第68話:空母とワープと決着と
「来ましたねー」
エンドレース株式会社の社長室。俺はジャケット姿で本社ビルの最上階の窓から、それでも見える米国の空母を眺めていた。こういう事が起きているのはメアリーシステムで知っていたが、特に止める必要も無いので放置していた。俺にお茶を差し出して、御盆をかき抱いているハーレクイーンが困った顔で空母を見下ろしている。原子力機関を搭載しているタイプの空母。ついでに乗船しているのは大統領の息子を含め、米国の重鎮の子供たちという人質。あとはアサルトヘイトが遠隔操作で操っているアンドロイド。なんだか最近テクノロジーって人間を滅ぼす自家中毒に思えてくるんだが……この考えって極端か?
「で、相手の要求は?」
ハーレクイーンの淹れてくれた梅昆布茶を飲み、そわそわしているシークイーンに落ち着けとだけ言って。それから相手の要求を聞いてみる。
「エネルギー生産プラントの技術開示ですね」
つまり核融合技術の情報を公開しろということか。
「どうします?」
場合によっては実録行使も辞さない。そういう風にハーレクイーンの言葉は聞こえた。まぁ出来るか出来ないかなら出来るんだろうけども。
「バーゴストライクも来ているんだろ?」
「ええ、米国が百億ドル支払いまして」
国際魔法少女基金は俺の配下が運営している。流石に今回のことは一人頭十億円で稼働させるのも忍びないので、百億ドルを徴収させてもらった。
「猶予は?」
今は朝の五時。こうなることは知っていたので、一応早起きしたのだ。ハーレクイーンとシークイーンにも社長室に来るように言っていたし。ハーレクイーンのお茶も飲みたかったしな。五分の四ラの女幹部の服装をしているエッチなツインクイーンが見れて俺は満足。
「今日の正午まで待つ……と」
ちなみに正午は十一時から十三時のことだが、猶予の最終期限はどっちだ?
「本当に駆逐しましょうか」
「いや、それはいい。それよりこれを渡してきてくれ。あくまでエンドレースの社員を通してな」
空母がアサルトヘイトの支配下に置かれているなら、むしろ都合がいいというかちょうどいいというか。俺の書きだした文面を読んで、ハーレクイーンは頬が引きつっていた。
「本気ですか?」
「おおマジ」
というか、そもそも今まで敵対していたのがおかしいのだ。そのままエンドレース株式会社の広報部に書類を回し、そのまま社員の一人がスケープゴートで空母まで。既に空母は独富島の港に停泊されており、最悪の使い方をすれば超臨界とメルトダウンで独富島が放射能汚染に……なるわけないんだが。そのためにバーゴストライクが待機しているので、この場合の空母での脅しは既に破綻している。そのことをアサルトヘイトと米国が知っているのか否かって話だが、まぁソレは別に俺が気にすることではなく。
「あー、あー」
そうしてエンドレース株式会社の広報部。その社員の一人が空母への通信に試みて、俺がテキストデータで印刷した文面をそのままそっくり読み上げる。一応その通信は社長室でも拾えるように細工をしており、そのまま展開を静観する。
「我々はアサルトヘイトに常温核融合技術の詳細を提供しようと思う。だがまだこの技術は未完成であり、天性の才能を持つアサルトヘイトの電子技術をこちらも必要としている。テロ行為を止め無雲帝国の国民となってくれないだろうか? 我々は全力でアサルトヘイトを諸手で迎え、核融合技術の全てを開示するものである」
その広報部の言葉は、俺がつづった文面そのままだった。正午まで待つ必要もない。相手が敵対するのなら仲間に引き込んでしまえばいいのだ。
「理性的な返答を期待するや切である。以上」
そうしてこっちの態度は終わった。別に空母がメルトダウンを起こしてもアルテミストとダーンディアナがいれば脅威にはならないし。何よりアサルトヘイトの構築するアルゴリズムは俺の興味を異常に引いている。常温核融合技術。それが真の意味で完成していないのは事実だ。その技術革新のために最高位のハッカーのプログラミング能力を借り受けられるなら大金を支払ってもお釣りがくる。
米国や、そのほかの国や組織や企業に技術を開示することはないが、アサルトヘイトであれば話は別である。今度はこっちが待つ番だな。キラたちは空母を前にしてハラハラしているだろう。メルトダウンも脅威だが、戦闘機が飛べば、ソレを打ち落とすのもバーゴストライクの仕事なのだから。そうして待つこと数分。
「シングルモルト様。返答が来ました」
俺は梅昆布茶を飲みながら言う。
「読み上げろ」
「特秘事項の技術開示に感謝する。喜んで帝国民に帰化する。そちらの言葉が事実なら、ではあるが」
結構簡素な文体だったが、一応了解は得られたわけだ。実際にアサルトヘイトは敵対するより味方になってもらった方が都合がいい。戸籍はこっちで用意するし、給料も言い値で支払おう。
「じゃあシークイーン」
「なんっすか? シングルモルト様?」
「港に停泊している空母をホワイトハウスの目の前まで転移させて来い」
「うっす! わかったっす!」
そうしてシタギを装着しているシークイーンが空母まで転移。その後空母ごとホワイトハウスまで転移。人質の子供たちは保護され、空母のメルトダウンの心配もなくなり、ついでにアサルトヘイトの立場も味方につけて。いい事づくめで全ては終わった。バーゴストライクも何も仕事をしていないのに二千億近い日本円を稼いでホクホクだろう。一番迷惑を被っているのは米国で。政治の重要地であるホワイトハウスに、原子力空母が丸ごと転移してきたのだ。脅威以外の何者でもない。まさか陸地から空母を運ぶ手段があるはずもなく。原子力機関を停止させて空母を解体し、穏便に移動させるしかないだろう。そもそも米国は軍事力を持ち過ぎだ。ここらで自分がどれだけ危険なモノを運用しているのか理解してもらおう。
そうしてホワイトハウスに転移した空母はスキャンダルというか……全世界の笑いものになり、謎の天才ハッカー……アサルトヘイトが無雲帝国に所属することは秘匿されたまま実行に移される。というかメアリーシステムがあるので、どこでどういう工作をしていたのか。そこから俺はアサルトヘイトを知らんのよな。まぁ無雲帝国に帰化してくれるということだし、その時に聞けばいいか。
「万事順調ということで」
「シングルモルト様。本当にアサルトヘイトに技術を開示するのですか?」
「今のままだとコネクトーンの扱いが汎用性を得られないからな。高度な技術を持つ人材は大歓迎だ」
「わたくしとしましては……シングルモルト様が死ねば世界は終わっても構わないのですけど」
「その気持ちだけ受け取っておくさ」
完全に俺を基準にしているので、ソレをどうにかしないと常温核融合技術は完成しない。そのためにアサルトヘイトを雇えるなら有難すぎてお釣りがくる。
「それではシングルモルト様♡」
ハラリ、と衣擦れの音がしてハーレクイーンの衣服が落ちる。肩アーマーも取れて、マントも落ちる。現れたのは爆乳の全ラで、男を誘うことを目的としたエッチなラ体だけだった。
「わたくしめをいただいてくださいませ♡」
「じゃあまずは奉仕しろ。その無駄にデカいおっぱいでな」
「はい♡ この身体は全てシングルモルト様のものです♡ 全てをシングルモルト様に捧げます♡」
そうしてハーレクイーンは身体を使って俺に奉仕する。その柔らかさにいい加減慣れた俺だったが気持ちいいのも事実で。そう言えば無雲帝国建国から二年経つか立たないかだ。ツインクイーンを徴用したのも懐かしい思い出だ。あの時は結局誰でも良かったんだが、偶然と運命でツインクイーンをレコンキスタドーンの女幹部に選んだんだよなー。




