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じしんがないひと

「イワンしゃんおかえんなしゃいー」


あの後はクリスさんが呼ばれて、おやつピクニックは早々にお開きになってしまった。

僕1人で考えてもしょうがない、そう思って帰ってきたイワンさんに突撃してみた。


「おう、ただいまノア。どうした腹でも減ってんのか?」


僕ってそんな印象?腹ペコキャラはテディさんでしょ?ってそうじゃない。


「ちがうの。クリスしゃんがげんきないの」


僕を抱き上げて歩くイワンさんにそう言うと、複雑そうな顔をしている。

あら、もしかして心当たりがおありかしらん?


◇◇◇


「クリスの奴にここを辞めたいって言われてなあ」


な、なんだってぇぇぇぇ!?

ショックのあまり固まってる僕の頭をひとつ撫でてからイワンさんは続ける。


「仕事が早いわけでも、得意な事があるわけでもない。最近じゃあ失敗続きで、自分は立派な料理人になれないって言うのさ。要するに自信がねえんだよ」


そんな事で?なんて絶対に言わない。言えない。

控えめで優しいクリスさんはサポート役に徹しているところがある。でもそれって回りをよく見ていて、どんな作業も満遍なく出来るってことだ。同じ事が出来る人はいない。


「決して腕が悪いわけじゃねえ。努力を惜しまず、どんな仕事も率先してやる。けどなぁ、自信がないってのはある意味致命的だ。オドオドと出される料理を客はどうして楽しめるってんだ」


それは確かに言えてる。自信無さげなお医者様にはかかりたくないし、大工さんに家は頼みたくない。そして自信無さげな料理人のお皿には手を出せない。


「今のアイツは思い詰めてるせいでミスをする、そうするとまた思い詰める悪循環に嵌まっちまってるのさ。どうにかしてやりてぇが、自信をつけろったってなあ、言うほど簡単じゃねえわな」


どうしたもんかとため息をつくイワンさん。

事態は想像以上に深刻だった。


◇◇◇


料理人としての自信、か。

クリスさんは料理を作るのが好きだって、自分が作ったものを食べてもらえるのが嬉しいから頑張れるって言ってた。

食べてくれてありがとうって言ってくれるクリスさんの顔を思い出す。

何か、僕に出来ることはないものかと考えても何のアイデアも浮かばない。

イワンさんを見送って、そのまま食堂の椅子にかけてぼんやりと考えていると、厨房から声が聞こえた。


「違う違う!逆だ!そっちが下だ!反対なんだよ!」


逆…反対…


「あー!」


あのスイーツ!あれなら、クリスさんを励ますことができるかも!材料も、朝ごはんの中にあった!

善は急げ!椅子からずりずりと降りて、イワンさんが事務仕事をしている部屋へと走って向かった。


ノア君、何か思いついたようです

うまくいくといいのですが

皆様、本日もお越しいただきありがとうございます

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