに問われ、私は姿勢を正した。アリサも背筋を伸ばして、私に手を差し伸べる。

「この方はラエルザ・ロウ・マグノリア。このマグノリア領の領主です」

 アリサが咳払いの後、紹介してくれる。私は貴族らしく、スカートを軽く持ち上げて会釈した。すると男性は頬を掻く。


「この土地に、領主なんていたんですか?」

 タバサさん丸めた目で私をしげしげと見回す。


「村長のハネスさんはいらっしゃいますか? 私達が向かうと、二十日前にお手紙を出したはずなのですが?」

「ハネス村長なら畑にいると思いますが……。ただこの村に手紙が着くのは、三ヶ月に一度だけです。次に届くのはだいぶ先ですよ」

 タバサさんの答えに、アリサは目尻を吊り上げる。どうやら私達は、手紙を追い抜いてきたようだった。


「全く、なんてところなの!」

「アリサ、そう怒らないで。調べなかった私達も悪いんだし。ねぇタバサさん。この村に私の屋敷があるはずですが、ご存じありませんか? 私達はそこに滞在する予定なのですが」

「ああ、村の外れにあるお屋敷ね。あそこは領主さまの屋敷だったんですか。いいですよ、すぐそこなんで、案内して差し上げます」

 タバサさんは嫌な顔一つせず、私達を屋敷へと案内してくれた。

 麦わら帽子に先導されてキルクス村を歩くと、村人達が顔をあげて私達を見る。


「お嬢様を好奇の目で見るなど無礼な!」

「いや、どう考えてもアリサを見ているんだと思うよ」

 私はアリサが背負う大荷物の数々を見た。小柄な女性が、自分より大きな荷物を担いでいたら、それは珍しいだろう。


「やっぱりその荷物は多すぎたんじゃない?」

 私は改めて、アリサが背負う荷物を見た。馬車が引き返すことになったので、全ての荷物を持ち運ぶわけにはいかなかった。本来であれば必要最低限のものだけを厳選すべきだが、アリサはあれも必要これも必要と言って荷をほどき、結局は馬車に積んでいた半分ほどの荷物を持っていくことになった。


「お嬢様のお世話をするのに、これらはなくてはならない品です。新年を祝う食事会の大皿は泣く泣く諦めましたが、舞踏会で使うお洋服と靴、園遊会で使用する御帽子は絶対に必要です。お嬢様の威厳と威信にかかわりますから」

 アリサは力説するが、このキルクス村で舞踏会と園遊会は行われないと思う。


 ちなみに私も持つといったのだが、アリサはお嬢様に荷物持ちをさせるわけにはいかないと、一つとして持たせなかった。そして大荷物を背負い、ここまでの道のりを歩ききった。アリサは見た目によらず力持ちだ。


 好奇の目に晒されながら、麦畑の間を歩く。村人達は農作業にいそしんでいるが、畑は乾燥しており地面がひび割れていた。どうやら雨が少なく日照りのようだ。夏を前にしたこの時期に、この状況は大丈夫なのだろうか?


 畑を通り過ぎると、村の家々が見えてきた。幾つもの家が不規則に建てられている。家々の前を通り抜けると、茶色い瓦を頂く白い壁の屋敷が見えてきた。


10/4の12:00にも更新します


ロメリア戦記のアニメが放送されます

2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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