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魔法少女の変身解除シーンの場所が俺の家になってる件  作者: 揚羽常時


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第80話:合成燃料の不買運動


「無雲帝国の合成燃料を買うなー!」


「「「「「買うなー!」」」」」


「無雲帝国に金を落とすなー!」


「「「「「落とすなー!」」」」」


 ナニコレ?


 と俺が動画を見ながら思っていると、いま世界中で無雲帝国の合成燃料不買運動が流行っているらしい。NGOが組織され、日に日に発言力が増しているとのこと。その組織の発言によると、無雲帝国はエネルギー産業を牛耳って世界を支配しようとしており、この国の横暴を見逃せば世界は無雲帝国の命令を聞くだけの属国になってしまう……という主張らしい。まぁあまり間違っているわけではないが。


 ただ主張しているだけなら何も問題も無いし、言いたいことを言わせておけばいいのでは? と思っていた俺が甘かった。既に海賊にも似たことをやっており合成燃料を運んでいるタンカーに小さな船をぶつけ、海上事故で無雲帝国を訴えるという真似までしているらしい。もちろんこっちの対応もぬかりなく、しっかりと証拠動画を撮って、相手からぶつかって来たことを社会ニュースにして報道しているが、こっちの国民は十万人程度。相手方はNGOなのでどれだけいるかは知らないが、それでも世界中の反・無雲帝国集団ということでそこそこ声が大きい。影響力もそれなりに高いのか。世界で流されているメインのニュースでは合成燃料を運んでいたタンカーが小舟を巻き込んで沈没させたというニュースが声高に叫ばれ、無雲帝国の横暴にニュースを見た世界中の善良市民が怒り狂っているらしい。ユーキューブに相手方から突っ込んできて自沈した映像を動画として掲載しても、どういう原理が働いているのか……すぐに削除される。結果、無雲帝国のタンカーはNGOの小舟を横暴にも沈没させて謝罪の一つもしない独裁的な暴力存在と訴えられ、正義の心を宿した世界プロ市民が罵詈雑言を浴びせている。


「いや、まぁそれはいいんだけどさ」


 良くはないが、それよりも問題がある。


「経済的後進国の事情はどうなっているんだ?」


 そりゃガソリンを買ってインフラを維持できる大国はいいだろうけど、小国にとっては無雲帝国の格安の合成燃料は既に無くてはならないものだ。


「大国は不買運動には参加しておりますが後進国は未だに我が国の合成燃料を買っております。なので経済的な打撃は然程でもありません」


 キレイさん……じゃなかった……ハーレクイーンがそう報告してくれる。


「不買運動に賛成しているのはあくまで大国の富裕層であって、貧困層や後進国は普通に合成燃料を買ってくれるっす。正確には貧困層に燃料を売っている中小企業っすね」


「タンカーで小舟を沈めた件は?」


「国際法廷で決着を付けましょうと無雲帝国から申し出ておりますが、今のところ相手方は出廷する気は無いようです」


 自分たちが不利だと分かり切っているから、か。


「じゃあこのまま後進国に合成燃料をばら撒いてくれ。利益は度外視でいい。そもそも金なんてはいて捨てるほど持ってるし」


 元々東京諸島だったのだ。一番の隣国である日本が一定の値段で合成燃料を買ってくれるので、輸出利益に関しては確約されているようなものだ。もちろん日本国からも二酸化炭素を輸入しており、こっちは低価格で大量に買い取っている。火力発電やら工業的な副次産物などで二酸化炭素は大量に出る。それを核融合技術で得られる電力と、島だからどこからでも調達できる水素と合成して燃料を作っているのだ。いわゆるウィンウィンの関係。しかも自然に優しいクリーンエネルギー。NGOはそう言う日本の姿勢も非難しているが、日本人はそもそも無雲帝国を仮想敵とは思っていないらしく、合成燃料を買うのも二酸化炭素を売るのも、平然とやってくれる。優しいお隣さんって何よりの財産だよな。


「無雲帝国の国民は知らされていないが、エンドレース株式会社の核融合炉心からは放射線が漏れ出ており、国民は放射能に汚染されていると科学的データが取れていて――」


 とりあえず無雲帝国にネガティブキャンペーンが出来れば何でもいいのだろう。タンカーに小舟をぶつけたり、嘘八百の記事を書いたり。暇な人間ってどこにでもいるもんだな。


「なんか最近さー」


 で、そのニュースを見ているマスラオが不機嫌そうに舌打ちする。


「どこぞのNGOがウザくね?」


「わかる。そもそも何でそこまで無雲帝国を敵視するかね?」


「……ボクたち何も悪い事してないよね?」


 三美姫がウザったそうに世界情勢について愚痴る。気持ちはわかるが、なんだかなぁというのが俺の意見。


「好きに言わせておけばいいんじゃねーの? その内鎮火するだろ」


「こんな主張をしている国に出張したくないんだけど」


 小さな声でマスラオがそう言う。


「「だよねー」」


 キラとキワミも小さな声で同意する。助けてやっている国が合成燃料の不買運動を訴えていれば、助ける意欲も失せるというもの。


「まぁそれもビジネスだろ」


「頭ではわかってんだけどさー」


 星崎キラーンが堕星少女スタッブスターであることはバレているが、他の三人はバレていない。とはいえ無雲帝国に敵対的な国を助けるという矛盾に論理的な答えを出せと言われるのも禅問答だろう。気持ちはわかる。


「オワルはどう思う?」


「まぁあんまり死人は出したくないし」


 米国では既に大統領並びにホワイトハウスの支持率がストップ安並で下落しているらしい。ストップしないのはそれが株式市場ではなく、あくまでホワイトハウスに対する国民の不満によるものだからだ。メターマンが米国を襲って、死者が出て、インフラが破壊されて、俺とミズキでメターマンを討伐しても失われたものは戻ってこない。特に都市部での破壊行為は復興に一億ドルを超える予算と長い時間がかかる。というかそれ以上に死んだ人間が戻ってこないのだ。政府に対する不信が募るのもしょうがないと言えば、その通りではあって。まぁ頑張ってくださいねとしか俺には言えんのだが。


「もういっそ反・無雲帝国の発言をする国にはバーゴストライク派遣しなくてよくね?」


 これは無雲帝国市民として言っているから声が大きくても問題ない。


「……気持ちはわかるけど……メターマンに殺される人を思うと」


「私も微妙な感じ」


 それぞれ思うところはあるらしい。


「じゃあNGOにメターマンをぶつけるとか」


 その手があったか。ちょっとなるほどと思ってしまう自分が計算高くて嫌だ。そうして教室の後方をチラリと見る。今日は須久留ミズキが欠席だった。どこに行っているのやら。


「米国は未だに謝罪してこないのか?」


 マスラオが聞く。


「みたいだなー」


 俺がそう答える。既にメターマンが暴れて被害は深刻なことになっている。とにかく無雲帝国に敵対的な行為をすればメターマンは地球上どこにでも出張するのだ。バカが絶滅しないのは人類の業なのかもしれない。


「政権交代も時間の問題か?」


「だろうなぁ。次の米国選挙は左翼が圧勝するだろ」


 主流派が強硬姿勢を取れば取るほど支持率が下がる。プライドでどうにかなるレベルを超えていると思うのだが。とか思っているとスマホに通知が来る。石油産出国でメターマンが暴れているらしい。懲りないねー。人類も。


「先生。すみません。腹が痛いのでトイレ行ってきます」


 と授業を抜けるように具申するマスラオ。そうか。今回は罠娘少女ダーンディアナの出動か。電磁魔法を使う超強力な魔法少女。それこそ地球くらいは蒸発させられる。ソレをしないことがダーンディアナの恩情だと、地球の何割の人間がそれに気づいているのか。


「どうぞ」


 古典の教師から許可を得て、教室を出ていくマスラオ。そうしてトイレの個室でブローギアを召喚し、罠娘少女ダーンディアナにドレスティック・コンバータで変身するのだろう。もちろんダーンディアナ状態のマスラオは女体だ。股には何もない。それを俺がどう思っているのかは、まぁわかるだろ? そうしてスマホで罠娘少女ダーンディアナが出るとクラスというか学校中というか世界中の人間がダーンディアナに夢中になるんだよな。


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