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男女比『1:16億』の北半球 ~50年ぶりの生身の男に、世界中が大パニック&大熱狂!~  作者: 団田図


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第46話 鎮圧

「なっ!?」

 タケルは横にあった重い木製の跳び箱を片手で軽々と掴み上げ、それを盾にするようにして前へ突進した。ネットガンから射出された網が跳び箱に絡みつく。

 その隙を見逃さず、タケルは跳び箱を横に投げ捨て、足元にあった分厚い体操マットを蹴り上げた。

「きゃあっ!」

 バサリとマットを被せられ、視界を奪われた教団員たちがバランスを崩す。

 タケルはその隙間を縫うようにして一気に距離を詰め、リーダーの女の懐へと潜り込んだ。

「このっ、離れろ野蛮人!」

 女がスタンガンを振り下ろすが、タケルはその細い手首をガシッと大きな手で掴み、強引にねじり上げた。

「ぐっ……!?」

 そのままタケルは自分の分厚い肩を女の胸元に叩き込み、足を払って、備品室の冷たい床へと強烈な勢いで押し倒した。


 ドンッ! という重い音が響き、タケルがリーダーの女の上に完全に馬乗りになって制圧する。

「動くな! 少しでも妙な真似をしたら、腕の骨を折るぞ!」

 タケルは顔を近づけ、野性的な低い声で威嚇した。至近距離から女を見下ろす、精悍せいかんで怒りに満ちた眼差し。そして、彼女の両腕を床に縫い付ける、暴力的なまでの腕力と体重。


「くっ、殺せ! 神の御使いである私が、こんな悪魔の力なんかに屈するはずが……」

 リーダーの女は必死に抵抗しようとタケルを睨み返した。

 しかし、その言葉は最後まで続かなかった。


「……え?」

 女の瞳孔が、カッと大きく開いた。

 彼女の上に覆い被さる、タケルの圧倒的な質量。

 無菌室のように清潔で、か弱き女性しかいない北半球の社会で育った彼女の身体に、タケルの燃えるような高い体温が、服越しにダイレクトに伝わってくる。

 押さえつけられた手首からは、骨が軋むほどの圧倒的な男性の力強さ。そして鼻腔を突き抜けるのは、汗とアドレナリンが混ざり合った、むせ返るような強烈なオスのフェロモン。


 それは、壁を崇拝し、男性を「悪魔」と蔑んできた狂信者の理性を、根底から粉砕するのに十分すぎる破壊力を持っていた。


「あ……あぁっ……」

 リーダーの女の身体から、突然スッと力が抜け落ちた。

 殺意に満ちていた彼女の表情が、みるみるうちに蕩け、頬が熟れたイチゴのように真っ赤に染まり始める。

「な、なんて……なんて乱暴で、暴力的な力……っ。私の弱い身体を、いとも簡単に壊してしまえるほどの、絶対的な支配……っ♡」

 女の瞳から、ポロポロと涙が溢れ出した。しかしそれは恐怖の涙ではない。未知の快感と、魂の底から湧き上がる強烈な被虐の喜びに打ち震え救済される涙だった。

「あぁ……温かい。これが、これが生身の男の人の熱……。間違っていたわ。壁なんかが神じゃない。私をこんなにも乱暴に力で押さえつけてくれるあなたこそが……壁を越えし神の子よぉっ……!」


「……はい?」

 完全にドMの扉を開け放ち、うっとりとした乙女の顔でタケルを見つめてすがりついてくるリーダーの女を前に、タケルはポカンと口を開けた。


 そして、異変はリーダーだけにとどまらなかった。

 マットから這い出してきた他の教団員たちも、タケルの放つ強烈なオスの熱気と、圧倒的な生命力を目の当たりにして、次々と武器を手放し始めたのだ。

「なんて神々しい筋肉なの……」

「私たち、こんな素晴らしい神の子を排除しようとしていたの……? ああ、なんて愚かな……っ」


 狭い備品室の中で、教団員たちの中に致命的な内部分裂とパニックが巻き起こった。

「目を覚ませ! こいつは悪魔よ!」と叫んで銃を構え直そうとする少数派の信者に対し、タケルのフェロモンに完全に屈服した多数派の信者たちが「神の子に銃を向けるな!」と飛びかかり、まさかの同士討ちが始まったのである。

「タケル様ぁっ! どうか私めも、その太い腕で乱暴に押さえつけてくださいませぇっ♡」

「ちょっと! 抜け駆けしないでよ! 私だって神の子に踏まれたいわ!」


「……なんだこれ、どうなってんだよ……」

 タケルは、自分を巡って信者同士がキャットファイトを繰り広げる地獄絵図を前に、完全に戦意を喪失し、滝のような冷や汗を流して立ち尽くした。


 +++


 そこへ、「タケル様! ご無事ですか!」と、おとりに釣られて一時離脱していた女性護衛官たちが、鬼の形相で駆けつけてきた。

「私たちの推し……いえ、護衛対象に何をしてくれているのよ! 許さないわ!」

 護衛官たちは、フェロモンで骨抜きになり、同士討ちで疲弊していた教団員たちを、凄まじい怒りの力で次々と制圧していく。

 かくして、学校を襲った聖殻真理教団のテロ事件は、タケルのオスのフェロモンという思わぬ最終兵器によって、完全なる鎮圧を迎えたのである。


「お兄ちゃん! かっこよかった!」

「タケル君、私たちを守ってくれてありがとう……っ!」

 事態が収束し、芽衣やクラスメイトたちが次々とタケルの胸に飛び込んでくる。

 極限状態の密室でタケルの熱を浴び、さらに命懸けで自分たちを守ってくれた英雄的な姿。

 北半球の少女たちの、タケルに対する好感度と愛情は、この日を境に、もはや取り返しのつかない限界の数値を突破してしまった。


 世界が繋がる前夜。

 一人の生身の男を巡る、ヒロインたちの愛と欲望の争奪戦は、いよいよ最終局面へと突入しようとしていた。

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