ただものではない
ここ掘れワンワン!
って掘る必要ないけどね。あちこちに落ちてるから。それに犬じゃなくてリスだからね。
リスさんと一緒にしゃがみこんで木の実を拾う。
ベンジャミンさんとアルベルトさんはひばさみを使ってるけど、背が高いからつらそう。たまに腰をとんとんしてる。
チャーリーさんははあはあしてる。そしてジリジリ近づいてきてる。けどすぐにベンジャミンさんが首根っこ掴まえて引きずっていく。お疲れ様です。
やっぱりちびっ子だと地面に近い分、見つけやすい。今のところ僕とリスさんチームが一番拾ってる。ふふん!優勝は僕たちだ!
そうやって栗拾いならぬざくろもどき拾いをしていると、少し先にひときわ大きい物が落ちているのを見つけた。
リスさんがそれに向かって走ると、木の影から大きな影が飛び出てきた。それは普通の熊だった。
いや普通のっていうのもなんだけど。って言ってる場合じゃない!
すぐさまアルベルトさんが僕を抱き上げ後ろに下がり、ジンさんは熊と僕らの間に入る。
このままじゃリスさんが!最悪の想像がよぎった瞬間
「可愛いぃぃぃぃぃ!」
場違いな声が森に響いた。
「大丈夫!怖くないよ!僕と友達になろう!」
全く空気の読めない、というか、空気を破壊する台詞を叫びながら熊へと突撃するチャーリーさんの姿を見て皆固まってる。熊さんまで固まってる。
その状況で一瞬早く正気に戻ったのは熊だった。
標的をリスさんからチャーリーさんに換えた熊が腕を振りかぶった。
ああもう今度こそ駄目だ!
誰もがそう思った。そうなるはずだった…んだけど
「わぁ~立派な爪だね!肉球もがっしり固いね!さすが男の子だね!可愛い!毛艶は少し乱れてるね、でも大丈夫!僕がお手入れしてあげる!まずは職人に頼んで作ってもらった最高級ブラシでブラッシングしてあげる!その後は僕お手製のオイルで仕上げてあげる!その後は肉球のマッサージと爪のお手入れもしてあげるからね!さあ安心して僕に身を任せて!」
ぎゅっと瞑っていた目をそろりと開くと、そこには熊とがっしり組み合うチャーリーさんがいた。
???えっと…なぁに?この状況?
「大丈夫ですよジンさん。熊程度じゃ、あの変態には勝てません。あの変態は野生の動物どころか魔獣さえも素手で制圧できますから」
混乱している僕らとは違い、1人冷静なベンジャミンさん。
冷静かつ辛辣な言葉にジンさんもアルベルトさんもあ然としてる。
うっそぉ…信じられない。けど今まさにその信じられない光景を見ている。
「おいチャーリー、ソイツはリスを食おうとしたんだぞ。それに今回はノア君達もいるんだ、諦めろ」
「ええ~そんなぁ~」
「お前が欲しがってた魔獣図鑑の初版あるぞ」
「ごめんね熊くん!また今度遊ぼう!」
切り替えはやっ!てゆーかすごっ!熊さん撃沈してるんだけど!?いつの間に!?
へんたい は ただの へんたい じゃなかった
変態はただの変態ではありませんでした
…ただの変態とはいったい…
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