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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第二十五話 聖女ラエルザ 嘆願書を送られる②


 アリサの朝食を食べていると、勝手口の向こう側で声がした。

「おーい、ラエルザ! 約束通り来たぞ!」

 声はキルクス村に住むソイルのものだった。


「ソイル、ちょっと待ってて」

 私は扉の向こうに声を掛けたのち、残っていた料理を口の中に放り込む。


「ほひほうはまへひた」

 神託教会では日々の食事の糧に感謝を表すため、食前に『頂きます』食後に『ご馳走様でした』と唱えるのが教義であった。もちろん本来はもう少し長い祈りの言葉があるのだが、今は急いでいるので略式だ。

 私は頬張りながら立ち上がり、食器を台所へと持っていく。


「お嬢様、はしたないですよ」

 アリサは顔を顰めつつも、水の入ったコップを差し出してくれる。

 私は受け取って飲み干し、一息つく。


「ごめんなさい、ありがとう」

 礼を言って、私は勝手口に向かった。扉を開けると頬に向こう傷のある少年が立っている。


「ソイル、お待たせ」

 私が出ると、ソイルは応と声を返す。しかしその直後、少年は顔を硬直させた。服に変なところがあったのかと思ったが、ソイルの視線は私より上に向けられており、後方を見ていることに気づいた。

 振り返ると背後にアリサが立っており、ソイルを睨んでいる。


「ちょっと、アリサ」

 私は警戒した。アリサは私が友達を作ることを、あまりよく思わないのだ。


「お前が、精霊が見えるとか抜かしている小僧か」

「だ、だったらなんだよ。言っておくけれどな! 精霊様は本当にいるんだぞ!」

 氷のように冷たいアリサの視線に息を呑むも、ソイルは負けまいと言い返す。


 ソイルの側には、常に精霊様と呼ばれる光り輝く小人がいる。今もソイルの右肩に載っているが、アリサの視線におびえて、ソイルの首の後ろに隠れようとしていた。ただし精霊様はソイルと私にしか見ることができず、村人はソイルのことを嘘つきだと決めつけている。

 この誤解を解いてあげたいが、見えないものの証明は難しい。


「黙れ、嘘かどうかは私が判断する」

 冷たく言い放つアリサの目が、突如として赤く輝く。瞳の奥底に宿っているのは、闘気と呼ばれる力だった。私も闘気を使用できるが、アリサは私より上手に闘気を操り、目に集中してみせる。


「アリサ、闘気が使えたの?」

「侍女の嗜みでございます、お嬢様」

 アリサは優雅にほほ笑むが、絶対に違うと思う。


「なるほど、確かに右肩に、何かいるな。それが精霊様か」

「え? アリサ、見えるの?」

 目を細めてソイルを睨むアリサに、私は目を丸めた。精霊様は私とソイル以外、見えないものと思っていた。だがこんなに身近に、見える人がいるとは思わなかった。


「別にお嬢様程、はっきりと見えているわけではありません。ただこの小僧の肩に、何か力の集まりがあることはわかります。」

 アリサは細い指先を向け、首の後ろに隠れようとしている精霊様を正確に示した。


「例えば誰にも見ることができない棒があったとして、それを川に突き立てれば、水の流れから棒があることはわかるでしょう? それと同じです」

 アリサは簡単に言ってのけた。

 闘気は身体能力や五感を強化する効果がある。アリサは目に闘気を集中させ、周囲の僅かな変化を見抜き、精霊様の存在を察知したのだ。


「お前が嘘つきではないということは、確かなようだな」

「あ、あったりまえだ! 嘘なんかつくもんか!」

「ふん、どうだか」

 アリサは冷たい目でソイルを見返す。


「ねぇ、アリサ。闘気を使える人なら、精霊様が見られるんだ。それなら、皆に精霊様がちゃんといるって、説明できるかな?」

 私はアリサに向けて、期待のこもった眼差しを向けた。しかし侍女は首を横に振る。


「闘気が使用できるのは、限られた者だけです。習得も本人の才能に加えて、長時間の訓練を必要とします。村人には難しいでしょう」

「で、でも、私とアリサが見えるんだし……」

 私は食い下がった。なんとしても、ソイルの汚名を返上させてあげたい。


「私とお嬢様だけでは、説得できないでしょう。我々は村に受け入れてもらえていますが、それでも最近来たよそ者です。村人達の心を変えるのは簡単ではありません」

 アリサの顔は険しい。私はそれでもと食い下がろうとしたが、ソイルが止めた。


「いいよ、ラエルザ。これは俺が解決すべき問題だ」

「当然だな。全てはお前の行いが引き起こした結果だ。自分の不始末は自分で片を付けろ。お嬢様に頼るなど許さん」

「うるさい、お前に言われなくてもやってやるよ!」

 厳しいアリサの言葉に、ソイルは歯を噛みしめて言い返した。


「あと、お前が嘘つきであろうとなかろうと、どうでもいい。だがお嬢様に害を及ぼすようなことがあれば、私が許さん。いつでも目を光らせておくからな!」

「ちょっとアリサ……」

 過保護すぎるアリサの言葉に、私は頭を抱えるしかなかった。


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皆さん見てください

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