第27話 決断
「ただいま、リリア。」
「……お母様。」
王妃様が、城へ戻ってこられた。
いつもなら、その帰りを誰よりも喜ぶリリア様。
けれど今回は、どこかぎこちない。
「リリア。」
王妃様が呼びかける。
「あなたのお誕生日まで、あと三ヶ月よ。」
「今日、私がここへ来た理由……分かっているわね?」
「……はい。」
リリア様は、小さく頷いた。
「あなたは、公爵家の一人娘です。」
王妃様は、ゆっくりと言葉を選ぶように続ける。
「あなたの結婚には、この国の行く末が関わってくる、そう言っても過言ではないわ。」
「王妃様……それは……」
私は、思わず口を開きかけた。
――けれど。
リリア様が、公爵家の一人娘である以上、逃れることのできない現実だった。
「辛いことを言っているのは分かっているわ。」
「でも……どうしようもないの。」
「……。」
リリア様は、俯いたまま何も言わない。
重たい沈黙が、部屋を包む。
しばらくして、リリア様は、ゆっくりと顔を上げた。
「……分かりました、お母様。」
「私、次の縁談――お受けいたしますわ。」
「リリア……。」
王妃様が、わずかに目を見開く。
「リリア様!?」
思わず声が出た。
――本当にいいのですか?
胸の奥で、叫ぶ。
けれど、その言葉を口にすることはできなかった。
リリア様は、まっすぐ前を見つめていた。
まるで――ご自分の運命を、受け入れると決めたかのように。




