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〈2〉タイムスリップ

満月の月明かりの下、干潮で潮が引いた浜辺をヨシノが石をもって歩いている。

ヨシノは長方形の麻布の中央に穴をあけ、そこから頭を通し、腰あたりに紐を巻いた貫頭衣を着ている。あきらかに現代の服装ではない。

そこへ同じ貫頭衣を来た少女がヨシノに声をかけてきた。

「お姉ちゃん!」

ヨシノは声の方を振り向いた。

ノハナが走って来る。

「ノハナ」

「お姉ちゃん、やっぱここに来たんだ」

「満月や新月のときは海に近づいちゃダメって言ってるでしょ! 今は潮が引いてるけどまた飲み込まれてしまうんだから」

「お姉ちゃんはいいんだ?」

「私は、ちゃんと危険がわかるから」

「お姉ちゃんは月がよめるもんね。何持ってるの?」

ヨシノはノハナに石を見せた。

「なんて書いたの?」

「みんなが楽しく、幸せに暮らせるますようにって。それと神のもとに召されるミカハが幸せになれますようにって」

「ミカハ……。なんか寂しいね」

ヨシノは何も言わなかった。

ヨシノとノハナは手を繋いで干潮で潮が引いた浜辺を歩き、岩のほこらに向かった。

そして、ほこらに願い事を書いた石を置いた。

二人は手を合わせて祈った。

二人は満月の明かりを浴びながら祈った。

「うわぁ!」

突然、二人の後ろから叫び声が聞こえた。

ヨシノとノハナは叫び声の方を見た。

三十メートルほどの断崖絶壁の下の浜で何やらバタバタを動く姿を見えた。

「うわぁ」叫び声はやむことなく続き、浜辺一体に聞こえた。

ヨシノとノハナは叫び声の方に向かって砂浜を走った。

ヨシノとノハナは頭に頭巾を被り、手足をバタつかせ、「うわぁ」と叫び続ける人に恐る恐る近づいた。

「これ何?」

「人じゃない?」

「なんか、見たことないもの着てるよ」

ヨシノとノハナはジャケットにパンツ姿の人を見たのは初めてだった。

「兎に角、私が抑えるからノハナは頭に被ってるものを取って」

「分かった」

ヨシノはバタついているナオの上に体を乗せて押さえつけようとした。

「動くな!」

ナオは相変わらず「うわぁ」と言い続けている。

「ノハナ! 早く頭の奴、取って」

「うん!」

ノハナは頭の頭巾を取った。

ナオの顔が現れた。目を瞑りながら「うわぁ」と叫びながら手足をバタつかせ続けていた。

「お姉ちゃん。止まらないよ!」

「止まれ!」ヨシノはナオの顔を思いっきり叩いた。

ナオは手足をバタつかせるのを止めた。ナオは目を開いた。そして手で地面を触った。感触が脳に伝わった。

ナオを押さえつけていたヨシノがナオが止まったので、顔をあげてナオを見た。

「止まった」

ナオはヨシノを見た。

「……よしの」

「え?」

ナオを押さえつけていたヨシノはナオが知っている水樹よしのと瓜二つだった。

ヨシノはナオから離れた。

ナオは体を起こし、前方を見た。ナオの息遣いは荒かった。

海の上に満月が見えた。

ナオは手を握り、目の前で手を開いた。手のひらから砂が零れ落ちた。

「ここはどこ?」

「どこって……」

「どうしてよしのさんがいる」

「ヨシノサン? ヨシノサンって?」

「ヤマタイだよ」ノハナがナオの顔を覗き込んでいった。

「ヤマタイ? ヤマタイってどこだ、あの世のことか」

「はぁ?」

「俺は、死んだのか……」ナオは茫然としながら前方に見える海と満月を見ていた。

「なんか、この人、わけわからないこと言ってるよ。それに変なの着てるし」

「そうね」

「海の音が聞こえる……」

「お姉ちゃん。どうする?」



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