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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第十四話 聖女ラエルザ 土を耕す②


 仮住まいながら最近は住み慣れてきた教会を出ると、お屋敷の中庭が広がっていた。その奥には立派な屋敷が見える。お爺様であるラザリックが建てた館だ。

 瓦葺きの屋根を備えて立派な外観をしているが、中身は外観ほど立派ではない。百年放置したため痛みが激しいのだ。


 ボードン夫妻が住むために、台所と食堂。居間と寝室は何とか手を入れて使えるようにしたが、そこ以外は手が回っていない。そのため館の主であるはずの私達は、依然として教会で暮らしていた。早く全ての修繕を済ませなければいけないのだが、村人達に対する謝礼もまだ払えていない。私達はまだ当分、教会に暮らすことになりそうだった。


 館の脇を通り表門を抜けると、茅葺の屋根が並ぶ家々が見えてきた。我がマグノリア領で、唯一の村であるキルクス村だ。

 未舗装の道をまっすぐ歩くと、村の中心にある井戸が見えてくる。井戸の周りでは村の女性達が洗濯をしたり野菜を洗ったりしながら話し合っていた。そのすぐ横では、小さな子供達が追いかけっこをして遊んでいる。


「あら、ラエルザ様。お出かけですか?」

 井戸にいた中年の女性が私に気づいて声をかける。

「はい、少し近くを散歩しようかと」

 私が答えると女性が柔和な笑みを見せる。彼女はタバサさんの奥さんでデニーさんだ。更に洗濯しながら話していた中年女性も、腰をあげてお辞儀をしてくれる。彼女の背には赤ん坊を抱いている。お母さんがエトラさんで、背中の赤ん坊がこの春に生まれたエニエルだ。


「あっ、ラエルザだ! ラエルザー、遊ぼ!」

 井戸の近くで遊んでいた三人の男の子が、私に気づきやってくる。一番大きい男の子がデニーさんの息子でテッド。後ろのちょっと小さい二人が、エトラさんの双子の息子でコニーとトマだ。


「これ、テッド。ラエルザ様でしょ!」

 デニーさんがテッドをしかりつけるが、私は構いませんよと笑っておく。

「テッド、ゴメンね。ちょっと用事があるから遊べないの」

 私は片目を瞑りながら謝ると、テッドにコニーとトマは声を揃えて抗議する。


 なおも遊ぼうとするテッド達をデニーさんが叱りつける。私は振り向きながらまた今度ねと言いつつ、村を歩く。

 キルクス村では、のんびりとした時間が流れている。家の前ではひざ掛けをしたおばあさんが転寝をしていた。村長であるハネスさんの姉であるハレルさんだ。その隣ではキジ猫のマルクが、丸く鳴って眠っていた。


 吠え声につられて目を向けると、エトラさんのお兄さんであるエドンさんの家が見え、入り口の前では赤犬のマックが木に向かってしきりに吠えていた。歩きながらマックが吠える木を眺めると、揺れるこずえに木の実を抱えるリスがいた。どうやらマックはリスが気になるらしい。


 ほほえましい光景に頬を緩めていると、もうキルクス村の出口だ。すると青々とした麦畑が一面に広がっていた。穂がついたばかりの麦は、ピンと背伸びをするように、まっすぐに伸びている。夏が来れば、実が大きくなり収穫の時期を迎えるだろう。


 青々とした畑の中では、麦わら帽子をかぶった村人達が農作業にいそしんでいた。おそらく雑草でも取っているのだろう。キルクス村の人達は働き者だった。

 畑の間に伸びる道を歩いていると、作業をしていた村人達が私に気づき手をあげ、帽子を軽く掲げて挨拶をしてくれる。みんないい人達ばかりだった。


 アリサやボードンは、キルクス村には何もないという。だが私はそうは思わない。頭の悪い私にはそれが何かは分からないが、王都にはない安らぎを感じる。まだここにきて一ヶ月ほどしか経っていないが、ずっと住んでいたいとすら思える。


「そのためには、頑張らないとね」

 私は一人気合いを入れ、ずんずんと道を進んだ。しばらく進むと畑が途切れ、切り立った崖のような山が見えてくる。キルクス村を取り囲む山だ。


 私は右に首を向け、そのまま踵を引いて振り返り、更に右に首を回し、もう一度振り返って前を向く。ぐるりと視界を一周させたが、村を取り囲む崖は途切れることなく続いていた。


 奇妙としか言えない地形だった。盆地であれば、周囲を取り囲む山々はもう少しなだらかで、丘のような山になる。だがこのキルクス村を取り囲む山は全てが崖で、しかも綺麗な円形となっている。キルクスというのは古い言葉で、円という意味らしい。キルクス村はまさに、円環に閉じ込められた場所なのだ。


「まるで、お星さまが落ちて来たような場所ね」

 私は流れ星が降り注いだ光景を想像しながら、村の外へと向かった。

 盆地を出るには唯一の出入り口である、木製の門を通らねばならない。私が門に近づくと、近くには物見櫓があり、麦わら帽子をかぶった男性がいた。村人のタバサさんだ。


「おやラエルザお嬢さん。お出かけですか?」

「はい、木苺を採りに行こうかと」

 私は笑顔で答えた。村の中は安全だが、ここだけでは生きていけない。薪を取りに行き、山菜やキノコを採取しに行く村人は多い。また獣を狩る猟師なども、定期的に外に出ていた。私も最近は魔物を討伐するため、いろいろな理由をつけて外に出ている。


「魔物には気を付けてください。最近少なくなったと聞きますが」

「はい、そうします」

 私は笑顔で答えつつ、門の外に出た。門からしばらく歩くと、草がまばらに生えた荒れ地が見えてきた。ボードンが開墾しろと命じた場所である。


「ここね、それじゃぁ、一つやってみますか」

 私は腕まくりをすると、腰のデザリアを引き抜いた。


ロメリア戦記のアニメが、2026年10月3日(土)21時~

アニメタイムズ・U-NEXT・Netflixにて国内独占&地上波先行配信!

また2026年10月5日より

TOKYO MX/BS11/サンテレビ/KBS京都/CBCにてⅡクールで放送が開始されます !



皆さん見てください

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