第14話 前途多難
「お庭の雰囲気、なんだか変わったかしら?」
リリア様が、辺りを見回しながら尋ねた。
「少しずつですが、私が造園を任せていただいておりまして……。花の種類も増やさせていただきました。」
アルベール様は、どこか緊張した様子で答える。
「リリア様、お気に召していただけましたか?」
「ええ。」
リリア様は、嬉しそうに微笑んだ。
「前のお庭も素敵でしたけれど、今のお庭もとっても素敵ですわ。」
その言葉に、アルベール様はほっとしたように表情を緩めた。
「ありがとうございます、リリア様。」
そして、そっと鉢植えを差し出す。
「こちらが、届いたお花です。」
「まあ……。」
リリア様は、興味津々で鉢を覗き込んだ。
「これは……百合のお花かしら?合っていますか?」
「さすがリリア様、お詳しいですね。」
アルベール様は、感心したように目を細める。
「その通りです。百合の花ですよ。」
リリア様は、そっと花に顔を近づけた。
「……とっても良い香り。」
うっとりと呟いたあと、ふと思い出したように首を傾げる。
「でも、たしか百合には毒があるのではなかったかしら?」
「ええ。毒性があると言われています。」
アルベール様は頷いた。
「ですが、口にしなければ問題ありません。特に、猫などの動物が食べないよう気をつける必要がありますね。」
「まあ……。」
リリア様は、感心したように目を丸くする。
「アルベール様は、本当にお花にお詳しいのね。」
「い、いえ……。」
アルベール様は、少し照れたように視線を逸らした。
そんな彼を見て、リリア様はふわりと笑う。
「私、あまり男性とお話しするのは得意ではないのですが…、」
「アルベール様は、とてもお話ししやすいですわ。」
その瞬間。
アルベール様の顔が、一気に真っ赤になった。
「アルベール様!?」
リリア様は、慌てて駆け寄る。
「お顔が真っ赤ですわ!大変、お熱があるのでは!?」
「え、いえ、これはーー、」
「今すぐ、お医者様を呼んでまいります!」
そう言うや否や、ぱたぱたと走り去ってしまう。
「り、リリア様!? お待ちください!!」
慌てて追いかけようとするアルベール様。
ーーどうやら、彼の前途は、なかなかに多難らしかったーー




