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男女比『1:16億』の北半球 ~50年ぶりの生身の男に、世界中が大パニック&大熱狂!~  作者: 団田図


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第50話 繋がる世界

 感動の家族再会を見届けた後、タケルはゆっくりと振り返り、優愛、そして芽衣たちに向き直った。

「タケルさん……。新薬が完成して、壁もなくなった。……南へ、帰っちゃうんですか?」

 優愛が、不安に押し潰されそうな声で尋ねる。

 五十年間分断されていた世界が繋がった今、タケルが北半球に留まる理由はもうない。いつでも南の活気ある街へ戻れるのだから。

 しかし、タケルは迷うことなく首を横に振った。


「俺は、南には帰らない」

「え……?」

「俺の夢は、南の資源と北の医薬品を交換するドローン整備士になって、世界を繋ぐことだった。でも、壁がなくなった今、もっと大きなことができる。俺は北で、この世界が新しく一つになっていくのを、みんなと一緒に最前線で見届けたいんだ」

 タケルは真っ直ぐな瞳で優愛を見つめ、その華奢な手を優しく握った。

「それに……俺の世界の中心にも、ずっと優愛がいるから」


 その言葉を聞いた瞬間、優愛の透明な瞳から嬉し涙がポロポロと溢れ出した。

「タケルさん……っ、タケルさん……っ!」

 優愛はタケルの右腕に力いっぱいしがみつき、その胸に顔を押し当てた。

「ちょっと! お兄ちゃんはずっと私と一緒なんだからね! 家族特権は永遠に不滅よ!」

 すかさず芽衣がタケルの左腕をがっちりとホールドし、ブラコン全開で牽制してくる。


 タケルが二人の少女に挟まれて苦笑いしていた、その時だった。

「感動的なところに悪いけれど、私のことも忘れてもらっちゃ困るわね」

 スタイリッシュな白衣を翻し、天才美人女医の霧島理沙が颯爽と現れた。彼女のメガネの奥の瞳は、いつも以上に妖しく、そしてよこしまな光を放っている。

「理沙さん! 新薬の開発、本当にありがとうございました。あんたがいなかったら、この奇跡は起きなかった」

 タケルが心から感謝を伝えると、理沙は「ふふっ」と艶やかに笑った。

「お礼なんていいのよ。私は国家功労賞の特権として、莫大な研究予算と『ある物』を手に入れたから」

「ある物……?」

「ええ。あなたを何度もミリ単位で3Dスキャンした完璧なデータよ。それを最新の医療用高精度プリンターと温感シリコン素材で出力して……私の部屋に、『等身大タケル君フィギュア』を完成させたのよっ!!」

「はあああぁっ!?」

 タケルは素っ頓狂な声を上げて仰け反った。

「毎晩あの筋肉の起伏を堪能しているけれど、やっぱり本物の熱量には敵わないわ。専属医の特権として、これからは毎晩あなた自身の健康診断をベッドでしてあげるわね♡」

「ふざけんな! あんたの野望、全然終わってないじゃないか!」


 さらにそこへ、特設ステージでのパフォーマンスを終えたトップアイドルの星波キララが、息を切らせて乱入してきた。

「あーっ! みんな抜け駆けズルい! タケル君の隣は、世界一のアイドルである私がもらうんだから!」

 キララがタケルの背中に飛び乗り、甘い香水の匂いと熱気を押し付けてくる。

「おい、重い! 苦しいって!」


 右からは優愛、左からは芽衣、背後からはキララ、そして正面からは変態女医が迫り来る。

 世界が一つに繋がった歓喜の裏で、一人の生身の男を巡る愛と欲望の争奪戦は、終わるどころか新たなステージへと突入していた。


 +++


 タケルを取り囲むヒロインたちの狂騒をよそに、特設ゲート周辺はさらにカオスな空間へと変貌していた。

 完全に開放された境界線を越え、南の泥臭く野性的な男たちと、北の清潔で美しい女性たちが、ついに入り乱れたのだ。

「うおおおっ!生身の女の子だ!」と興奮する南の若者たちに対し、北の女性たちは彼らの発する強烈なオスの匂いと熱量に当てられ、「キャアアッ、男の人のフェロモン……腰が抜けそうぅっ♡」と次々にへたり込んでいく。50年間分断されていた反動が、世界規模のラブコメティックなパニックを引き起こしていた。


「やばい、こっちにも人が押し寄せてきた!じいちゃん、助けてくれ!」

 タケルはヒロインたちの包囲網を抜け出し、祖父の隼人はやとの背中に隠れようとした。事変前の世界を知り、女性への紳士的な振る舞いを熟知している彼なら、このパニックを上手く捌いてくれるはずだ。

 しかし、タケルの期待は無惨に打ち砕かれた。

「おや、そこの美しいレディたち。人混みで押されて危ない。私の腕につかまりなさい」

 隼人は、シワの刻まれた顔にダンディな微笑みを浮かべ、北半球の熟女テクノクラートたちを完璧な動作でエスコートしていたのだ。

「まあっ、なんてスマートで頼もしいの……っ!」

「若いタケル君の暴力的な筋肉もいいけれど、このいぶし銀の魅力、たまらないわぁっ♡」

 歴戦の男の包容力とクラシックな紳士の振る舞いに、北のマダムたちが完全にメロメロになり、隼人の周りにはあっという間に熟女の黒山の人だかりができてしまった。

「じいちゃん、全然助けになってないじゃないか!」

 タケルは悲痛な叫びを上げ、再び逃げ惑う羽目になった。

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