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第32話  夕日の向こうに


帰り道。


ほどよい疲れを感じながら、私たちは森の中を歩いていた。


やがて森を抜けると


目の前に、菜の花畑が広がる。


夕日に照らされた一面の黄色。


その向こうには、丸い月がぼんやりと顔を出していた。


「とても綺麗ね、アンナ。」


「ええ……本当に。」


思わず、足を止める。


私たちはしばらく、黄昏に染まる幻想的な景色を眺めていた。



――その時だった。



風が揺れ、人の気配がした。



「リリア様」


――えっ?


「チェリーブロッサムの植え替えは、無事に終わりましたか?」


聞き覚えのある声。


胸が、大きく跳ねる。


振り返りたい。


けれど


もし、違っていたら……。


リリア様は、その場で固まってしまい、

動くことができない。


「リリア様。」


もう一度、優しく名前を呼ばれる。


その声に、はっとして、

ゆっくりと、振り返る。



そこにいたのは――



「ア……アルベール様……!」



信じられない、というように。


リリア様は、その場に立ち尽くした。



アルベール様は、少し息を切らしながら、それでも穏やかに微笑んでいた。


「……ああ」


「間に合って、よかった。」


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