第77話:学内中が大騒ぎ
「朗報! 堕星少女スタッブスターの正体が星崎さんだった」
スクールメイトのSNSで拡散された情報は枯野に火を放つがごとく。燃え盛るテンションでパンデミックを起こしていた。
「星崎さんが堕星少女スタッブスターって本当!?」
「バーゴストライカーズのシークレットレアのカードにサインしてください」
「っていうか内のクラス凄くね? スタッブスターとスクール水着仮面二号だぜ?」
まぁそれ以外も集っているのだが、そこはまぁ特秘事項ということで。
「星崎さん。どうやって魔法少女に選ばれたの?」
「イ〇キュベータに誘われたとか?」
「っていうかもしかしてお金持ち?」
やいのやいのとキラを持ち上げてキラキラした瞳で、それこそアイドルに憧れる庶民のごとく学校中の生徒がキラに注目する。
「イイト。パーソナルジャマーが働かなかった理由とかわかるか?」
スマホでイイトにメッセージを送る。最高位のハッカーなら原因くらい究明できそうなものだが。
「じゃあ調べときまーす」
あっさりと受諾して、イイトとの会話は終わった。まぁ解明してくれるなら俺はどうでもいいのだが。
「ブラックホール作れるんだよね? アレってどうしてるの?」
「ブローギアが出力してくれてー」
「変身シーン見たいなー」
「見せません」
まぁバーゴストライクの変身シーンはエッチだしな。
「ほらほら、皆さん席に着く」
そうして担任の壱岐尾先生が現れて、全員が席に着き出欠をとる。そのあと報告を受けて、さらに授業。昼飯はさてどうすっかなー。スマホでネットを見ると、キラのアウトスタグラムのフォロワーが恐ろしいことになっていた。基本飯テロとかスイーツの写真とかだが、たまに自撮りをしていて、それが世界中の男どものオカズになっているらしい。恐ろしい世の中やでぇ。
「星崎さん……」
「堕星少女」
「スタッブスター」
「マジで?」
「朝の動画見たろ?」
というわけでグローバル社会で認知されてしまった堕星少女スタッブスターの正体について、まさか今更言い訳も効かず。仕方ないのでスタッブスターについては諦めてもらうしかないわけで。本人は思ったより身バレしたことを深刻に考えていないらしく。人気を集めるという意味では適当に対処しているようだ。
「星崎さん! サインください!」
「俺も俺も!」
「某も!」
「拙者も!」
「私だって!」
「そういうサービスはしてないの。ゴメンね?」
ニッコリ笑顔でマネージャーを通してください、というキラ。そもそもお前にマネージャーはいないだろ。
「じゃあオワル。何食べる?」
「そーだなー。じゃあ今日はグリーンカレーで」
「奢ってあげるね♪」
軽やかにそう言って券売機にお札を飲み込ませ、グリーンカレーのボタンを押すキラ。それから自分は野菜炒め定食を頼み、ついでにキワミとマスラオも食券を買って、四人でテーブルに座る。
「どう思う?」
「……まぁそういうことですよね」
マスラオとキワミがそう言った。つまりバーゴストライクの身バレを画策している何者かがいる。このままキワミと壱岐尾先生とマスラオを社会にさらしていいものか。これは命題になりうる。とはいえメターマンの暴虐を止められるのは魔法少女だけなので、これからも世界の治安はバーゴストライクに依存するのだが。一応オーダーメイドでもメターマンは倒せるが、あっちはピスタキオン・サルベーションを行使できないので、メターマンを倒すのはいいが都市再生が行えない。あくまでミズキをスクール水着仮面二号に指名したのは彼女の復讐心とバーゴストライクとは別の対処が必要になる第四勢力のためだ。俺はグリーンカレーを食べながら、そのことについて考える。
「すみませーん」
そうして四人で飯を食っていると。ニコニコ笑顔を不自然に張り付けている生徒がメモ帳とペンシルを両手に持って、穏やかを思わせる声でこっちに話しかけてきた。正確にはキラに、だが。
「新聞部としてお聞きしたいことがありましてー」
新聞部。まぁ俗な言い方をするなら校内マスメディア。悪い言い方をするならパパラッチが妥当だろう。
「あのバーゴストライクの堕星少女スタッブスターの正体が四美姫の星崎さんだったなんて。これは取材をせずにはいられない。そんなマスメディアのお気持ちはわかってくれますよね?」
ここでイエスとでも言おうものなら情報搾取された挙句、答えた内容が悪意によって誤変換され、校内新聞にヘイトを集める形で載ることはほぼ間違いない。
「それで聞きたいんですけど、いつ頃からバーゴストライクに所属しているんですか」
「ググれば?」
あっさりと答えたキラもキラだが、確かにネットで検索すればバーゴストライクの活動開始時期なんて普通に知れる。そもそもメターマンが蔓延ったのが無雲帝国の独立宣言の少し前なのだから少し暗算すれば誰でもわかる。
「ではどういう風に選ばれたのですか?」
「ノーコメント」
「お給料はいくらくらい?」
「ボランティア活動よ」
まさに嘘八百を平然と口にするが、それもこれもよくよく考えてのことだろう。一回の出動で五億稼ぐとか、そんな情報が出まわったらよからぬ虫が湧いて出る。金銭トラブルで友情が破壊されるのは決してドラマだけの展開ではないのだ。
「無償奉仕で魔法少女をやっている、と?」
「正義の味方なんてそんなもんでしょ?」
いとも平然と嘘をつくキラの胆力には恐れ入るが、政治的には正解。まぁそうじゃなくてもバラして得することが一切ない返答を口にするメリットがそもそも無いわけで。野菜炒め定食を食べながら不機嫌そうにキラは新聞部の部員を見つめる。
「まだ何か?」
「この学校の堕星少女スタッブスター推しに一言お願いします」
「応援よろしくねって書いておいて」
「にしては遠藤さんと仲睦まじいみたいですけど」
「何か問題でも?」
ギロリとキラが部員を見ると「あははー」と愛想笑いを浮かべて去っていく。
「マジでどうしたものか」
キラは別にどうでもいいとは言うが、マスメディアの好奇心は場合によっては一般人を追い詰める。ここが無雲帝国だったからいいものの、仮に別の国だったらパパラッチに血を吸われていただろう。皇帝としてバーゴストライクへの取材禁止を王命として公布するべきか?
「オワル。今日はカラオケ行かない?」
「俺は構わんが……」
「……ボクも」
「俺もだぞ」
キワミとマスラオも便乗してくる。
「二人とも。空気読んで?」
「まさにこっちのセリフだろ」
ジト目でマスラオがキラを掣肘する。
「せっかくオワルと二人きりになれると思ったのに……」
残念だったな。てかスキャンダルじゃね?
「オワルはどう思っているんだ?」
「あの星崎キラーンとデートできるなら、これ以上はないかな」
「あは♡ だから好きだよオワル♡」
キラ。メスの顔になってるぞ。




