第60話:核ミサイルと魔法少女と……
「というわけでこの時の数式をグラフで表した場合……」
ホケーッと教卓前で、俺が壱岐尾先生の授業を聞いていると。
「ッッ!」
「ッッ!」
「ッッ!」
「ッッ!」
四人の顔が引きつった。もちろん四人とはバーゴストライク。つまり星崎キラーン、二江キワミ、壱岐尾クレナイ先生、斑鳩マスラオだ。
「ちょっと急用があるので失礼します! 戻るまで授業は自習をしていてください!」
焦るようにそう言って、壱岐尾先生が教室を離れた。おそらくトイレにでも籠って、ブローギアを召喚するのだろう。太陽少女オーバーサンに、だ。
「トイレにでも行くか」
わざとらしくマスラオがそう言って。
「私ちょっと保健室に……」
「……ボクは早退します」
キラとキワミも各々席を外す。もちろんバーゴストライクの正体を知らないクラスメイトにしてみればそうですか程度の事なのだが。
俺もそそくさと教室を出てWARPドライバで家まで転移。それからシュクールミジュギを装着してスクール水着仮面一号に変身する。うーん。女体になるのはいいんだが、なんだか股間にブツが無いと、それはそれでちょっと不安。とか言っている場合でもないのだが。最初に独富島の上空に転移したのは俺だった。一応メアリーシステムは作動させているし、隣国の共和国から核ミサイルが放たれているの確認している。最悪の場合WARPドライバで解決するしかないのだが。
「スクール水着仮面一号……ッ」
遅れて、バーゴストライクも転移してきた。ブローギアにも転移機能はあるので現場に直行は出来るのだ。
「どうかしたのか?」
「核ミサイルが独富島に迫っているらしい」
ソレは知っている。この分だと後三十分だな。
「スクール水着仮面もその対処のために来たのか?」
「まぁ地球秩序維持思想団体オーダーメイドとしては無視も出来んしな」
バーゴストライクの四人はスクール水着仮面一号が遠藤オワルであるなど想像もしていないらしい。知られても困るので、ソレは言わないままにして。
「核ミサイルがこの空から降ってくる……か」
俺がそう呟くと。事態を察している四人はそれぞれの魔法を使う。
「アンチグラビティサンクチュアリ」
堕星少女スタッブスターが反重力を独富島の上空に展開して、落下の方向性を大気圏外に向ける。これで落下による弾頭の加速を軽減できるだろう。というか反重力の出力を考えれば、そもそもミサイルが独富島の上空に辿り着くことはない。
「パワードーム」
さらに追加で究極少女アルテミストが斥力の結界を独富島全体に張る。ドーム状の斥力場であればあらゆる全てを弾き、仮に核爆発が起こっても、火炎も爆風も全て無効化する。
「マイナスヒートフィールド」
今度は太陽少女オーバーサンだ。マイナス温度の空間を展開して、仮に爆発が起こっても一瞬で冷却させる対処をする。反重力と斥力場の中間に、その極寒空間を展開してのける。
「マグネティックフォース」
さらに追加で罠娘少女ダーンディアナが磁場を壁のように展開する。太陽の放射能を遮断しているのは地球の磁場だ。ソレを応用して、仮に爆発が起こっても放射線を磁場で防ぐ様に調整しているのだろう。
「うーん。思ったより俺の出番がない」
スクール水着仮面一号として地球秩序のためにここに来たが、四人の魔法の前には核爆発さえも無力と化すのか。そうして三十分後。大気圏外から落下してきた核ミサイルの弾頭は反重力に捕まって、また大気圏外に落下を始める。そこまで計算できたとは思えないが、とりあえず独富島の直情に辿り着くことはない。だが弾頭は爆縮レンズを計算に入れて核爆発を起こす。カッ! と閃光が奔り、膨大な爆発が起こり、火炎が撒き散らされた……かと思いきや、その高熱はマイナスヒートフィールドで急速に冷却される。さらに余韻となる爆風はアルテミストのパワードームで完全に防がれて、撒き散らされた放射線はダーンディアナのマグネティックフォースで無力化。
バーゴストライクの前では核兵器すらも絶対的な戦力にならない。そのことを彼女らはここで証明したのだ。
「マジで俺の出番ねーな」
スクール水着仮面一号こと俺は呆然としてソレを見ていた。今回はツインクイーンもドローンカメラを回す余裕も無く。独富島の島民も「なんか空が白く光ったな」程度の認識でしかない。だがその後の共和国の独裁党が見解を開いた。それによると軍事基地のサーバーがハッキングされ、無雲帝国目掛けて核ミサイルを発射してしまったことを公表し、世界中を罵倒の渦に巻き込んだ。もちろん無雲帝国には共和国を非難する姿勢を示すことになるが、俺はツインクイーンに形だけにしておけ、と言ってある。社会的な批判はもうこの際しょうがないが、俺の懸念は別にある。つまり、アサルトヘイト。無人軍隊とも称される……軍人を持たない国家級戦力。今回の共和国のミサイル発射もアサルトヘイトのハッキングの可能性が高い。スタンドアローンのミサイル発射機構をどうやってネットワークからハッキングするのかはさすがの俺も分からんが、アサルトヘイトの噂を辿ればできてもかしくない……程度にはソイツの恐ろしさは身に染みている。何せアメリカの無人飛行偵察機をハッキングして、しかも人材がのマニューバを実行する異才だ。共和国の核ミサイルを乗っ取るのも、不可能というわけではないのだろう。とりあえずのメアリーシステムで全世界の核ミサイルについても把握はしているが、今のところ問題は起きていない。じゃ、学校に戻るか。バーゴストライクは俺の家の座敷部屋に転移してドレスティック・インバータを行使するのだろうけど。俺はWARPドライバで男子トイレの個室に転移。それから鍵をかけて誰にも見られないようにドレスティック・インバータ。数分ほど女体の裸になって、ちょっと自撮りをしてエロ垢を作ってアップするかを考えたが、まぁそんなあほな真似をする必要もないだろうと思い直し。
「よし」
そうしてドレスティック・インバータが終わったら、教室に戻る。遅れてマスラオが教室に戻ってきて、さらに壱岐尾先生が戻ってくる。数学の授業を再開しつつ、俺の両隣は空席だった。キラは保健室に行くと言った手前、保健室でグダグダしているのだろう。キワミに至っては早退すると言っていたので、今日はもう学校に来れない。というかバーゴストライクが出動して、いきなりクラスの生徒がタイミングよく消えたら、それはそれで疑われそうなので、キラとキワミの教室に戻らないという選択は意外と理にかなっている。まぁマスラオと壱岐尾先生が戻ってきたのは誤差の範疇。
「っていうかなんだったんだ? さっきの?」
「さあ?」
「閃光……だよな」
まだこの時点では共和国は核ミサイルについては見解を出していない。それから授業が終わり、放課後になって、それからスマホでニュースが騒いで。無雲帝国に核ミサイルが撃ち込まれた、というセンセーショナルなニュースは無雲帝国の国民に衝撃を与える。ついでに共和国の無雲帝国への謝罪が見解され。それに関してこっちからの見解は一応穏便なモノだった。ただ軽視できないこともある。
「無人軍隊アサルトヘイトを我々は敵対存在として認識する」
その様に無雲帝国は発表した。当然だ。泣き寝入りする気は無い。国家間だけで囁かれていたアサルトヘイトは地球全人類に認知させる。そうしてどこにアサルトヘイトがいるのかを全地球人類に訴える。かのテロリストが何故無雲帝国を襲うのか。それもわからないままやられっぱなしではいられない。
「我々はアサルトヘイトを無雲帝国の仮想敵とし徹底的に抗戦する覚悟である」
無雲帝国の皇帝は表に出ない。無面皇帝とも揶揄されるが、俺が無雲帝国の皇帝だと表明するわけにもいかないしな。
「あとは……アサルトヘイトの出方か……」
次はどういう手法を取ってくるのか。それがちょっと怖い。アサルトヘイトに狙われているという事実が、国民を不安にさせているのも事実だ。十万人規模の島国。例え居心地が良くても核ミサイルが降ってくるかもしれない国に、国民が安住してくれるのかも怪しいと言えば怪しい。安全神話は作るつもりだが、それとは別にアサルトヘイトとも決着をつける必要があるだろう。左の頬を殴られたら、相手が泣くまで殴りつける。それが俺の……そしてレコンキスタドーンのやり方だ。




