第6話:学校に馴染む
「それではホームルームを始めますぅ」
で、女性教諭が教室に入ってきて、そうして二年生最初のホームルームが始まったわけだが。それはそれとして男子の性欲の高ぶりを抑えることは叶わず。何故かと言われると担当教諭のエロさにある。
「えーとぅ。先生は壱岐尾クレナイと言いますぅ。これから一年間お願いしますぅ」
その壱岐尾クレナイという行き遅れが無さそうな名前の女性教諭ははち切れんばかりの爆乳を持っていた。それこそ二江キワミさんの巨乳に圧倒されたばかりだが、壱岐尾先生はそれよりさらにサイズを上回っていた。あれでは男子生徒はひそかに示威行為をするしかないだろう。俺も結構圧倒されている。あそこまでの胸がこの世に存在していいのか。聖職者と言う言葉から最も遠い女性が先生をしているというこの矛盾。マジで大丈夫か。独富学園。
「とにかくぅ。これから一年間頑張っていきましょうぅ」
そんなわけで。まずは席替えを行うことになった。順当にくじ引き。だがその前に目が悪い生徒や希望の生徒は前の席を確保してもらう……というものだったが。
「あ、はい」
俺が真っ先に手を挙げた。
「教壇前を希望します」
普通生徒は後方の席を好む。だが俺はあくまで席はどうでもいいので教壇前。列中央の最前席を選んだ。別に席なんてどこでもいいし。
「あ、じゃあ私はその隣の席を希望しまーす」
は? 俺が呆然としていると、「はいはーい」と本来ならだれも望まない教壇前の席の隣に星崎さんが志願していた。
「……先生……ボクは目が悪いので」
眼鏡装備の文学少女、二江キワミさんがこれまた最前席を希望して、何がどうすればこうなるのか。俺は二人のS級女子に挟まれる形になる。
「先生! 某も最近眼球疲労が!」
「たまにコンタクトを忘れることがあるので!」
「拙者は真面目に授業を受けたいので前の席を!」
と、今度は男子どもが最前席を確保しようと動き出す。女子が「男子ってバカよねー」みたいな冷めた目で見ているが、俺も思う。バカじゃねーの? いや別に俺だって壱岐尾先生の爆乳に釣られたわけじゃないぞ。本当だぞ?
「な、なんなんだアイツ。トリプル役満だと?」
「これを狙ってやってるなら神だぞ……」
「隠者の紫で全身に波紋を流している。抜け目ないジジイめ」
と、散々な評価を得るのだった。なんでかって? わかるだろ。
「よう。オワル。早い再会だったな」
俺の両隣に星崎さんと二江さん。で、俺の後方にマスラオが座っていた。この学園の三美姫と呼ばれる存在に図らずも囲まれた形だ。男子からしてみれば嫉妬の対象だろう。仮に俺が俺以外でこういう状況を作っている奴を見たら、ピンポイント射撃で目を焼いて、大火力で全身を焼く。
「よろしくねー。えーと。オワルくん?」
「あ、ども」
もちろん童貞乙の俺がまともな返答など寄こせるはずもなく。
「…………」
逆隣の二江さんは俺を気にすることもなく、淡々と本を読んでいた。ちょっとタイトルが気になったが、キモいと思われても精神上よろしくないので、そこは世界の謎にしておこう。そうして今日はホームルームだけ。明日から授業があることを告げられ、ついでに教科書と参考書とタブレットは持っているか聞かれ。俺は全部揃えているので問題なく。
「それじゃあまた明日ねぇ」
壱岐尾先生が爆乳を揺らしながら去っていく。うーん。大きいおっぱい。
「変態」
俺を責めるような声。誰かと言われるとマスラオしかいなく。
「いや、アレは拝むだろ」
「そのために教壇前を希望したのか。抜け目ないジジイめ」
「お前までそれを言うか」
冷静に考えると三美姫と壱岐尾先生に囲まれる形になるのか。それはそれで天国としか言いようがなく。
「じゃ、帰るか」
ポンポンとマスラオに肩を叩かれて、しょうがないから今日は帰ることにする。
「オワルくん。帰るの? じゃあ親交深めない?」
ニコッと天使の笑顔で俺を誘ってくる星崎さん。だがニヤッとマスラオが笑った。
「すまんな星崎。今日は俺が優先だ」
そう言って俺の手を引いて、マスラオは教室を出る。ソレを信じられないような目で見る独富学園の生徒たち。全員がヒソヒソと噂していた。まぁ俺みたいな平凡な男がマスラオを独占しているのだ。中々見られる光景ではない。
「で、どこ行くんだ?」
「クレープでもどうだ? 奢ってやるよ」
男とクレープ食って何が楽しいんだ、とは思っても言わない。
「いや。金には困ってないんだが」
「大丈夫だって。俺が誰か忘れたのか?」
言われて思い出す。罠娘少女ダーンディアナ。四人のバーゴストライクの一人。つまりマスラオは魔法少女。ついでに言えば国際魔法少女基金から援助を受ける身。
「税金とか大丈夫か?」
「無雲帝国には確定申告はないし、累進課税もないからなー」
稼いだ分だけ金を持てる。そうと知っていれば無雲帝国に居を移したい金持ちも大勢いるが、そういうのが面倒で独富島に移住するにはそこそこの教養を必要とする。
「ちなみに一回の出動で五億円貰えるし」
うん。知ってる。国際魔法少女基金はメターマンが暴れた際に最低金額として十億円を要求する。これが振り込まれてからバーゴストライクは出動要請が出され、メターマンを倒すために戦うことになる。っていうか独富島特有の光景だが、そこら辺をメターマンが歩き回っている。ある一定の条件を満たさなければメターマンは人類と敵対しない。つまり世界中でメターマンが暴れているのは、その条件を満たしている場合に限るというわけだ。ちなみに国際魔法少女基金は振り込まれた額の半分を魔法少女に渡すので、最低でも五億円は一回の出動で魔法少女に払われる。この前出動した罠娘少女ダーンディアナは、つまりそれだけで五億円稼いだことになる。そりゃ金は有り余っているだろうよ。ついでにエンドレース株式会社の都合もあって、独富島は電気とネット環境を完備。低金で利用でき、ほぼ生活を圧迫することもない。
「で、お前は大丈夫なのか?」
「もっちろん。金が儲かってウハウハだぜ」
ケラケラとマスラオは笑った。
「っていうわけでー」
長ったらしい呪文のようなクレープの注文をマスラオがして、俺も何を言えばいいのか分からず「彼と同じので」と注文。そうしてクレープをパクつく。
「ほれ。オワル。ピースピース♡」
男の娘と言って差し支えないマスラオが俺と写真を撮って、それをアウトスタグラムにアップする。一応俺には目線を入れているが。
「お前が罠娘少女ダーンディアナだってバレないか?」
「大丈夫だろ。変身してない時の俺は男だし」
魔法少女にドレスティック・コンバータしている時だけ女子になる……と。まぁ確かに、とは思うが。
「っていうか、これは賄賂だ」
「賄賂?」
「俺が魔法少女だってことは黙っていてくれ。そのためなら俺は何でもするぞ」
「何でもってな……」
「その……エッチ……とか……するか?」
「魅力的な提案だが却下で」
別にマスラオが嫌いとかそういうわけじゃないが、まぁスキャンダルだよな。




