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聖女ラエルザ伝 ~脳筋すぎて婚約破棄されたので、領地に戻って改革することにした。もちろん筋力で~  作者: 有山リョウ
第一章

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第十三話 聖女ラエルザ 土を耕す①


「ラエルザ殿。秋の種まきまでに村の近くを開墾し、耕作面積を倍以上にして頂く。とりあえず来週までに畑を一枚か二枚は耕してもらおう。もしこれが達成されなければ、領地を適切に運用する資格なしとして、没収させていただく」

 お昼ご飯が終わったころ、私達が生活する教会にやって来たボードンは、扉の前で一方的な通告をした。


「秋までに? どこを開墾せよというのです?」

 アリサが当然の反論をした。盆地にあるキルクス村の周囲は、くまなく開墾され尽くしている。畑を作る場所などどこにもなかった。


「そんなもの、盆地の外に幾らでも空き地があるではありませんか」

 ボードンは北を指差した。ここからでは見えないが、盆地を北に出れば、草がまばらに生える荒れ地が広がっている。確かに畑にはできるかもしれない。


「でも、魔物が出たらどうするのです」

 アリサはさらに反論した。マグノリア領は、魔物が跋扈する危険な場所だった。キルクス村は絶壁の崖に囲まれており、ここであれば魔物に襲われる心配はない。キルクス村が狭い場所に閉じこもっているのには、魔物の脅威から逃れるという現実的な理由があるのだ。


「おや、これは異なことを。私は十日前に、魔物を討伐し、領内の安全を確保するように指示しました。貴方は神に祈られ、その奇跡は通じて魔物は姿を消した。であれば、何の危険はございますまい?」

 ボードンは芝居がかった仕草と口上を見せる。これは痛いところを突かれた。


 私はボードンに命じられ、魔物の討伐を行った。そのため周辺の魔物は姿を消したが、完全にいなくなったとはいいがたい。呑気に開墾などしていれば、村人に死傷者が出るかもしれなかった。


「しかし、いきなり耕作面積を倍にせよなど、理不尽な要求です」

「何が理不尽なものか、これは適正な審査によるものですぞ」

 ボードンはおっほんと咳払いをした。


「まずこのマグノリア領は、領地の割合に対して耕作地が少なすぎる。本来あるべき税収を考えれば、耕作地を倍にしても小さすぎるぐらいだ。来年の収穫には国庫に税を納める約束になっているが、現在の耕作地の割合を考えれば、税を納めるには全く足りないことは明らかだ」

 堂々と宣言するボードンの言葉に、私はそれならばと納得しかける。


「お待ちください。確かにマグノリア領は広大ですが、荒廃した土地が多く、そのほとんどは耕作に向きません。土地に見合った税を納めよというのであれば、耕作可能な土地から税を算出すべきです」

 アリサの反論に、私はなるほどと思う。しかし対するボードンは鼻で笑う。


「ではどの地域が耕作不能で、どこが耕作可能なのか。地図や資料を頂けますかな? 私の推定が誤りだというのなら、最新の資料を基に、正確な数字を見せていただきたい」

 ボードンに逆に問い返され、アリサは答えに窮した。私達マグノリア家は、百年間この土地を放置していた。資料などは残されているかもしれないが、それはつまり百年前のものだ。

 アリサが言い返せないでいると、ボードンは口の端を歪め、勝利の笑みを見せる。


「示せないというのであれば、私が正しいということになるな。では来週までに畑を一枚、いや、二枚。そして秋までに全ての開墾を終えておくように。今回ばかりは、村人の助けは得られませんぞ。せいぜい神頼みでもすることですな」

 ボードンは高笑いをあげて去っていった。アリサが笑い声を遮るように、教会の扉を閉める。そして眼鏡の奥にある目尻を吊り上げた。


「あの豚め! お嬢様の恩情で屋敷に住まわせてもらっている身分でありながら!」

 毒づくアリサの目には、漆黒の殺意が宿る。

「お嬢様、ご安心を。あの豚が明日目覚めることはありません。夜のうちに首を掻き切り……」

「アリサ、駄目!」

 私は叱りつけるように命じた。ちゃんと言っておかないと、アリサは本当にやりかねない。


「いいじゃない、好きに言わせておけば。それに、畑を耕すことなら簡単よ」

 私は腰のデザリアを引き抜いて掲げて見せる。変幻自在のデザリアであれば、大きな鍬や犂にも変形可能だ。デザリアに私の力が合わされば、一振りで地面深くまで土を耕すことができるだろう。耕作面積を倍にするぐらい、一晩で可能だろう。


「しかし、お嬢様に畑仕事をさせるなど」

「できなければ領地を没収されるんだし、これも領主の仕事よ。それよりもアリサは、この領地の資料を探して。お屋敷の方に、何か残っていないかしら?」

 私は教会の窓から見えるお屋敷を見た。百年放置された屋敷だが、以前調べた時、本が大量に収められた場所があった気がする。あそこにこの領地の資料か何かがあるかもしれない。


「ボードン様にも言われたけれど、領主なのに領地のことを把握していないのは問題だわ。この屋敷にはお爺様が残した資料があると思うから、それを探してみて。私、そういうの全然だめだから」

 私は軽く手を振って、頭を使う仕事は駄目だと伝える。私は本を読むことが何より苦手で、じっとしていると足が走りたいと、バタバタと動き出してしまう。資料の調査など、最も不向きな人間だろう。


「適材適所よ、アリサは私が苦手なことをやって」

「まぁ……お嬢様がそういわれるのでしたら」

 不承不承ながらも、アリサは納得してくれる。


「とりあえず、私は現場を見て来るわ。可能だったら畑を耕してみる。安心して、土遊びは得意だから」

「お嬢様。貴族のそれも年頃の女性が、土遊びが得意というのはいかがかと?」

 アリサが困り顔を浮かべて溜息を吐く。


「そ、それじゃぁ、行ってきます!」

 これはお説教が始まる兆候だと、私は教会を飛び出した。


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皆さん見てください

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