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〈8〉邪馬台国女王卑弥呼、誕生

ヨシノが神と通じた奇跡の夜はまだ終わっていなかった。

高床式住居のホノミコの祭祀の間にそれぞれの部族の長、六人が集まった。

ホノミコの遺体が上座にあった。

「ホノミコさまは天に召され、ヨシノは神と通じた」とイツワカ。

「ヨシノは神と交信する巫女の一族ではない。神の供物として生まれる一族だ。このヤマタイを治める者ではない」とヤツカミ。

「では、あれはなんだ! ヨシノは宙に浮いたぞ!」とイツワカ。それに呼応するようにタカミネが言った。

「神は現れ、ヨシノと通じたのだ! ヨシノの体に神が宿ったのだ! そうとしか考えられない!」

「そうだ! ホノミコさまに宿っていた神がヨシノに宿ったのだ!」とクツヒコが激しく同意した。

「我々はそれを目の当たりにしたのだ! 神は現れ、ヨシノに宿った」とクニヨリも共感した。

「しかし、ヨシノは神と通じる巫女の出ではない」ヤツカミはあくまでも反論した。

「なら、名を変え、格をあげればいいのではないか?」アラクニが落としどころを提案した。

長たちは顔を見合わせた。


ヨシノは安らかな寝顔をしていた。その寝顔をナギリは嬉しそうに見ていた。

「どうしてヨシノが戻ってこれたんだ。また神の供物が逃げたといわれないか?」オトシカはナオに尋ねた。

「分からない。分からないけど、別に逃げて来たわけでもない。ただ」

「ただ?」

「またヨシノを生贄にするといったら、今度はもっと華麗に宙に舞わせる。本当に神が降臨したかのように。それでもヨシノを生贄にするというのならここから逃げるしかない」

「それは無理だ。私たち一族は神の供物になるために生まれるのだ」

「なんだよ、その生贄になるために生まれるって。それがムカつくいうんだよ。まぁ、今日は疲れた。もう寝よう。明日は明日の風が吹くだ」

ナオは寝っ転がった。するとノハナがナオに寄り添うように寝てきた。


翌朝、ナオはオトシカに起こされた。

「ナオ! 起きろ。ナオ」

「ん、なんだ」

「呼ばれた」

「呼ばれた?」

ナオ、ヨシノ、ノハナ、オトシカ、ナギリは用意された馬に乗って儀式が執り行われた高床式住居に行った。ナオたちは丁重な扱いを受けた。ナオたちは別室でヨシノだけが女官に連れて行かれた。

ノハナは不安を感じ叫んだ。

「お姉ちゃん!」

女官はノハナに微笑み、ヨシノを連れて行った。

ヨシノは連れて行かれた部屋に行くと部屋の両脇にそれぞれの部族の長が座り、上座だけが空いていた。女官はヨシノを上座に連れていき座るように合図した。ヨシノは恐る恐る上座に座った。

上座の傍の長がヨシノの方を向いた。

「卑弥呼さま」

「卑弥呼さま?」

「今からはヨシノではなく卑弥呼と名乗り、この邪馬台の女王としてこの国を統治して頂きたい」

ヨシノは口をあんぐり開けて驚いた。

「神を信じない狗奴の者どもに神の存在を知らしめることが出来るのは卑弥呼さまをおいて他にいません」

「ぜひ邪馬台の女王として我々をお導きください」

長一同、頭を下げた。

「え⁉」

ヨシノは困惑した表情を浮かべた。


ヨシノは別室にいるオトシカ、ナギリ、サヒトモ、ノハナ、ナオと面会し、抱擁を交わした。

「どんな沙汰が下ったんだ?」オトシカが尋ねた。

「女王になっちゃった」ヨシノは困惑した顔で言った。

「え?」

ヨシノ以外、一同、驚いた。何か聞き間違えたのではないか、と。

「もう一度、言ってくれ」オトシカが確認を求めた。

「女王卑弥呼としてこの邪馬台を治めてくれって」

みな、愕然とした。

「卑弥呼?」ナオはポツリと呟いた。

ヨシノはナオを見た。

「ヨシノって卑弥呼なの?」

ナオとヨシノは見つめ合った。


その日の午後、邪馬台国の女王として卑弥呼が人々にお披露目された。

ヨシノは卑弥呼として豪華な衣装や装飾品を身に纏った。

卑弥呼の隣にサヒトモも豪華な衣装に装飾を身につけて立った。

人々は昨夜の出来事もあり大いに歓喜し、祝福した。

その姿をナオはノハナと見ていた。

「名前って変わるの?」

「名前は変わるよ。よくあるのは子供が大人になると名前を変えたりする」

「ああ、なるほど……。確か、徳川家康が子供の頃、竹千代って言われていたあれだ」

「はぁ?」ノハナはピンとこない顔をした。

「でも、スゲェな。生贄だったヨシノが女王になっちゃうなんて」ナオは笑った。



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