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魔法少女の変身解除シーンの場所が俺の家になってる件  作者: 揚羽常時


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8/11

第8話:世界は彼女を祝福している


「グラビティサンクチュアリ」


 家に帰って、内装工事をして近代的になったキッチンで、その利用手段のない一人暮らしの男児……つまり俺がお隣さんのタッパーをレンジで温めていた頃。スマホの動画では魔法少女がメターマンと戦っていた。赤べこ怪人の意味不明な音波攻撃に、重力魔法で対抗しているのは堕星少女スタッブスター。重力を魔法として操る無敵の個体。まぁそもそもバーゴストライクって一体で軍事国家相手に出来るけど。ただ彼女らが政治的意図をもって行動することはない。あくまでメターマンの破壊行為の阻止、ならびにメターマンの撃破のためにバーゴストライクは動く。今回は中東のとある企業がメターマンに狙われて、甚大な被害を出しつつも少し遅れて登場した堕星少女スタッブスターがメターマンと互角に戦っていた。バカが二・五乗されたかのような不思議な重力を自在に操るスタッブスター。大気を重力で操って暴風を吹かせることさえ可能だ。エネルギー効率的には最悪にも等しいが、そもそもバーゴストライクの取り扱うエネルギー基準が既に恒星級で。


「RUOOO!」


 赤べこ怪人も首をカラカラと鳴らしながら抵抗していたが、趨勢は決しているように見える。スタッブスター推しの動画視聴者も投げ銭を遠慮なくして、それもスタッブスターの収入になるのだが。まぁそもそも国際魔法少女基金に振り込まれた金額の五割を魔法少女が受け取る形なので、金に関しては今更言うことでもないだろう。


 で、俺がレンジのチンの音を聞いて、飯の準備。御飯とおかずとスープを用意して畳の座敷へ。ちゃぶ台に飯を並べてスマホを置く。動画を見ながら飯を食う。マナー違反は重々承知だが、まぁ一人暮らしなのでガミガミ言ってくる人間もいない。親はヨーロッパに転勤しているしな。


「あ、巨大化した」


 ご飯を食べながら動画を見て。その画面の中で堕星少女スタッブスターに追い込まれたメターマンが巨大化する。あれだ。ニチアサによくある奴。追い込まれた敵役が巨大化する。そんなフィクションをメターマンはマジで実現する。


「ファイナリティマジック……」


 そうして巨大化し、都市部をインフラごと破壊していく傍迷惑なメターマンを止めるために堕星少女スタッブスターも切り札を出す。堕星少女スタッブスターのファイナリティマジックと言うと。


「キター!」

「見れるぞ!」

「行け!」

「やったれ!」


 動画のコメントもテンション爆上げだ。


「ストナァァァァァァァァァァ! ブラァァァァック! ホォォォォォォォォル!」


 ストナーブラックホール。ブラックホールを生成し、それを相手目掛けて投げる大技。正確には大魔法。もはやエネルギーがどうのという次元ではなくなっているのだが、それをツッコむのは野暮というもの。


「RUOOOOOOOO!」


 事象の地平面に吸い込まれた巨大赤べこは、そのまま空間の塵になる。はたして情報が破壊されたのか否かは現代物理学者の難問だろう。そうしてメターマンを倒した後、今度はその魔法の反作用をまた別の魔法として使う。


「ピスタキオン・サルベーション!」


 超光速粒子ピスタキオンによる因果の逆転。それによって原因を改竄し結果を変更する。メターマンに破壊された建物、殺された人、止められたインフラ……全てが元通り。今回の中東の都市部でなら復興資金は百億円を超えるだろう。それを十億かそこらでメターマンの排除並びに都市の復興を成し遂げるのだから魔法少女が如何にリーズナブルな仕事をしているかは議論にいとまがない。まぁその十億円の半分が魔法少女にわたっていることを考えれば、襲われた地元民にとっては少し考えることもあろうが。


「ま、めでたしめでたしだな」


 メターマンが倒されたところまで動画で見て、その後は煮込みハンバーグを食べることに集中する。さすがキレイさんの料理。ケチのつけようがない。


「ん。美味い」


 そうしてご飯を食べていると、畳の座敷に魔法陣が描かれた。そこでふと思い出す。そう言えば罠娘少女ダーンディアナの時もこうだった、と。今更後悔するのもそれはそれでこっちの都合だろう。ドレスティック・インバータ。日本語に訳すと服装逆変換とでも言うのか。魔法少女はWARPドライバでこの家に転移し、しかも服装を元のモノにインバータする都合上、一定時間全ラであることを強いられる。今回もその通りだった。魔法少女の時はパーソナルジャマーという魔法がかかって個人情報は特定できないが、今目の前にいる女子を俺は知っていた。全ラで、おっぱいはそこそこ大きくて、ついでに茶髪で、独富学園でも三美姫に選ばれる美しさ。


「くふふ……」


 学園のアイドル。星崎キラーンさんだ。


「あっはははははははは!」


 その星崎さんは俺の家の座敷で全ラのまま爆笑した。色々とフルオープンなのだが、ソレをここで言ってもしょうがないのだろう。


「笑いが止まらないわ! あんな雑魚メターマンを倒すだけで五億円!? こっちは全然本気出してないのに! たかが十五分程度で五億円!? ヤバいわー。楽ちんだわー。人生イージーモードだわー」


 なんか魔法少女の生々しい言葉を聞かされている気がする。


「動画視聴者もチョロいわよね! 私が笑顔でメターマン倒すだけで世界中から数千万の投げ銭でしょ!? どんだけアホなのよ! まぁ私は可愛いし? 選ばれた存在だし? 平民がお金を貢ぐのも分からないじゃないけど? 持ってるわー。私持ってるわー。マジで人生イージーモード! バカどもから金を徴収して一生楽に豪・遊・生・活! 生まれてきてごめんね~? 私がいるだけでお金も男も全部私に集まっちゃって(笑)!」


「…………」


 うーん。俺、ここにいていいのか? 全ラで世界中を軽蔑するその傲慢さを、俺が目の前で見ているというそのことに危機感を感じざるを得ない。


「バッカみたい! 全員! 全地球人類がバカよ! 私が微笑むと数億円のお金が動くんだから! もう世界が私を祝福していると言っても過言じゃないわね!」


 えーと。何と申すべきか。しょうがないのでハンバーグを食べていると。


「…………」


「…………」


 俺と星崎さんの目が合った。スターブラチラ・ザ・ワールド。時は止まる。チ・チ・チ・ポーンと幻聴が聞こえた。そして時が動き出す。


「キャアアアアアアアアアアアッッッ!」


 で、全ラで大見得を切っていた星崎さんとは思えないほど狼狽して、腰を抜かす。倒れ込んだことで女子の大切な部分が見えたが、今俺は飯を食っている。


「ちょっと! あんた誰よ!? 遠藤くん!?」


 なんで名前知ってるのに誰何した? とツッコめればよかったのだが、気持ちはわかる。まさか俺もここでこんな知りたくもない星崎さんの裏の顔を知れるとは思わなかったし。


「ども」


「ちょっと! 乙女の全ラ見ないでよ! 変態!」


 しょうがないだろ。ドレスティック・インバータには時間かかるんだから。星崎さんはビーチクとアソコを腕で隠して恥ずかしそうに赤面する。愛らしい、と言えれば良かったのだが、既に俺は彼女の本心を知っている。


「えーと」


「ここは無人の家のはずでしょ!?」


「あ、ども、最近越してきて。今は俺が暮らしてまーす」


 気まずいとかそういうレベルを超えている。全ラの星崎さんが堕星少女スタッブスターで、ついでにさっきの発言を全部信じるなら、彼女のファンは彼女にとって金づるでしかないという証拠で。あれ? 俺って色々とまずい立場か?


「さっきの! 聞いてたの!?」


 青ざめた顔で星崎さんが聞く。


「えーと、まぁ」


 全地球人類がバカだとか人生イージーモードだとかは確かに聞いた。


「あ、の、それは違うから! 本心じゃなくて! ちょっと調子に乗ってみたかったというか! その! だから! 違うのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 いまさら言い訳しても意味無いってわかるよな? まぁ別に俺は金出していないので彼女の本音に怒ったりということは無いのだが。ただちょっと思ったのは、これで俺は堕星少女スタッブスターの弱みを握ってしまったのでは? という当たり前の事実で。


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