第78話:筋書きのあるドラマ
「私は世界に責任を持つ立場として、今ここに立っていることを誇りに思う」
深夜の事。米国の大統領が昼の十二時に演説をするというので俺もそれを見るために夜更かしを承知で起きていた。
「今こうして私が生きている時点で私の立場は明確に正義なのだと、そう信じられる。我ら米国は常に正義であるのだと!」
何を言っているんだお前は。と言いたい気分だが、スマホにツッコんでもしょうがない。
「先日、一人の少女が世界に対して、その御尊坊を公にした。ネットでは特定されているが、あえてその名は口にすまい。プライバシーの保護も文明には必要だ」
あからさまに星崎キラーンのことを言っているのはスピーチを聞いている誰もが悟っただろう。
「その上であえて問いたい。国際魔法少女基金の金の流れは不透明すぎる。金の運用が特秘事項とされているが、そもそも国際基金なら金の流れを明確にすべきではなかろうか!」
その内「立てよ国民!」とか言いそうだな。
「その上で世界で最も金の流れが不透明な国をあなた方は知っているだろうか? そう! 無雲帝国である!」
まぁ公表してないしな。そもそも民主主義社会じゃないから、国庫に透明性がいらない。
「であればこそあえて問う! これはマッチポンプなのではないか! と」
なるほど。そう来るか。
「国際魔法少女基金は、その使用銀行が無雲帝国のモノ。帝国銀行はあらゆる政治的根拠を却下して不透明な経済管理をしている。ではバーゴストライクとは何か? メターマンとは何か? 貴君らは考えたことはあるだろうか?」
問いかける形で、だが結論に向かって大統領は演説する。
「私はこの命を賭けて真実を伝える。この後メターマンに殺されることになっても主張を止めるつもりはない」
グッと握った手を上へと掲げる。
「無雲帝国が襲わせるメターマン。それを駆逐するバーゴストライク。これらは盛大なマッチポンプであるのだと!」
バカもほどほどいい加減にしろよ。まぁ大統領やホワイトハウスの意見もわからんじゃないが。それにしたって無雲帝国を悪役に……。
「FBIが調査した限りでは、米国内で起きたメターマンの襲撃事件。その内五割程度は冤罪であったと報告がなされている。つまり罪のない一般人を無雲帝国の敵と称してメターマンを送り込み、無雲帝国皇帝は、我ら米国に攻撃をしていたのだ。なお悪質なことに、その事態を収拾するために国際魔法少女基金に米国側から入金させ、大金をせしめて魔法少女を投入、解決し、正義の味方の顔をして米国から搾取していたわけだ」
ここまでくると政治ショーだな。先にレッテルを張った方が勝つという。
「無雲帝国が高度なエネルギー産業を持っていることは認める。その上で、その技術を盗もうとする輩を排除することも国の運営としてあり得ないでもないだろう。だが、そういう時はまず裁判を行い、当事者を法の下で裁くべきではないのか?」
言っている意味は分かるが。
「メターマンによる一方的な蹂躙。これはもうテロリズムと言っても過言ではない。しかも産業スパイのみならず周囲の都市を破壊するという無差別攻撃だ。メターマンのそれは国際的にも問題にすべき横暴ではないのか!?」
とは言っても今更だな。
「さらに自分たちで破壊を広げておきながらマッチポンプでバーゴストライクを派遣して大金をせしめて恩まで売るとは。これはもう国際社会に対する挑戦である!」
…………。
「無雲帝国よ。今すぐテロリズムを止め、そのエネルギー産業を世界に開示せよ。我々米国は世界に責任を持つ大国として、そのことを訴える所存である!」
「USA!」
「USA!」
「USA!」
「USA!」
「USA!」
「USA!」
「USA!」
スピーチ会場にいた米国人が立ち上がり、大統領に拍手をして、そうして演説は終わった。
「だいたいわかったであります」
で、夜中の演説を聞いて。その後朝まで眠って。頼んでいたイイトへの依頼。パーソナルジャマーの問題について。
「米軍がジャミングを妨害する装置を開発したみたいであります。コードネームはパーソナルジャマーキャンセラー」
核エンジンでも積む気かな?
「な、わけで米国で魔法少女を運用すると身バレする可能性大であります。わざとメターマンをおびき寄せることもしそうでありますし」
ああ、それに関しては大丈夫。
『貴国の意見はよくわかった。では以降誤解を招くことを自重して、国際魔法少女基金は米国にバーゴストライクを派遣しないこととする。自国の戦力で頑張ってくれたまえ』
国際魔法少女基金のトップがそのように答えると、米国民は震え上がった。そもそもメタリアル・ディフェンサーによって物理攻撃の利かない無敵性がメターマンの最も厄介なところだ。破壊規模の大きさも恐ろしいと言えばその通りだが、その恐ろしさの根幹にはメターマンの絶対防御が根拠として存在する。本当に国際魔法少女基金が米国を見捨てた場合、それこそマ〇ベルヒーローでも連れてこない限り、米国に未来はない。そうして悪夢のごとき未来を想起した米国民は大統領を強烈に非難。今すぐ発言を取り消して無雲帝国に謝罪しろとネットから何から弾劾した。ホワイトハウスもまさか国際魔法少女基金がそんな対応をするとは想像もしていなかったらしく、聞く限りでは職員は青ざめていたらしい。
アメリカも無雲帝国に対しては産業スパイを送り込もうとしている一部の思想団体がいる。その根幹をメターマンで潰しているのだが、それでも無雲帝国の敵は次から次へと現れる。悪って奴は呆れちまうぜ、ととある特撮のオープニングを歌いたい気分だ。パーソナルジャマーキャンセラーによる魔法少女の身バレ。これもよくなかった。おかげで星崎キラーンが表舞台に脚光を浴びて、メターマンとバーゴストライクがマッチポンプだと社会に印象付けられてしまったのだ。この機能を放棄しない限り国際魔法少女基金は米国へのバーゴストライク派遣を認可しない。そういう姿勢をとることになる。
「パーソナルジャマーキャンセラー……ね」
そうして今日も学校に行きながら、キラ達とイチャイチャしているのだが。
「それじゃあ出欠を取りますねー」
と、毎度のごとく壱岐尾先生が出欠を促し、俺は出席ボタンを押した。あくまでタブレットでな。そうして授業を受けていると、クラス中からスマホが鳴った。バーゴストライクチャンネルだ。
「授業を並行して受けるなら動画視聴も許します」
という壱岐尾先生の御恩情に感謝して、クラスメイト達……というか地球人類がメターマンの発生をドローンカメラで中継して見ていた。もちろんメターマンが現れたのは米国。だが現時点で国際魔法少女基金は米国に対してはバーゴストライクを派遣しない旨を伝えている。
「な、なあ、星崎さん……これマズくね?」
このままでは米国のとある都市が更地に変わってしまう。そう危惧したクラスメイトの一人がキラにそう言うが。
「でも出動要請来てないし」
そもそもケチをつけられた国に温情でお助けするほど、バーゴストライクは安くない。
「壱岐尾先生」
で、ミズキが挙手した。スクール水着仮面二号。
「一時的に米国まで飛んでいいでしょうか?」
地球秩序維持思想団体オーダーメイド。その尖兵であるスクール水着仮面。まぁオーダーメイドはマジで無償で活動しているので、国際魔法少女基金とは別の理論で動いてはいるのだが。ミズキがそう言うと、憧憬の瞳がクラスメイト達を輝かせた。バーゴストライクがいなくてもオーダーメイドがいる。これで米国は助かる。そうして教室を飛び出してシュクールミジュギを装着し、米国までWARPドライバを使う。
「闇あるところ水着あり。悪あるところ仮面あり。スクール水着仮面二号。見参!」
ちなみに一号である俺は身バレすると厄介なのでお留守番。まぁパーソナルジャマー云々の前にシュクールミジュギで女体化しているので、女性顔の俺から遠藤オワルに行きつく人間はいないだろうけども。ただ別にメターマンの一匹程度は二号にだけ任せても問題はない。さるぼぼ人形型メターマンがブレスを吐いて米国の都市を焼き払っているが、そのブレスを切り裂いてスクール水着仮面二号はメターマンにダメージを与える。最終的に巨大化したさるぼぼ人形を、しかしリープリッパーでズタズタにするスクール水着仮面二号。世界中から喝采は上がったが、スクール水着仮面にはピスタキオン・サルベーションが使えない。つまり破壊された都市、停止したインフラ、殺された都民……全てが取り返しのつかない問題として世界中で議論されることになった。まぁ自業自得だ。




