第79話:サングラスとデート
「余計なことになったな」
「余計なことになったね」
魔法少女……堕星少女スタッブスターだとバレることになったキラは顔が売れてしまい、気楽に無雲帝国を出ることが出来なくなってしまった。なにせバーゴストライクチャンネルのアプリダウンロード数は一億を超えている。数十人に一人はダウンロードしている状況だ。もちろんアメリカでパーソナルジャマーキャンセラーが使用されている以上、その場所以外ではパーソナルジャマーを行使すればバレないわけだが、そのためにブローギアを持ち歩くのもな。
「ギターケースにでも入れておけば?」
と、俺は言ったが、キラ自身がサングラスでどこまでバレないか挑戦したいらしく、まぁ本人がそれで納得しているならツッコむのも野暮か。ということでサングラスで変装しているキラと放課後の庵宿区デートをすることに。もちろんバーゴストライクのスタッブスター……星崎キラーンだとバレれば大騒ぎになるだろうが。国際魔法少女基金においても米国が余計なイチャモンを付けてきたせいで、米国は派遣対象から外れ、今のところ米国のメターマンを狩っているのはスクール水着仮面の一号と二号だったりする。一号は言わずもがな俺なのだが、女性化したときに顔の造りが女性の方に寄っており、一般的な平常の俺の顔と重ねることができない。そもそも俺はイケメンじゃないし、超絶美少女のスクール水着仮面一号がこんな冴えない男だとはお釈迦さまでも思うめえ。二号の方は普通に公言しているのでバレているというか……すでに世界的に公認だ。
「合衆国。虎の尾を踏む」
「このまま更地になるまで意地を張る気か?」
「米国民全員の意思を無視する民主主義という名の独裁」
米国の左翼の方々はホワイトハウスに対して痛烈な皮肉を記事にしている。世界中どこにでも湧くメターマン。それは米国も同じで。だが米国は既に国際魔法少女基金に見捨てられていて、米軍でも討伐できないメターマンを今狩っているのは先にも言ったように地球秩序維持思想団体オーダーメイドである。で、その結果結論が変わらないかというとそんなわけもなく。メターマンが暴れることによる都市破壊ははっきり言って滅茶苦茶だ。俺がそう仕向けているというのもあるが、それでも破壊規模は大地震にも匹敵する。バーゴストライクに任せておけば十億円で何もかも元通りになっていたが、ピスタキオン・サルベーションを使えないスクール水着仮面が出動した場合、建物もインフラも……もちろん死者も元に戻るはずもなく。遺族は無雲帝国を非難したホワイトハウスに怒りを募らせ、役所はメターマンに破壊された都市を復興させる予算の巨大さを見て青ざめる。十億円で死者も破壊も元通りになるバーゴストライクのピスタキオン・サルベーションがどれほど有難いものであるか。それを米国民が思い知っているというのに、いまだにホワイトハウスは強硬な態度を貫いている。まぁ好きにすればいいとは思うが。ともあれだ。
「えーと。チョコバナナでチョコチップとベリーソースと……それから生地は三枚重ねの……それでぇ」
学校終わり。WARPドライバで庵宿区に来て、流行りのクレープ屋さんで長ったらしい名前のクレープを注文する。俺は「同じもので」とだけ言って終わらせる。そうしてキラの奢りでクレープを食って、美味しそうに食べているキラを見て、こういうのもいいか、とちょっと思ってしまった。堕星少女スタッブスターとして名が売れてしまったキラだが、本人は別に窮屈でもないようで。承認欲求……とはまた違うだろう。そういうのがあるならそもそも最初から世界に公表しているだろうし。ひょんなことから顔を売ってしまったけど、ソレを前向きにとらえよう。そんな感じ。
「オワル。オワル」
「どうかしたか?」
「口の端にクリーム付いたから舐めてくれる?」
どういうプレイだ?
「いいじゃん。甘酸っぱい青春の一ページ」
言われて舌を出してキラの口の端を舐める。クリームの味がした。
「えへへ。だから好きだよ? オワル」
「まぁ俺も好きだけどさ」
「キワミやマスラオや壱岐尾先生にも言ってるんでしょ」
イエスアイドゥー。
「バーゴストライク全員と関係持ってるってよく考えるとすごいよね」
「それもこれも俺の家がドレスティック・インバータの場所になってしまったが故」
「それだよオワル」
「どれだよキラ?」
「そもそもなんで全員のドレスティック・インバータの場所がオワルの家になっているのさ?」
いやー。あの頃は親がヨーロッパに出張するとか分かんなかったし。ちょうどいいから独富島のおばあちゃんの家で一人暮らしすれば無雲帝国に居られて一石二鳥じゃんと思っていた時は、既にブローギアの仕様を完全に忘れていたんだよなー。
「……怪しい」
「何か妖気でも感じたか?」
「実はブローギアってオワルが作っていたり?」
「どうやったら高校生……っていうか魔法少女が出て来たのがもっと前だから中学生が魔法少女のステッキを作れるんだよ?」
「年齢はこの際関係なくない?」
「技術者でも無ければ無理だって」
その技術を俺は持っているわけだが。正確にはWARPドライバな。
「まぁ今はそれでいいけど」
ハグリとクレープを食べる。
「一応私がオワルを疑っているのは事実だから。バレたくなかったら細心の注意を払ってね?」
「はいはい。わかりましたよ。何言ってるかはわからんがな」
最悪喋ってもいいのだが、それはそれで負けた気がするので却下。
「にしても色んなファッションがあるんだね」
クレープを食べながら大通りを歩く。最新のトレンドファッションを展示している服屋がズラリと並んでいた。さすが東京のファッションの発信地でもある。原宿とかにも劣らない。
「何か買いたい服とかある?」
「トレンドに則っていない、長く愛用できる服が欲しい」
「庶民だなぁ」
金持ってるからファッションも、って言うのも違うだろ。ついでに言えば、俺の口座と株式と保有する土地を合わせると、お前らの百倍以上の金銭的価値を得ていることになるんだからな? 自慢しても意味無いので言わないが。
「この際だから何か買おうかな?」
「いいんじゃねえの?」
「評価してくれる?」
「ファッションセンスゼロの俺にか?」
「可愛かったら可愛いって言ってくれればいいから」
「全部にそう言うぞ」
「じゃあ全部にそう言ってね」
そうしてブランドのファッションビルに入っていく俺たち。店員に勧められた服を着て。
「どう?」
「可愛い」
「これは?」
「ちょっと味が違って可愛い」
「これなんて」
「お前に青は似合わんな」
などなど。遠慮もへったくれもなく論評する。そうして俺が可愛いと言った服を買って、ニコニコするキラ。見た目は完全にギャルなのに、クレジットカードで数十万をスパッと払うのだ。服屋にしてみれば信じがたいだろう。一応グラサンをしていて堕星少女スタッブスターだとはバレなかったが。試着室でのファッションショーの時は流石にグラサンは外していたが。何故ニコニコしているのか聞くと、
「つまりコレを着てオワルとデートすると可愛いと言ってもらえるんでしょ?」
とのこと。間違った意見ではないのだが……な。




