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男女比『1:16億』の北半球 ~50年ぶりの生身の男に、世界中が大パニック&大熱狂!~  作者: 団田図


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第23話 専用浴場

 朝の眩しい日差しが、高度に自動化された北半球のマンションの一室に差し込んでいる。

 御手宮おてみやタケルは、柔らかすぎるベッドの上で仰向けになり、自分の大きな右手を見つめていた。

 昨日の休日。北半球で一番人気のテーマパークで、文通相手の葉寺はでら優愛ゆあと過ごした初めてのデート。

 国家の最強特権であるマザー・リワードを全放出してくれた母・玲子れいこのおかげで、貸し切り状態のパークを二人きりで楽しむことができた。

 タケルの手のひらには、優愛と初めて指先が触れ合い、そしてしっかりと手を繋いで歩いた時の、あの温かくて華奢な感触がまだ残っている。

 南半球の過酷な環境で育ったタケルにとって、北半球の少女の柔らかさと、洗い立てのリネンのような透き通った香りは、まさに未知の奇跡だった。


「優愛……可愛かったな」


 無意識のうちに口角が上がり、タケルの顔がだらしなく緩む。

 その時、部屋のドアが勢いよくバンッと開け放たれた。


「おっはよーお兄……? ぬあっ、お兄ちゃんのバカ!」


 不機嫌極まりない声と共に、丸いクッションがタケルの顔面にクリーンヒットした。

「痛っ!? なんだよ芽衣めい、朝から乱暴だな!」

 タケルが身を起こすと、そこにはパジャマ姿の妹、御手宮芽衣が仁王立ちしていた。十五歳の彼女は、コロコロと変わる愛らしい顔立ちを怒りで真っ赤に染め上げ、頬をぷくっと膨らませている。


「なに、昨日の子とデートした余韻で、鼻の下伸ばしてデレデレしてんの! 顔に書いてあるわよ!」

「別にデレデレなんてしてないっての。ただ、ちょっと色々と思い出してただけで……」

「それがデレデレしてるって言うの! 私というこんなに可愛い妹がいるのに、他の子にうつつを抜かすなんて信じられない!」


 リアルな兄を前にして、芽衣のブラコン気質とツンデレが朝から全開だった。南半球の通信越しでしか会えなかった頃とは違い、物理的に触れられる距離にいる兄に対する彼女のヤキモチは、日に日にエスカレートしている。


「はいはい、二人は朝から元気ね」


 騒ぎを聞きつけて、母の玲子がコーヒーの入ったマグカップを片手に部屋へ入ってきた。穏やかな目元が特徴の彼女は、微笑ましく兄妹のやり取りを見つめてから、少しだけ表情を引き締めた。


「タケル、デートの大成功で浮かれているところ悪いんだけど……北半球の資源や出産を管理する技術エリート、テクノクラートたちから、あなたに出頭命令が出ているわ」

「出頭命令? 俺、何か悪いことしたっけ」

「違うわよ。本格的な身体検査と、遺伝子データの採取よ。今日、政府の研究施設へ向かってちょうだい。あちらのチーフディレクターが、あなたを首を長くして待っているそうだから」


 その言葉を聞いた瞬間、タケルの背筋に冷たい汗が流れた。

 チーフディレクター。それはつまり、あの天才にして変態的な医学的探求心を持つセクシー女医、霧島きりしま理沙りさのことだ。

 タケルの甘酸っぱいデートの余韻は、非情な現実の呼び出しによって、見事に吹き飛んでしまったのである。


 +++


 北半球の政府直属・特級遺伝子および抗体研究施設。

 案内されたタケルは、白銀に輝く広大な無菌室を抜け、施設の深部にある部屋へと通された。

 そこは、タケルが予想していた冷たい診察室ではなく、壁一面が真っ白なタイルで覆われた、異様に広い「専用浴場」のような場所だった。


「待っていたわ、タケル君」


 奥から姿を現したのは、スタイリッシュな最先端の白衣を身に纏った美人女医、霧島理沙だった。天才的な頭脳を持ちながらも少し抜けている彼女は、白衣の下に魅力的なプロポーションを強調するタイトな服を着ている。

 理沙はタケルを見るなり、知的なメガネの奥でギラリと目を光らせた。


「さっそくだけど、本格的な遺伝子検査の前に、まずは徹底的な体の洗浄を行うわ」

「洗浄って、風呂に入るってことですか? それなら昨日入ってきましたけど」

 タケルが後ずさりしながら言うと、理沙は「チッチッ」と人差し指を振った。


「ダメよ。あなたは南半球の野性的な環境で育ってきたから、洗いこぼしで南の雑菌が残っていると、無菌状態の北の環境では命取りになるの。だから、私が直接、医学的なアプローチで洗浄させてもらうわ」

「いや、絶対おかしいですよね!? 自分で洗えるってば!」

「タケル君、これは純粋に医学的なもので、よこしまな事は一切ないわ」

 理沙は真顔で明言したが、その瞳は完全に潤んでおり、よだれを拭うような仕草すら見せている。何度も「邪な事はない」と繰り返すあたりが、逆に怪しさを爆発させていた。


 タケルが逃げ出そうとするよりも早く、部屋のロックが電子音と共に施錠された。

「さあ、服を脱いで。それとも、私が脱がせてあげようか?」

「だっ、脱ぎます! 自分で脱ぎますから!」


 タケルは観念し、顔を真っ赤にしながら衣服を脱ぎ捨て、全裸になった。南半球で鍛え上げられたタフで筋肉質な体が露わになると、理沙は「ほうっ……」と熱っぽい感嘆の溜め息を漏らした。

 そして驚くべきことに、理沙自身も白衣を脱ぎ捨て、その下のタイトな服も脱ぎ、薄いシャツ一枚という無防備な姿になったのだ。


「ちょっと! あんたまで何で脱いでるんですか!」

「濡れるからに決まってるじゃない。さあ、こちらへ座って」


 理沙に案内されたのは、浴場の中央に置かれた見慣れない形状の椅子だった。

 それは、中央に大きく深い「U字型の切り込み」が入った、極めて珍しい形状の座面を持っていた。

 タケルが恐る恐るその椅子に腰掛けると、切り込みの部分からタケルの下半身からぶら下がったモノが無防備に露出する形になった。


「な、なんだよこの椅子……! 恥ずかしすぎるだろ!」

「医療用の特殊チェアよ。これで隅々までアクセスできるわ。じゃあ、始めるわね」


 理沙は大きなスポンジでたっぷりと泡を作り、そのスポンジでタケルの体を洗うのかと思われたが、泡を自分の素手に乗せた。

 そして、タケルの分厚い胸板に、泡まみれの柔らかな両手を這わせた。


「っ……!スポンジじゃなくて、そっちかい!」

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