新しい装備、新しい場所
「捕食竜」プライダル・ドラピリア出現まで残り四日……その間にそれよりも強大であろう四天王、「操像の参」タリオーラの討伐。
正直メタボドラゴン無視で良くない?とさえ思えてくるほどのスケジュール。数字的にタリオーラはロマリウスより強い可能性がある、だったら相手するのに全神経使うだろうし、これを遂行するのはちょっとハードかもな……でもやっぱりメタボドラゴンとも戦いたいんだなぁ!無理だろあんなデカデカと出現予告貼ってあってさ、メチャクチャ気になるだろそれ!
他の冒険者のほとんどはメタボドラゴンを見たことあるかもしれないけど俺は冒険初めてまだ一週間も経ってないんだ、完全初見なんだよ!!
やってやる、タリオーラ討伐作戦は四日で遂行してやる! 俺は有言実行マンだ!!
おっと熱くなってしまった。今は目の前のことだ、デソロート同行をエレムとレーフに誘ったが断られてしまった、まあこればっかりは仕方ない訳で……ところでロマリウスから逃がしてくれた礼言ってなかった気がするな……
「その、エレム、レーフ。今更だけど……昨日は助けてくれてありがとう!」
「ん?ああ、そんなこと気にしなくても良いというに……君は優しいな」
「……礼などいい。それより質問だが、『捕食竜』とは戦うつもりなのか?」
突拍子もない質問がエレムから飛んできたが、俺はそれをとっくに決めていたのですぐに返答できた。
「ああ、もちろん。あと四日だろ? どうやってソイツが現れんのかは初見だから何も分かんねえけど、雰囲気的に大規模と見た。行かなきゃ冒険者として大損だろ!」
「……そうか、分かった」
エレムの顔に何やら安堵の表情が見えたような気がしたが、まあ気にしないでおこう。
「フフ、じゃあ私達はこれにて失礼しよう」
そうヒラヒラと軽く手を振るレーフ。くっ……本当に着いてきてくれないのか……! 名残惜しいが仕方ない。
「ああ、いつかまた会おう」
そうして俺達は別れを告げ、二人は冒険者ギルドを去っていった。
◆
あれから少しして二人と別れた後、俺達も今は冒険者ギルドの外にいる。
「はぁ……なんかちょっと寂しいね」
「決して今生の別れでは無いにしろ、寂しいな」
「めちゃくちゃ頼もしかったし優しかったからなー、一緒にデソロート来て欲しかったよ」
金等級と銀等級だぜ?トップ層じゃんか、頼もしくないワケがないのよ!ロマリウスの時とかめちゃくちゃカッコよかったし……いやあまた会いたいねぇ〜。
「よし、リュック新しく買った!」
ギルドを出てからは、ロマリウス戦でボロボロになってしまったリュックを近くにあった店で買い換えた。似たようなデザインのやつがあって助かったよ。
「今度のリュックは冒険者用みたいだし、前のより軽くて色々入るっぽいな!」
武器を入れるスペースとかあるらしい……これ普通に考えて物騒だな! 冒険者なりたてだから気付けたけど冒険に慣れたら当然になっちゃうのか……それはそれで怖いな、一般人の感覚は残しておかないと。
「ちなみに幾らだったんだ?」
「一万弱」
リュックの相場はよく分からないから一万弱が高いのか安いのかどうかは知らん。ほらクチクもよく分かってないような顔してる。調べないと分かんないよこれ。
まあそれはそれとして今俺達が向かっている場所。
「やっぱり強い魔物と戦って分かったけど、今の武器じゃ流石に力不足すぎるよね〜……」
サキが言うのと同じく俺も悪樹と戦っている時点でちょっと感じていたのだが、明らかに武器が弱い。悪樹が見かけよりも脆かったから良かったものの、本物の木と同等の硬さであったなら恐らく勝てなかっただろう。
そしてあのレベルで紅級だ。銀、金ともなると更に頑丈な魔物もいるだろう。そうなるとそもそも攻撃が全く通用しなくなる……それは非常に不味い。
魔王を倒すだ四天王を全員倒すだ何だ言ってはいるが、そもそも攻撃が通用しなければ元も子もない。
ということで今俺達は武具屋に来た。
「おっ、何か王都より安くない?」
平均して王都のよりも5000ワラくらい安いぞ……最初からここ寄っときゃよかった!ボッタクリじゃねーかちくしょう!
「うーむ……俺はこの剣のままで大丈夫だ」
色々見て回ったところ、クチクは今使っている剣で十分のようだ。まあ兵士も使うような剣だし全く不足はないからな。
「俺は……うん、これ買うわ!」
俺が選んだのは今使っている短剣、確か兵士用短剣みたいな汎用的な名前だった気がするな。その短剣よりもずっと強そうな五万ワラで売ってる……えーっと名前は、氷海蒼晶の短剣……大層なお名前!
外見は刃が水色に輝いており、宝石的な角張った形状をしている。まあ水晶的な名前だし……これ観賞用とかじゃないよね?とか心配になるくらいには綺麗だ。
五万ワラっていうちょっとお高い金額にはなるけれど、悪樹の報酬で少しお金貰えたしその面では心配いらない。
「私は……戦い方的に武器とかじゃなくてこれかな〜」
「あら、そういうのって売ってるんだな」
サキが選んだのは……手甲。
刃物じゃなくていいのだろうか?という疑問は当然生じるが極論、手から刃のような闘気を出せるサキであれば、刃物は必要無いだろう。
そうか……ん?それなら俺も手甲買った方がいいんじゃね?
俺の技には闘争より穿てというものがある。それは拳と腕にリング状の闘気を付けて爆発させることにより超威力の殴打を引き起こす物。
そう、その技は殴打なのだ。
ならやっぱり絶対俺も手甲買った方がいいよなこれ!?
「じゃあ俺も買う俺も買う!!」
「えぇ……じゃあ私もまた別にもう一つ買っとこうかな」
俺とサキは手首から手のひらにかけては革、拳が丁度相手に当たる部分……拳面と拳背のみは軽い鉄で出来た手甲を購入した。
そしてサキはもう一つ……いや違うな、五つ程、投げナイフを購入した。
「基本私両手が空いてるから、投げナイフがあれば便利かなーと思って」
「なるほどね」
しかしどうやら手甲を片手ずつ買うのは無理らしい、正直今まで打った技は利き腕の右腕がほとんどだから正直あんまり左腕じゃ攻撃しないんだけど……しかも付けてみたら当然だが違和感がちょっとある。正直テンションは上がるけど、手袋よりちょっとだけキツいというか重いというか。考えてみればこれのフル鉄武装バージョンで剣を振り回してたネルファやエレムってマジで凄かったんだな……エレムに至ってはもはや全身鎧だし。ってな訳で左手はクチクにプレゼントしようかな。
「要らん」
「うへ〜夏に丁度いい対応〜」
仕方ない、今はどっちもリュックに入れとこ……まあいつか両手で使う場面が来るかもしれないしな、実際着けた方が防御力は上がるし。
………………
…………
……
重要な寄り道は終えまして……重要なら寄り道じゃないのでは? というのは置いておいて、早速デソロートへと出発だ。欲を言えばエレムとレーフとも一緒に行きたかったけど、向こうも予定等があるようで……今日一日はルターロ村に滞在することにしたらしい。
俺に突っかかってきたあの噛ませ冒険者も連れていこうかなーとか考えたけど、正直どっかで癇癪起こすかもだし……考えたくない例え話だが、もしその噛ませ冒険者の仲間がタリオーラに殺されていたら……とか考えると最悪だ。
そういうのもあって連れて行かないことにした。まあそうは言っても紅等級だったし実力はあるんだろうけどな。
「お、砂地になってきたね」
「本当だな、奥には砂漠が見える」
俺達がいた草地とは異なる砂が目につくようになってきた。恐らくデソロートに入ったという事だろう。
「遂に新天地……ワクワクしてきた!!」
武器も新調したし、ちょっとは戦力も上がった筈だ。しかしこの新装備……氷海蒼晶の短剣、コレを使うのがメチャクチャ楽しみだ。何より外見が綺麗なんだなぁ!
さてさて、どこかに試し斬りができる相手はいないだろうか……と砂漠を歩く。
「ん? 何この音」
「……何の音だ?」
「んだよサキ、ビビらせようとすん……ちょっと待て、俺も聞こえる」
全員が謎の地鳴りのような音に気付いた瞬間だった。
「──マズい、下か!!」
クチクが叫んだと同時、轟音と共に下から飛び出た巨大な長い物質。
必死に横へ跳び、何とか巻き込まれずに済んだ俺達は態勢を整え、その物質へと顔を向ける。
「……なあ、次の目的地へ向かう間に出る魔物って毎回こんなんなワケ?」
「知らん……運が悪かっただけじゃないか?」
「蜘蛛のやつはまだ顔がアレだったから私にとってはマシだったけど……」
俺にとってはアレでもキツかったけどな、と渋い顔をしながらそれを見上げ、更に深く渋い顔をする。
「まあ……キモイはキモイが、面白くもあるな、これは」
俺達の前でロボの拡張脚パーツにも見える大量の無機質な足を蠢かすは、龍と見間違えるほどの巨大な百足。
これは大百足なんてものではない、あえて大袈裟に言うと……大千足だ。
「こういう相手とは予想外だが、試し斬りと行こうじゃねえか……氷海蒼晶の短剣!!」
氷海蒼晶の短剣
雪晶の地でしか採れない頑丈な蒼い水晶で造られた短剣。
その水晶は長い年月をかけ、極寒の川の流れに削られて生まれる。
本来もっと値段が高くてもいい筈なのだが、価値をよく理解していないのか武具屋にてたった五万で売られていた。
Q.エレムとレーフって冒険者ギルドに何しに来たの?
A.依頼を見に来た。でもお察しの通り良さげな依頼が無かったので……




