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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第十五話 聖女ラエルザ 土を耕す③


 私は腰のデザリアを引き抜くと声をかけた。

「ねぇ、お前、鍬になれる? 農具よ? わかる?」

 デザリアは元々魔王が使っていた武器であるため、鍬になれるかどうかわからなかった。しかし私が語りかけると、リボンのついた髑髏の眼窩が光り、短いスティックが鍬へと変わる。ただし柄は通常の倍は長く、先端についている刃に至っては、並みの鍬の十倍は大きい。これならひと掻きでかなりの面積を耕せるだろう。


 私は声と共にデザリアを振るい、鍬を大地に突き立てる。

 渇いた地面は堅いはずだが、魔王の武器は柔らかいゼリーでも切るように地面に食い込む。鍬を起こすと地面が深く掘り返され、石が混じった土が顕わとなる。

 一度鍬を振るっただけで、大人が入れそうなほどの大きさを耕すことが出来た。


「やっぱり簡単ね、様子見できただけだけれど、これなら今日にも終わるかも」

 私はふふんと鼻で笑いながら、鍬となったデザリアを振り上げた。

「土を掘るのは楽しいな♪ ザクザクガリガリ♪ ここ掘れワンワン♪」

 作詞作曲自分の唄を歌いながら、私は地面を掘り進める。さほど時間をかけることなく、周囲一面の土を掘り起こすことが出来た。これだけあればキルクス村にある畑以上の広さがあるだろう。しかし……。


「なんだか、畑っぽくない?」

 私は掘り起こした地面を見て、違和感を覚えた。ここに来る時にキルクス村の畑の前を通ったが、その時に見た畑の土と、今耕した地面とではあまりにも違い過ぎていた。畑の土はとても柔らかそうで、そして黒っぽかった。しかし私が耕した地面は、硬くざらざらとしていて、白っぽい気がする。掘り起こされたばかりの地面は、石も混じており、なんだか畑に見えない。


「なんだか硬い、水が少ないからかしら?」

 膝を折って掘り起こした土を手に取るが、石のように硬く、力を籠めるとばらばらと崩れていく。水を掛ければ少しは変わるだろうが、それで畑のような土になるかと言われれば、違う気がする。泥遊びをしてきた経験から、ここに水を注いでも、べちゃべちゃになって渇けばまた硬くなるだけだとわかる。


「何が違うのかしら?」

 私は顎に手を当て考えたが、解決策が思いつくはずもなかった。だがある思い付きが頭をよぎる。


「そうだ、山に行ってみよう。森の土とここの土、比べてみれば何か分かるかも」

 自分が思いついたにしては、名案のように思えた。山で遊んだ時の記憶を思い返せば、山の土は黒くふわふわとしており、どこか畑の土と似ている気がした。何が違うのかを調査すれば、対策ができるかもしれない。


 私は早速、近くの山へと向かった。キルクス村に来てまだ日は浅いが、先月は魔物退治に山には入り浸っていた。そのため周囲の地形は大体頭に入っている。土の比較のついでに、魔物が新たに生まれていないかも調べておけば、手間が省けるというものだった。


 行く手に山が見えてくると、荒れ地の様相も変わり始めてくる。草が多くなり植生が変わったのが分る。まずはここからと、私はデザリアをスコップに変えて地面を掘ってみる。まだ荒れ地に近いためか、少し硬く砂っぽい。私は山の麓、木が生えている付近にまで歩み寄り、地面を掘ってみる。今度の土は柔らかく、色も黒っぽい。


 私は獣道を見つけ、山に分け入る。そして落ち葉が積み重なった地面を掘ってみた。

 腐葉土の感触はこれまでと比べて一番柔らかく、デザリアの切れ味も相まって簡単に掘れた。掘り出した土を地面に広げてみるが、みずみずしく黒々としている。それに土の中には虫が沢山棲み着いており、ミミズを始め小さな虫達がわちゃわちゃと逃げていくのが見えた。そういえば荒れ地の土には、ほとんど虫を見なかった気がする。


「そういえば、昔、ミミズさんがいる畑はいい畑って聞いたことがあるわね」

 私は昔、農家の方から聞いた話を思い出した。

「ミミズさんや虫さんがいないのが原因かしら? じゃぁ、この虫さん達を荒れ地に持って行けばいいのかな?」

 顎に手を当て、私は考えてみた。しかしなんとなくだが、この方法は駄目な気がする。虫たちは好きでこの場所にいるのだ。逆に言えば荒れ地が嫌だからいないのだ。そこに無理やり虫を持って行っても、死なせてしまうだけだろう。


「どうすれば荒れ地に棲んでくれるかな? 温度? 水? それとも食べ物? でもミミズさんや虫さんの食べ物ってなんだろう?」

 私は顎に手を当てたまま首をかしげた。虫のことは好きで、よく知っているつもりだった。だが何を食べているのか、今まで考えたこともなかった。


 さらに首を曲げて考えていると、視線の先に動くものが見えた。

 魔物かと一瞬警戒するも、それは服を着た人間だった。山の奥に消えてしまい顔までは見えなかったが、おそらくキルクス村の住人だろう。


 山に実果実や山菜を求めて、村人が山に入ることはよくあることだった。しかし木の陰に消えていったのは、自分とさほど変わらない小柄な姿だった。


「誰かしら、魔物が出るかもしれないのに」

 私はどうにも不安になった。この山は以前血マダラと呼ばれる魔物が棲んでいた場所だ。血マダラは魔石を除去したのでおとなしくなったが、別の魔物が生まれていないとも限らない。


 いてもたってもいられず、私は村人の影が消えていった方に向かって進んだ。しばらく歩くと大きな木の幹の前で膝をつく、少年の姿を発見した。

 こちらに背中を見せており、手元は見えない。何をしているのだろうと、私はそっと歩み寄った。


「誰だ!」

 足音でこちらの気配を察したのか、少年が声と共に振り向く。頬に向こう傷のある顔には見覚えがあった。

「こんにちは、貴方……確かソイルよね?」

 私は少年に声を掛けた。

ロメリア戦記のアニメが、2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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