第57話:人ではないモノ
「メターマンが襲った?」
「と、ニュースになってるね」
一応報告はツインクイーンから聞いている。とある平日のこと。独富島行きの船で、メターマンが強襲。一人の男性を襲撃し、これを殺害……と思った瞬間、彼の遺体が爆破され爆炎が船に甚大な被害を出した。とのこと。その船に乗っていた他者にケガはなかったが、それはメターマンが身を挺して庇ったらしい。メタリアルディフェンサーを持つメターマンを通常物理攻撃で傷つけるのはほぼ不可能だ。絶対ではないのだが。
「焼け焦げた遺体からネジやら何やらが出てきた……と」
「みたいだな」
隣に座っているキラと、後ろに座っているマスラオ。二人と朝の都合について話し合っていた。ちなみにキワミはエロコメを読んで会話には不参加。
「実験用アンドロイドを誰かが運用して爆弾を持ち込もうとした……とネットでは言われてるけど」
「そんなことする意味あるか? メターマンを倒すには足りんだろ」
「けれどこれで独富島が恐れられれば、入島してくる人間も減るのでは?」
「別に観光客が減るくらいは問題ないと思うがなぁ」
キラとマスラオは互いに議論を交わしていた。
「これから独富島の船が狙われる。それでもかな?」
「最初からメターマンを同行させるのはどうだ?」
「一応日本としても海上権を侵犯されるのは面白くないんじゃ……」
喧々諤々。
「アンドロイド……ね」
先にも無人戦闘機の強襲があった。アンドロイドも自律系とは限らない。ネットワークを通じて誰かが操作しているとすれば。
「ハッキング……か」
背後にあるのはそう言うことになる。
「それではホームルームを始めますよ」
相も変わらず理想的な教師をしている壱岐尾先生は、朝の事情を知っているのかどうか。知っていても教室でするほど明るい話でもないしな。
「では出席を取ります。手元のタブレットに――――」
そうしてホームルームは進み、昼休み。
「オワル。飯を食いに行きましょ?」
「……旦那様……御飯」
「奢ってやるよ」
「気持ちは有難いが、今日は一人にしてくれ」
そうして着いてくるな、と言いおいて、特別棟のトイレまで出向く。個室に入って、その後でWARPドライバを適応。空間を転移して事件現場に足を向ける。爆破された船。全体的な構造に致命的な欠損はなかったが、それでよかったですね、とはならない。
「スクール水着仮面一号だ」
「やば。尊い」
「何で此処に?」
「っていうかスク水が……」
色々言われているが、まぁこれは呑もう。それよりも、だ。
「こちらがアンドロイドの部品になりますが」
警察機関が弱いとはいえ、全く無いわけじゃ無い。それに日本とは船を通して交流があるし、日本としても放っておけない案件なのだろう。日本と無雲帝国の警察がアンドロイドの出元を調べてくれていた。人間ではない、ということさえ分かれば、俺にはどうでもいい。それからエンドレース株式会社の本社ビル。その最上階の社長室へ。もちろん先にドレスティック・インバータを行うのも忘れてはいない。
「無人戦闘機については何か分かったか?」
シークイーンはいない。報告はハーレクイーンから受けることになる。
「何も分からないことが分かった、と報告を受けております」
「何も分からないことが……ね」
「ただ逆にこの完璧性が一つ心当たりがあるそうで」
「教えてくれ」
「アサルトヘイトと呼ばれる破壊工作を行うハッカーがいるらしいです」
「アサルトヘイト……」
色んな意味でギリギリの名前だ。
「愉快犯というか。テロリストには該当しませんが破壊工作を仕事とするハッカーらしく」
「そいつが無人戦闘機や今回のアンドロイドをハッキングして無雲帝国に嫌がらせを仕掛けている、と」
「その可能性もある、ということです」
アサルトヘイトね。思想を持たないテロリストとか、相手をするのも面倒なのだが。
「メアリーシステムでも捕捉できませんか?」
「今のところはなー」
不穏な動きがあれば見逃すはずはないんだが。とすると、アメリカが無人戦闘機をハッキングされて無雲帝国に侵犯してきたのも無実ではあるわけだ。
「どこかのネットワークから介入するとして……アサルトヘイトねぇ」
無人戦闘機をあそこまで鮮やかに掌握するということが、つまり彼(彼女?)の恐ろしさを肯定している。
「ってところで、とりあえずはまぁ状況はわかった。頭が痛くなってくるな」
「アサルトヘイトの特定を急ぎます」
「出来得るだけなるはやで頼む」
「微力を尽くします」
よし、じゃあ学校に戻るか。その前にコンビニでパンを買って。コンビニも普通に存在している。商品は日本から輸入しているのだが、関税をかけるつもりはないので、コンビニの運営側からすれば有難い話だろう。というか無雲帝国で稼いだ純利益には税金がかからないのだ。とはいえ国民十万人程度なので、あんまり大規模にコンビニを展開するということも難しくはあるのだが。アップルパイと明太子のおにぎり、それからいちご牛乳を買って、WARPドライバで学校に戻る。そうしてコンビニ行って帰ってきましたよの体裁を整えつつ、教室に戻るのだが。
「オワル。今日は釣りに行こうぜ」
「行くのはいいが、釣りね」
「オワルも捕れたての魚食いたいだろ?」
「超食いたい」
グッとサムズアップ。色々と問題はあるのだが、人生を楽しむのもまた必須。
「さて、そうすると……」
「オワル! 私も行く!」
「……旦那様……ボクも」
「それはマスラオに言ってくれ」
ヒョイと俺はマスラオを指さす。
「マスラオ?」
「……斑鳩くん?」
「わーったよ。そこら辺の抜け駆けは無しだしな。釣りでいいなら幾らでも」
「やた。でも釣竿持ってないけど……」
「家に結構あるから貸してやる。ただし一匹もつれなくても釣竿のせいにするなよ?」
「そこは大丈夫。わかってるから」
「……釣りですか。……ボクもしたことないわけじゃないですけど」
「まぁ一番手慣れているのはマスラオだよな」
漁師の息子だし。っていうか普通に斑鳩家が船持ってるし。おじさんの釣ってくる魚はガチで美味いんだよなぁ。
「じゃあ今日は魚釣って刺身だな」
ちなみに斑鳩家のおばさんは魚を捌くのが異常に上手い。これも漁師の家系か。
「楽しみだなぁ」
「だよな。魚釣りってワクワクするよな」
俺が破顔すると、マスラオもニッと笑う。
「そういうところはオワルとマスラオって男の子だよね」
「……釣りは……男のロマン」
っていうか東京諸島自体が、いい魚がたくさん釣れるので、釣り好きには聖地のようなものだ。いや、肉も好きだぞ? 好きなんだけど、ここの魚はその上をいく。




